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英雄譚はいつも紅に染まる  作者: パン定食
部活に入ろう!
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それぞれの夜

部活動についての話があったその日の夜。各々が部屋でどの部活に入ろうかとお菓子とお茶を持ち寄り相談しあっていた。


ベルトーシカ、アナ、ヨハンナ、パイの部屋――


「部活動かぁ、、どんなことするのかわからないけど楽しみだな」


 ユノから分けてもらったガトーショコラをかじりながらアナが口火を切る。それに続いたのは自分のベッドの上で本に目を向けたままのベルトーシカだ。


「要は授業でできないようなことなんかを試したり挑戦したりする時間をみんなでつくりましょうってことでしょ? わたしは魔術一筋でしか考えてないわね」

「苦手分野を補うか、得意分野を伸ばすか……考えは人それぞれだけどベルは得意分野を伸ばすんだねぇ。ボクはどうしようかなぁ……あっ、このお茶おいしい」


 ヨハンナはパイの淹れたウーロン茶をすすっていた。


「ふふふ、わたしの淹れたお茶は世界一アル! わたしは格闘アルな。ミコトさんの元で強くなるアル!」

「パイはあいかわらずミコトせんせラブだなぁ、あたしは格闘かアイテムだな。武器の腕や魔法を伸ばそうとしても上手くやれる気がしないし……ところでパイは何をしているんだ?」


 アナが疑問を持つのも当然、パイは頭の上にお茶の入った茶碗を置き座禅を組んでいた。


「見てわからないアルか? 気を練っているアル……そういえばアナが会ったモエとかいう上級生も気の力をつかってたアルよな?」 

「うん、向こうは火を噴いたり、砂を操ってたりしてたよ」

「そういえばパイ、東の方の国出身なんでしょ? その人たちのことなにかわからないの?」


 本から目を起こしたベルトーシカが尋ねる。


「うーん、その人たちはもっと東にある小さな島国の人たちだと思うアル。少し前に魔物たちに侵略されたはずアルなぁ……」

「あっそれ聞いたことある! 正確には魔物じゃなくて妖怪ってい言うらしいよ。魔王の配下には変わらないらしいけどね」


 ヨハンナが情報を付け加えると、同じテーブルではアナが自身のコツプに注がれているお茶に視線を落としながら気をもんでいた。


〈そうか、あんなふざけた奴(モエ)でも辛い想いをしてきたんだろうな……〉




 ガルシア、ルルティア、エマの部屋――


 ローレムにやられた傷を気遣いルルティアが声をかける。


「ガルシアさん、身体はもう大丈夫ですか?」

「ああ、もう大丈夫さ。ルルにも迷惑をかけたね」

「迷惑なんて……」


 部屋の中に三つ並んだ中央のベッドの上、真っ白なワンピースの寝巻姿のガルシアとルルティアが見つめあう。

 そのピンク色のキラキラが見えてきそうな空間を壊す咳払いが聞こえる。


「わたしもいるの、忘れないでね」

「ボクもいるよ~」


 その声の主はもちろん部屋の同居人とその召喚獣のエマとケットシーだ。ルルティアは顔を赤くし、慌ててガルシアとの距離をとる。


「そ、それで、ガルシアさんはどの部活に入るんですか?」

「うーん、どうしようか迷っててね……ヴァーロでの件もそうだし、今回のことでも痛感したけど、わたしにはもっと決め手になるなる攻撃力が足りないと思っているんだよね」

「ヴァーロって……あのスティンとかいう貝のお化けみたいなやつ?」


 エマはベッドの上でケットシーの代わりに枕を抱き、ヴァーロでの戦闘のことを思い出す。


「そう、わたしの攻撃はほとんど効かなかったからね、ローレム相手にも攻めきれなかった……」

「確かに、決め手はわたしのティー君だった。じゃあ武器の扱いに磨きをかける? それとも魔法を伸ばす?」

「そう、その二択が難しいんだよねぇ」


 三人は一様に難しい顔を浮かべる。


「わたしのことはともかく、ルルはどこに入るんだい?」

「わたしは魔法ですね。わたしの武器の弓だとこれ以上磨きをかけるのは難しそうですし」

「ルルは文武両道というべきか、弓も魔法も得意だからね。器用で羨ましいよ」


 二人はまた見つめあう。例によってその空気を壊す質問が飛ぶ。


「わたしには聞いてくれないのかしら?」


 ガルシアとルルティアは目をぱちくりとさせ、放った言葉がハモる。


「「だって魔法でしょ?」」


 エマはケットシーを捕まえ頬を引っ張る。


「な、なにをするんだい、エマ?」

「わたしこの部屋出ていこうかなぁ……」




 ウル、ユノ、コリン、オウルの部屋――


「それで、皆さんはどこの部に入るのか決まったのですかな?」


 コリンがいつものように樽ごと口に当て酒を飲みながら問いかけると、その酒のつまみを一緒にぱくついているウルが答える。


「ウルは最初から決めているのだ。ウルは武器の腕を磨くぞ!」

「わたしはろうしましょうかひらねぇ。オボッシュにしようかオレンジタルトにしようか迷うわねぇ……」

「ユノは何の話をしてるんだ? もしかして酔ってるのか?」


 ユノも珍しくコリンに付き合いチーズをつまみにワインを味わっていた。顔には全く出ていないが、呂律(ろれつ)も怪しく、相当酔っているのだろう。そこに気づいたのは最近仲間たちとの距離が縮まってきたのか同じテーブルを囲むようになったオウルだった。


「もう寝た方がいいぞ。強そうに見えるのにたった一杯でこの様かよ……」


 オウルはグラスをテーブルに置かせるとユノをお姫様だっこの要領で担ぎ上げる。

風呂上がりだからか、ふわりといい香りが鼻をくすぐる。だらしなく担ぎ上げられたユノのたわわな胸が重力に引かれ零れ落ちそうに揺れる。

 オウルの顔が思わず赤面してしまう。無防備なユノには女性でも妖艶さを感じてしまう程エロい。


「くっ……」


なるべくユノの方を見ないようにそっとベッドの上に寝かしつけた。


「オウル、なんで顔が赤いのだ?」


ただでさえドギマギとしていたオウルは突如声を掛けられビクッと肩を震わしてしまった。


「な、なんでもない!」

「オウルはどこに所属するか決めたのですかな?」

「オレは……魔法かアイテム開発で迷っている」


今コリンに顔を向けたらまた何か言われるのではないかと、背を向けたまま答えた。


「ほう、意外ですな。てっきり格闘か武器を選択するのかと思ってましたぞ」

「オレはトリッキーな戦い方があってると思うからな、アイテムでかく乱するか、それとも今まであまり訓練してこなかった魔法を習得するか……そういうコリンはどうするんだ?」


飲んでいた麦酒を置き、つまみのほし肉に手を伸ばしながら答える。


「わたしは魔法ですな。わたしは体が重い分、力任せの攻撃には向いているが格闘や武具の扱いには向いておらん。魔法を強化するのが自分には一番かと思いましてな」

「ふうん、みんないろいろ考えてるんだなぁ。ウルはかっこいい必殺技とかバーン! って使えたらいいなーとかそれしか考えてなかったぞ」

「わはは、ウルらしいですな。でも気の向くまま本能のままに行動するウルにはそれが一番合ってると思いますぞ」

「ほんとかっ!!」


コリンの同意が得られ、ウルは嬉しそうにふさふさの尻尾を振った。




 リズ、モモ、クロエの部屋――


「わたしは剣の腕をもっと磨きたい。リズはどこにはいるの?」

「うーん、わたしはどうしようかなぁ……」


 こちらの部屋ではすでに明かりも消され、三人とも自身のベッドの上で横になっていた。並んだベッドは左からモモ、リズ、クロエの順だ。

 窓から漏れる月明かりだけが静かに部屋の輪郭を照らす。


「リズも一緒に入ろうよ。わたしのこと、近くで見ていてくれるんでしょう? 」


 モモがそう言ったのは以前温泉に入っていた時に約束していたことだ。


「それを言われると弱いなぁ……正直そこか魔法かで迷ってはいるんだけどね。ねぇ、どっちを選んだ方が攻撃力アップできると思う?」


 リズもまたガルシアと同じように、自身の攻撃に決め手がないことを気に病んでいた。

 そこに珍しくクロエがい分から会話に参加してきた。


「リ、リズは水属性だから魔法攻撃にはむ、向いてない……と、思う……」

「えっ、そうなの?」


 仰向けで寝ていたリズはクロエの方を向く。


「ぞ、属性にも、と、特徴があって攻撃に向いているのは炎、風、光。それ以外の水、土、闇は補助向きの傾向が、あるの」


 クロエの言葉は、一言一言を考えながら選んでいるようなぎこちなさが残っていたが、以前に比べたらだいぶ流暢なものになってきていた。


「そっか……じゃあモモと一緒の部活にはいろうかな? クロエは魔法?」


 クロエは言葉を発さず、うなずき答える。月明かりのわずかな光だがしっかりとその仕草が確認できた。


「じゃあリズも武具の鍛錬に決定ね!」


 モモの声のトーンがわずかに高い。クロエの助言が決定打になったのがちょっとだけ悔しかったのだ。

 そんなモモの心情など気が付くはずもなく、リズは寝返りをうちモモの方を向く。


「うん、一緒に頑張ろうね」

「うん、とりあえずあのアスカとかいう先輩に剣で勝てるようになる!」


 今まで負けたところなど見たことがないのでわからなかったが、モモはかなりの負けず嫌いなのだろう。リズはそんなことを考えながら眠りに落ちていった。

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