ヴァーロの夜
夜の深まりとともに落ち着きを取り戻しつつあるヴァーロ。
街中では未だ魔物への警戒を怠らず自衛団が警備をしていたり、少しでも復興を進めようという人たちが働いていた。もちろんリズたちも手伝おうとしたが、魔物の指揮官を倒した功労者である少女たちにそんなことまでしてもらうわけにはいかないと街の好意で宿と着替えと食事を提供され休息をとっていた。
食事をとり、湯につかり、ひと段落したところで宿の広間に集まり本日の反省会が行われていた。
「ふぅむ、危ない場面もあったようだがとりあえず全員大きな怪我もなく無事でいられて何よりだ」
ミコトは自分の目の届かない市街地での状況を一通り聞き終わるとそう切り出した。
開戦始め氷魔法で敵の出鼻をくじいたベルトーシカや、市内での避難誘導や魔物の討伐など的確な行動は褒められたものの、一人で敵陣付近まで乗り込んだクロエや、自分勝手な行動を起こし仲間を危険に晒してしまったウルなどは特にこっぴどく叱られていた。
反省会も終わり、就寝のため二人一部屋が割り当てられ就寝となった。
「ねぇ、リズ……」
モモは壁側を向いて布団に潜り込んでいるリズへと声をかける。
「なに、モモ?」
「何か話したいことがあるんじゃないの?」
「……やっぱりわかっちゃうか?」
「そりゃそうだよ……」
リズのピンチを救い、その後ルルティアを加えた三人で魔物の討伐を行っていた時から元気がなかった。モモがそれに気が付かないわけがない。
「わたし、自分一人でも誰かを守れるくらい強くなったと思ってた」
モモが「うん」と小さく相槌を返す。
「でも実際にはあんな小さな子すら守れなかった。モモとルルが来てくれなかったら、あの子を守り切ることなんてできなかった。わたし全然強くなんてなってなかった」
まだ壁を向いて話しているリズの肩は小刻みに震えていた。
モモはリズのベッドに潜り込みその肩を抱きしめる。
「そんなことはないよ。リズがいなかったらあの子は魔物に見つかって殺されていたかもしれない。ルルがいなかったらわたしが駆け付けるのにも間に合わなかった。リズとルルとわたしがいたからあの子は守れたんだよ。誰かが欠けても駄目だった、だからリズが落ち込むことは無い」
「それはわかってる……けどもしあの子を最初に見つけてたのがモモだったら?一撃であんな魔物やっつけて簡単に守れてたはずだよ」
「それは……」
モモが珍しく口ごもる。
「わたしがいままで誰かを守ろうとしてやってきたことだけじゃダメなんだよ。わたしは……わたしはモモみたいに強くなりたい」
リズは未だに背を向けたまま、モモの方を向こうとはしない。
〈リズはわたしに憧れてくれている……なのになんでだろう、こんなに近くにいるのに……〉
モモはその姿勢にリズが遠くに行ってしまうような寂しさと孤独感を感じていた。




