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英雄譚はいつも紅に染まる  作者: パン定食
ヴァーロでの戦い
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初手

「何分、海の中なので正確な数はわかりませんが海の敵の数はおよそ五百体程かと思われます」

「五百か……市内に回り込んんでいることからも向こうにも頭の切れる司令塔がいるらしいし、なかなかピンチかもな」


 ミコトは自衛団の隊員を捕まえ、できるだけの情報を仕入れていた。


 魔物の強さはピンからキリまであり、兵士一人で倒せる雑魚から五十人がかりでようやく倒せる魔物まで様々であるが、一般的には魔物一体倒すのに兵士三人必要とされている。

 街の兵士八百、それに加え傭兵およそ二十百。魔物の数が五百だと兵士は今の倍は欲しいところだ。


「それじゃあ、お前たち一人頭十体は倒せよ」

「えー!! 本番の戦闘初めての生徒たちに何言ってるのこの人!」


 ミコトの無茶ぶりに抗議したのはヨハンナだ。


「たったの十? わたし一人で百はいけるわよ」

「ほっほ、大きく出たのう、ベルトーシカ。それじゃあわたしは五十ぐらいを目指しましょうかな?」

「ベルもコリンも自信家……わたしはそんな自信ない」


 よほど自信があるのか大口を叩くベルトーシカとコリン。初めての魔物との戦闘で不安げな表情を見せるのはエマだ。


「じ、じゃあ私は千体を目指すアル!!」

「パイちゃん、それ敵の数超えてるよ。わたしたちは近づいてくる敵を撃退するだけでいいからね」

「……なんか臭い……」


 ガルシアはわかっているのか、わかっていないのか相変わらず意気込みだけは一丁前のパイをたしなめ、計画を再確認させる。

 そんなやり取りをしている最中だった。ただでさえ磯臭い沿岸部の船着き場にさらに腐ったような匂いまでが立ち込めてきた。それをいち早く察したのはクロエだった。


「キシャアアア!!」


 突如、海中から海月のように半透明なボディの魔物、ワニのような顔にうろこに覆われた魔物など様々な海の魔物が飛び出し上陸してくる。


「来たぞ!! いいか、できるだけ無茶はするなよ!」

「わかってる。ガルシア、陸に上がった魔物は任せたわね」


 ベルトーシカは魔物には目もくれず海に駆け出して行った。


「何をする気?」

「言ったでしょ、『百いける』って。絶対零度(アブソリュートゼロ)!」


 魔法を使うとおよそ百メートル四方の海が瞬時に凍り付いた。もちろん海水だけでなくその中にいた魔物ごと丸ごとだ。その数は確かに百ほどはいっているだろう。


 ざわざわと兵士たちから驚きの声が上がる中、ベルトーシカは踵をかえし、どや顔を浮かべた。


「ミコト、わたしの分のノルマは達成したわよね?」

「おぉう……そうだな、だけどミコト先生だろ。呼び捨てにはするな」


 驚嘆を隠せないミコトはそう言うのがやっとだった。

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