襲撃者の正体
「忍術?」
はじめて聞いた単語にリズは思わず聞き返す。
「そう、魔法はエレメントの加護を受けて使うものだけど、あーしは異国の人間。エレメントの加護なんて受けてないんだよね。これは体内の気を練って使えるようになる術なの。だからあんた達のように一属性しか使えないってルールは当てはまらないのさ」
ぺらぺらとしゃべっているモエの隙をつき、後ろからアナがお返しの蹴りを見舞うがいとも簡単にかわされてしまう。
「くそっ! 油断しまくってたのに!」
「はっはー、そう見せかけてるだけだよー」
アナはお返しの掌底を鳩尾にくらい、呼吸ができなくなり悶える。リズは未だ砂に捉えられ動けない状態だ。そんな二人に目を配るとやれやれとあきれ顔になる。
「二人がかりでこれかぁ……がっかりだねぇ」
「がっかりさせちゃってごめんね。でもあなたも舐めすぎだよ、霧の住処!」
リズとアナの姿が霧に包まれる。もちろんリズの魔法の効果だ。
「あらら、姿を目くらまして逃げる気かな?」
「だから人を舐めすぎだよ!」
霧の中からリズとアナが飛び出してくる。
「性懲りもなくやられたいよーだね」
モエが得意の格闘で応戦するが、蹴りがリズに当たった瞬間水に戻る。「何っ!」と驚きはしたものの続けさまにアナにも攻撃を加えるが、こちらも水へと変わる。
「こっちもか!」
「水鉄砲!!」
水の虚像に動揺した隙に霧の中から高圧の水が放たれ、モエに直撃し倒れ込む。その間に霧が晴れ、リズとアナが姿を現す。アナが助けたのだろう、リズにまとわりついていた砂も取り払われていた。
「くっ、まさかあーしが直撃をくらうとはね。確かにちょっと舐めてた……こっからは本気出すよ!」
「だーめーよー」
すぐさま立ち上がり構えるモエを制止する声が届いた。
一同がその声の元に振り返ると、そこにはシンシアとルルティアが立っていた。その姿をみるやモエの表情が青ざめてゆく。
「モエ、帰ってたのね? 他のみんなは?」
「えーと、今はバラバラに行動してます……」
「そう……ところでなんであなたたちは戦ってるのかしら?」
「えっ、えーと、帰ってきたら見知らぬ子たちがいたからてっきり賊かなにかかなぁーて……」
モエは見るからにしどろもどろになり説明を始めたが、アナが突っ込みを入れる。
「あれ、さっき自分は魔王軍だって言ってなかったっけ?」
「あっ! それ言っちゃダメなやつ!」
モエの額にはいよいよ脂汗が浮かぶ。
「……シンシア先生、この人知ってるんですか?」
リズの質問にシンシアはふぅとため息を漏らす。
「知ってるも何もウチの学園の生徒よ。あなたたちの先輩にあたる子よ……」
「えー!!」
リズとアナは面を食らう、つい大声を上げてしまった。
「そう。あーしはあなたたちの先輩、存分に敬うよーにね」
モエは突然腕を組み偉そうな態度をとるが、周りの目は当然冷ややかなものだった。その沈黙をルルティアが破る。
「じゃあ、わたしとガルシアさんが戦った白髪の亜人も!?」
「ローレムのことね。あの子ももちろんそうよ。あなたたちがこの学園にくる少し前に遠征に行ってたから一年生のみんなは会うのははじめてだったわね。それより――」
話題が逸れ、ひそかに逃げようとしていたモエのストールを掴むシンシア。表情こそ笑顔だが、底知れぬ圧を放っていた。
「帰って来て早々、これは一体どういう状態なのかきちんと説明してもらうからね。ごまかしは無しよぉ」
「ひぃぃー、堪忍しておくれやすぅ……」




