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英雄譚はいつも紅に染まる  作者: パン定食
部活に入ろう!
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占星術師

 時間は少し遡る。

 ガタガタと揺れながらカシシュミナ学園に向かう一台の馬車の中、モエたち上級生が乗っていた。


「ふえ~、ようやく帰ってきたねぇ。なっがい遠征だったぁー」

「ふふふ、我が城に戻りし際は、秘められし熱き結界内で我が身を清浄したいものだな」

「ミーヤ、何言ってんのか分かるようにしゃべれよ」

「有無、ミーヤの言葉は難しすぎてわたしには分かりかねぬ……」


 ミーヤの理解しがたい言葉遣いに対し、ローレムに続きモエの姉でもあるアスカ・トウゴウも苦言を呈した。


「ぴ……ミーヤは帰ったらお風呂入りたいって言ったの!」

「ならはじめっからそう言えよ! 毎度毎度わかりにくいんだよ、ちび助!」

「あー、ちび助言ったろ! 馬車の外に放り出すとよ!」

「おもしれぇ、やってみろよ!!」

「ぴぃぃ」


ローレムがすごむとミーヤは委縮してしまう。そこに。モエが助け船を出す。


「まぁまぁ、こんなところでケンカしないで、それよりあれ見てよ」


「あぁ」と言いながらも、窓からモエが指さす方を眺める。


 そこにはすでにカシシュミナ学園の校舎とグラウンドが見えていた。グラウンドではちょうど下級生たちが授業を行い、森に入っていくところだった。


「なんだあいつら? 見ねぇ顔だな……」

「下級生の子たちでしょ。今年は人数多そうだなぁ」

「ふん、大して強そうには見えねーな」


 ローレムの言葉にモエは少し考えこむ。


「……いいこと考えた! あの子たちとさ、戦ってみたくない?」

「あぁ? どうやって?」

「さっき森の中に入ってったからさ、そこで襲っちゃえばいいんだよ」


 ローレムはちらりとアスカとミーヤの方に目線を送る。

 二人はそろそろ学園につくためか、荷物の整理を行っていて下級生の存在には気づいていないようだった。


「確かにおもしろそうだけど、アスカのやつが許さねぇだろ。あいつはまじめちゃんだからな」

「ねね様のことはあーしがよくわかってるよ。賊が忍び込んで森に潜んでるとでも言えば信じてくれるよ。ね、やろ!」

「……ああ、そうだな。おいミーヤ! オレたちを森の中に転送しろ!」


 意外な注文を受け、ミーヤは少し驚いたように答える。


「ぴゃ、なんで森なんかに? そろそろ着くとよ」

「さっき森の中に賊が潜んでるとこを目撃しちゃったんだよ。これは学園の一大事! あーしらで退治しないとね!?」


 モエの説明は身振り手振りを加え、どこか演技くさいものだったが、姉のアスカは全く疑う素振りもない。


「賊ですか? 森の中にはシンシア先生のゴーレムが警備しているはずですが……あれらを突破する賊とはなかなかの強敵、もしかしたら魔物なのかもしれませんね。わかりました、我々で捕まえましょう! ミーヤ、お願いします」


 ミーヤは多少納得していないような表情をするも魔法を唱える。


「我が道を遮るもの存在せず、扉を開け! 偉大なる抜け道(グレイテストホール)


 何もない空間に穴が開く。

 ミーヤは空間に穴を開け他の場所とつなげる、いわゆる空間魔法の使い手なのだ。


 この魔法にはいろいろと制限があり、ミーヤが一度行った場所でなければ空間を繋げられないこと、障害物や人など生物がいる場場所にも穴が開けられない。閉じる際も、魔法で作られたものならそのまま切断できるが生物や物質が挟まると閉じきることができないなどの制限がある。


「ほんとポンコツなのにこの魔法だけはいつ見てもすげぇな。『占星術師(アストロロジャー)』様様だぜ」

「ポンコツゆーな。それにミーヤは天才大魔導士やけん。その呼び方はすかんとよ」


 ミーヤは唇をとがらせ不満顔だ。


「えー、占星術師のほうがかっこいいとおもうけどなぁー」

「なんか箔がつかんと言うか、インパクトがないとよ。占いって弱そうやし……」

「話は後にして早く向かいましょうか?」


 無駄話が長くなりそうなのを察知してか、アスカは皆を促した。

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