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英雄譚はいつも紅に染まる  作者: パン定食
ヴァーロでの戦い
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プラゴ

 ヴァーロ北区には普段市民の集会場として活用されている公民館と公園がある。今は避難所として扱われているその場所が市内で最も戦火の激しい場所となっていた。

 魔物に襲われ兵士たちが必死に抵抗するも、避難してきた住民が巻き込まれ三十人をも超える被害者が出てしまっていた。


 その中にはアナとオウルの姿もいた。

 対峙している魔物は深海魚のようなぬめりのある肌ではあるが、赤ん坊にもフグにも似た見た目の二体の魔物だった。二体の魔物は宙を飛び回り、口から高速の水弾を放ってくる。


水滴機関銃(アクアマシンガン)


 放たれる水滴は壁を削り、鎧を着た兵士を貫くほどの殺傷力を秘めている。その水滴の嵐の中をかいくぐり、なんとか近くの民家に飛び込み難を逃れるアナとオウル。


「プゴゴゴ、人はもろいなぁプラゴ」

「プゴゴゴ、全くだなぁプラゴ」


 お互いを「プラゴ」と呼ぶ魔物は手をつなぎくるくると回りながら笑い、声をそろえハモらせる。


「プゴゴゴ、我ら二人で一つ。フジツボのギャング様の()()()()プラゴ!」

「我らで手柄を上げてあのスティンに泡をふかせてやろうなぁ、プラゴ」

「ああ、カニのようにブクブクとなぁ、プラゴ」


 窓からその様子を伺っていたアナが腹を立てる。


「なんだあのふざけた魔物は!」

「見た目に騙されるなよアナ、どうやらあいつらがこの群れを指揮してるボスらしい」

「うん、わかってる……それよりもどうにかしないと……」


 アナの目線の先には先ほどの水滴に撃たれケガを負った人たちが倒れ血を流していた。


「ああ、そうだな。お前持っているんだろう? あれ」

「あれ?」



 辺り一面が煙に包まれる。アナの煙玉によるものだ。


「おや、なんだろうねぇプラゴ」

「火事かなぁプラゴ」

「残念、お前たちを始末する狼煙だよ」


 煙に紛れ、二体の魔物の背後に現れたオウルは片方のプラゴの首を切り裂くと、けが人を家の中まで運び入れていたアナが思わず声をあげた。


「やった! うまくいった」

「プゴゴゴ、やられちゃったねぇプラゴ」

「……」


 地に落ち口をパクパクさせ死に向かっている相方を見下ろしながらも、もう一体の魔物は笑っている。オウルは右手の爪についた血を払いながら、その冷徹さに嫌悪感をあらわにする。


「ふん、所詮は魔物だな。相方をやられたってのに笑っているとは胸糞悪い……」

「プゴゴ、我らは二人で一つとさっき言ったはずだよぉ」


 プラゴの背中からヌルヌルとこぶのようなものが盛り上がる。そのこぶはやがて赤ん坊のような形を成してゆき、もう一体のプラゴとして分裂した。

 そのグロテスクな光景にアナは青ざめる。


「げぇー、気持ち悪い……どうなってんのあいつら……」

「あの分裂した方が本体ってことか?」

「プゴゴゴ、我らはどっちも『プラゴ』なのさぁ、ねぇプラゴ」

「プゴゴゴ、我らは不死身なのさぁ、ねぇプラゴ」


 分裂したばかりでも息がぴったりな様子をみてオウルが気づく。


「つまりお前たちはどっちも同一人物で、両方同時に倒さないといけないってことだな?」

「プゴゴゴ、ばれちゃったねぇプラゴ」

「プゴゴゴ、こいつなかなか賢いねぇプラゴ」

「「でもぉできるかなぁ」」


 二体のプラゴは別方向に分かれまた水滴を放ってくると、二人は慌てて家の中へと身を隠す。


「おい、どうすんだよ。さすがに同じ手は通用しないと思うぞ」

影移動(シャドウムーブ)を使えば一体に近づくことはできるだろうが、もう一体はお前がどうにかするしかないだろ」

「ご冗談を、あたしにどうにかできる相手だと思う?」

「……できると思うから言っているんだ」


 思いがけない言葉に、アナは豆鉄砲をくらったような顔をする。だがすぐに白い歯を見せてにかっと笑みを浮かべる。


「嬉しいこと言ってくれるね。じゃあ覚えたての魔法でも披露しちゃおうかな」

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