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英雄譚はいつも紅に染まる  作者: パン定食
部活に入ろう!
83/92

正座!

「はっは、なんだミーヤ。お前負けちまったのかよ。ダッセーな」

「うっ、ローレムだってボロボロじゃないか!」


 顔を合わせるなり、ローレムとミーヤの口喧嘩が始まる。地面に降ろされたモモとガルシアに駆け寄り介抱をするためアナとルルティアが慌ただしく駆け寄るが、気絶していて反応が無い。

 そのような周りの喧騒など聞こえないかのようにリズは茫然と立ち尽くしていた。


「モモが……負けた?」


 リズ達下級生の中で底知れぬ強さを誇っていたモモの負けは、親友のリズには特に信じられない出来事だった。

 そんなリズがアスカに話しかける。


「あなた、モモと……この子と戦ったの?」

「ん? その通りだが……君は何者だ? シンシア先生、モエ。これはどういうことなのか説明願おう」


 その後、静かに説明を聞いていたアスカはおもむろに口を開いた。


「なるほど……モエ、ローレム。そこに座りなさい」


 そう言い放ったアスカの目は冷たく鈍く光っていた。


「あぁ? なんで座んなきゃなんねーんだよ!」

「やめときなよ。大人しく従ってた方がいいって!」

「うぐ……」


 いつの間にか立ち上がっていたモエとローレムはしぶしぶと地面に胡坐をかく。

 その瞬間、アスカが地面をぴしゃりと叩く。


「正座!」


 反骨心を垣間見せたローレムだが、その顔には動揺が見て取れる。それを(なだ)めるモエ。

 この二人は今までにも幾度となくふざけたり、問題行動を起こし、その都度その場で正座させられお説教をくらっていたのだ。

 始めは従わず真っ向から戦っていたローレムだが一度もアスカには勝てたことがなく、獣の習性だからだろうか、強者を認め今では渋々とだが従っていた。


 アスカ自身も二人と同じように正座して対面する。その姿勢は背筋がぴんと伸び、思わず見とれてしまう程美しい。


「モエ、お姉ちゃんは悲しいですよ。下級生相手にかましてやろうと下卑た考えを抱くなどと……その口車に乗るローレムもですよ。あなた方は上級生になったのだからもっと自覚をもちなさい。あなた方二人は普段から……」

「さぁ、後はアスカに任せてガルシアとモモを運びましょうか。特にガルシアはダメージが骨まで達してるかもしれないわ」


 アスカのお説教の長さを理解しているシンシアはリズ達下級生に行動を促すと、ルルティアが名乗りを上げた。


「わたしが運びます。木の葉の絨毯(リーフカーペット)


 森の中に散る木の葉が踊るように集まってくる。木漏れ日の光を受けキラキラと(まばゆ)い。その木の葉は二枚の絨毯となり、人の腰の高さで浮かんでいた。

 気絶している二人をその上にのせると、ミーヤがポーズをとりながら声をかける。


「学園まで行くのだろう? よかろう、我が秘術ですぐさまにでも送り届けてしんぜようぞ!」


 そういうなり、空間に穴をあける。


「ありがとう、助かるわミーヤ」


 シンシアが礼を言うと、一同は怪しみながらもその穴の中に身を投じるのだった。




「ねね様、ごめんなさーい!」


大きな声が森の中にこだまする。

その声を聞きつぶやく人の姿があった。


「おかしいなー、女の子たちと全然出会わないぞ……変な声は聞こえてくるんだけどなぁ……」


一番先に森の中に入ったクレイブスの存在は皆に忘れ去られていたのだった。

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