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英雄譚はいつも紅に染まる  作者: パン定食
ヴァーロでの戦い
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狂戦士

「絶対、に……ゆる、さない」


 ウルの黒目は怒り狂った獣のような縦長の形を成し、肘から手、膝から足にかけて逆立った毛が生え揃い、褐色の肌も黒みを増していた。


「ガルルルル!」


 変化したウルは一直線にプラゴを睨みつけている。


「あいつなんか様子が変わったぞ、プラゴ」

「殺してしまえば一緒さ、プラゴ」


 二体のプラゴは息を吸うとウルに向かい水滴を連射させる。ウルは避けることもなく、その攻撃は直撃してしまう。


「ウル!」

「プギャギャ、あっけなかったなぁプラゴ」

「プギャ……いや待て、プラゴ。よく見ろ!」


 直撃を受けたウルにダメージはほとんどなかった。

 直後、ウルの姿が消えてしまう。 —— いや、正確には目で追えないほどに早く動いたのだ。一呼吸するよりも速く一体のプラゴを切り裂く。


「プ、プラゴォ! いかん距離をとらねば……」


 もう一体のプラゴはすぐさま分裂を作り始め、距離をとろうとするが獣化したウルはその時間を与えず頭から下半身にかけ引き裂いた。


 アナは散々てこずった敵を倒した喜びよりもウルの変化に戸惑い、オウルの服をつかみすり寄る。


「おい、ほんとにあれ、ウルなのか?」

「ああ……だけどオレたちの知ってるウルじゃないかもしれない……」

「……それってどういうことだよ……」


 プラゴを倒したウルの目線はアナとオウルに向けられていた。


「ガルァーーーー!」


 とがった牙が見えるほど大きな口を開き、叫び声を上げるとともにすさまじい速さで向かってくる。

 オウルはアナを突き飛ばし、ウルを迎え撃つ。振り降ろされた腕を避けると、足をかけて転ばせウルの頭を地面に押し付ける。


「やっぱりか!」

「な、なんでウルがあたしたちを攻撃してくるんだよ」

「今のこいつには敵味方を区別できるほどの自我がなくなってるんだ」

「どういうことだよ」

「オレの師匠から聞いたことがある。昔オルカカ族の一人と一緒の編成(パーティー)を組んだ時、強敵に追い詰められてこの獣化(バーサク)を使って敵味方関係なく攻撃し始めたって。敵を倒した後もそいつを止めるのに苦労したってな。今のウルにはオレたちが味方だなんてわかってないってことだよ」

「それじゃあ、本物の獣みたいじゃないか……」


 頭を押さえつけられてたウルは飛躍した身体能力にものを言わせオウルを跳ねのける。


「くそっ、さすがウチ一番の体力馬鹿! さっきの化け物どもよりやっかいだ」


 起き上がるなりすぐに攻撃に移るウルを回し蹴りで撃退するも、攻撃の手は止まらない。オウルも手加減できず、次第に反撃の手も激しくなっていった。


「やだよ、こんなの。なんで仲間同士で戦ってるんだよ!」

「そんなこと言っても、気絶させるか殺すかしないと止まらないぞ!」


 オウルが叫びナイフに手をかけようとした時、ウルの身体が崩れ落ちる。


「『殺す』なんて言うなよ……そんなの悲しすぎるよ……」


 そう言ったアナの手には棒のようなものが握られていた。


「……吹き矢か?」

「ああ、眠り薬が仕込んである」


 生えた毛が抜け落ち、ウルの身体は元の姿に戻っていった。

 二人は様子を確認しようと、その寝顔をのぞき込むと吹き出し笑ってしまった。


「ははっ、こいつ半目開けて寝てら」

「ああ、全く人の気も知らないでのんきな奴だよ」

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