復讐者
「焔の鞭!!」
ガルシアは両手に鞭を持つと猛攻を仕掛ける。双方のしなる鞭が何度もローレムの肌を削るが、下手に避けることなどせず両腕でガードしながら真正面から突っ込んでくる。
「があぁぁぁ!!」
「くっ、なんで止まらない! 痛くはないのか!?」
刑罰に鞭うちの刑があるように、打たれたところは身が焼けるようにひりつき、悲鳴を上げ転げ悶えるような痛みを感じているはずである。いくら身体能力に優れた亜人といえども到底我慢できるようなものではないはずだがローレムは吠える。
「こんなもの、痛みのうちに入らねぇんだよ!」
とうとう射程圏内までに距離をつめたローレムは拳をふるう。その拳はガルシアの腹部にめり込むと身体が宙に浮き、内臓にダメージを負ったのか口から血を吐いてしまった。
「うぐっ……さっきより、力が強くなっている……」
「ああ、オレは『復讐者』だからな。ダメージを受ければ受けるほど、それを力に変えることができるんだ!」
「固有能力か……? ルル、わたしが足止めをする! 君は逃げて助けを呼んでくるんだ!」
「で、でも!!」
「少しの間しか足止めできない! 言うとおりにするんだ!!」
ガルシアは自身でろっ骨が折れ、もう戦えないことを察知していた。その必死な形相にルルティアは咄嗟に従い駆け出す。
「おいおい、みすみす見逃す訳ねーだろ!」
「それをさせないと言っている!!」
「あぁ!」
ルルティアを追おうとしていたローレムが振り向き、ガルシアと目が合ったその瞬間だった。
「同調!」
ガルシアが自身の固有スキルを発動させた。
途端、ローレムの動きが止まる。今のローレムには言葉を発することも、考えることすらできない。
「どうだ、動けないだろう。わたしの意識とおまえの意識を同調させた。今のお前は操り人形さ」
ローレムの頭の中ではガルシアの声が鳴り響いていたが、指一本も自分の意志で動かすことはできない。まるで夢でもみているようだった。
「わたしの同調は本来自我の薄い獣に対して使う技だ。言葉の通じない獣にわたしを仲間だと思い込ませたり、いいように意識を変化させることができる。自我のある人間には数秒意識を奪う程度の効果しかないがね……おっと、そろそろ効果が切れる……」
意識が徐々にはっきりし、ローレムは我に返った。
「はっ、オ、オレは何を……まだ頭がぼーっとするぜ……」
「ふふ、すぐにわたしの仲間が助けにくるよ。逃げた方がいいんじゃないかい?」
「そうか、おまえか……だんだん頭がはっきりしてきたぜ、忌々しい」
ローレムは悔しそうに口元を歪めると、ガルシアの元へと歩を進めていった。




