非日常の始まり
トーナメントから数日たったある日の朝のことだった。
教室内で授業の開始を待っていたリズは窓の外に見える風景を眺めていた。小鳥がさえずり、木々は青々とこれから暑くなる季節へ向けて葉を実らせている。そこには確かにいつもと変わらない日常が流れている。
しかしその日常は勢いよく教室の扉が開かれたことで非日常へと変わった。
「おい、お前たち今すぐ戦闘の準備をしろ! ヴァーロで魔物の大群が確認された。うちにも援軍の要請が来たからお前たちにも参加してもらう!」
ヴァーロというのはこの学園から南に位置する港町のことだ。貿易に力を入れている街で、この学園もそこからさまざまな物資を調達しており、近辺の内陸の街からするとなくてはならない重要な貿易の拠点となる街だ。
「も、もしかしてこれも訓練の一環なの?」
「いいや、これはマジなやつだ。30分後には校門前に集合しろ、すぐ出発するからな」
突然の招集に動揺しているアナの質問に答えるとミコトはまた駆け出して行った。
一同はしばらくどよどよとしていたが、パンパンと手を叩く音が響いた。その音の主はガルシアだ。
「みんな聞いたでしょ? 早く着替えて校門前にいくよ」
「準備って何用意すればいいのだ?」
「自分たちの戦う準備だけでいいんじゃない?」
ガルシアの仕切りにざわつきはあるが、みんな慌ただしく行動を始める。
リズとモモも自室へと早足で向かっていた。
「実戦……だね」
「うん、ドキドキするね」
ドキドキすると言ったモモの表情からは、それが不安からくるものなのか、魔物と戦える興奮からくるものなのか読み取ることはできなかった。




