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英雄譚はいつも紅に染まる  作者: パン定食
実技トーナメント
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パジャマパーティー

 パジャマパーティーはユノたちの住む四人部屋で行われた。

 寝巻である学園既定のおそろいの白いワンピースを着た少女たちが一同に集うと、華やかな香りが立ち込める。


「パジャマパーティーなんてはじめて……」

「わたしもそうね、姉妹たちとはあつまっておしゃべりとかしてたけど、こういうのは初めてだわ」


 パジャマパーティーなどみんな初めてなのだろう。どこかふわふわとした空気の中、エマとベルトーシカが話していた。


「みんな集まったかしら、お菓子持ってきたわよー」

「紅茶やジュースも持ってきましたからね」

「うひょーお菓子、おいしそー」


 部屋のドアを開け、ユノ、ウル、ルルティアが食べ物をもって入ってきた。その食べ物をアナが並べるのを手伝う。その際こっそりとクッキーをつまみぐいをしていたアナを見逃さなかったのはウルだった。


「そのクッキーうまいか?」

「んん、うん普通にんまい。やっぱユノさんのお菓子は絶品だな」


 その言葉にウルが満面の笑みを浮かべる。


「そのクッキー作ったのはウルなのだ」

「えぇ、嘘だろ!」

「本当よ、将来のためにもおいしい料理を作れるようになりたいって、今勉強中なのよ」

「将来のため?」


 アナがなんのこっちゃと言わんばかりに眉をしかめる。


「ウルちゃん、将来たくさん子供が欲しいんですって。だからその子供たちにおいしいもの食べさせてあげたいって……ウルちゃん偉いですよね」

「ほんと、将来のことまで考えてて偉いわ。女の子の鏡よ、わたしも教えがいがあるわ」


 ルルティアに褒められウルは照れている。その横でかじったクッキーをまじまじと眺めるアナがいた。


「たしかに、()()()()にもこんなおいしいお菓子食べさせてやりたいな……」




「ふうむ、甘いものもいいですが、大人には酒がないと少しさみしいですなぁ」

「それじゃあ、わたしがつきあうよ。たまにはワインなんてどうだい?つまみもいくつか用意してくるよ」

「おお、ワインもよいですな、わたしも手伝いますぞ」


 ジュースや紅茶ばかりが並んでいたのを見てがっかりしたコリンに助け船を出したのはガルシアだ。ユノたちとは入れ違いに今度は二人が部屋を出て行った。

 その様子について口を開いたのはヨハンナとパイだ。


「ふーん、ガルシアも料理できるんだね」

「まぁ大人だし、それなりに作れて当たり前じゃないアルか」

「そんなこというパイは作れるの~?」

「あっ当たり前アル! 勝負するアルか?」

「出たね、パイの勝負ぐせ。今まで勝ったことあったっけ?」


 勝負と聞いて会話に加わってきたのはモモだ。


「ムキー、言ったアルな! じゃあモモには作れるアルか?」

「わたしを見くびっちゃいけないよ。食べる専門で作ったことなどありません!」


 モモは両腕を組み堂々と言い放つ。


「わたしもアル。作ったことないからこの勝負引き分けアルな」

「そもそも勝負になってないじゃん」


 やれやれと両手を上げるジェスチャーを示すヨハンナだった。




「二人ともこんな隅で突っ立ってないでみんなと一緒に楽しもーよ」


 リズは三人分の飲み物とお菓子をもって、部屋の隅の壁際に突っ立っていたクロエとオウルに声をかける。


「かまうな、甘いものは苦手なんだ」

「またそんなこと言って……なんで仲良くできないかなぁ?」

「わ、わたしはいただく……」


 クロエにお菓子と紅茶を渡すが、オウルは受け取ってくれなかった。

 

「はっは、無駄ですぞ。渡そうとしても貸しだの借りだのとかいって受け取ってくれん。全く無粋な奴ですわ」

「ふふ、恥ずかしがり屋さんなのかな?」


 いつの間にか戻ってきた大人組のコリンとガルシアはすでにアルコールがはいってるらしくほんのりと顔が赤い。


「くっ、酔っ払いどもめ……」

「まぁまぁ、ここに座ってお酌でもしてくれんかね?」

「誰がするか!」

「あー、クロエちゃんやリズちゃんもこの料理食べてもいいからね」


 ガルシアが渡してきたのはタコとガーリックをオリーブオイルで炒め、刻みパセリをかけたものと、イカ、エビのはいったアヒージョと酒のつまみにはもってこいの料理だった。

 それをつまみ、歓喜の声を上げたのはリズだ。


「ん~ガルシアさんイケメン。こういう料理をさらっと作れるところが魅力的だよねぇ。ほらこれなら甘くないよ」


 ガルシアから受け取った皿をオウルにも差し出すと、躊躇したもののしぶしぶとつまむ。


「ん……おいしい……」

「最初から素直になればいいんだよ、そんなことだと友達なんてできないぞ~」


 オウルに絡んできたのは意外にもクロエだった。よくみると片手にはワインを持っている。どうやらジュースと間違えて飲んでしまったらしい。


「クロエって絡み酒なんだね、しかも超弱い……」

「そうだね、二十歳超えてもクロエちゃんには飲ませないようにしよう……いや、むしろこんなに活発になるなら飲ませた方がいいのかな?」


 オウルに絡み続けるクロエを生暖かい目で見守るリズとガルシアだった。





「うん、たまにはこんな時間も必要だよね」

「そうね。勉強して訓練して、これから戦場にでることもあるだろうし、こういう時間って貴重だと思う。今までほとんどベットの上で過ごしてきたから、同年代の子たちとこうやって遊んだことなんてなかったし、ほんと楽しい」


 ベルトーシカがポツリとつぶやくとエマがその内容に同意する。幼少時から一人でいることが多かったエマの顔はほんとに楽しそうだ。


「エマもいろいろ苦労してきたんだね……ママもこんな感じで守るべき人たちができていったんだろうな……」


 盛宴の中、ベルトーシカは窓越しに星空を見上げ亡き母に想いを馳せ、そして仲間たちとの青春の一ページを刻むのだった。







 パジャマパーティーも終わり、それぞれが自身のベットで眠りについた後、リズは微かな物音に気付き目が覚めた。

 普段部屋の中を真っ暗にして眠りにつくはずだが、何故か明りが差している。その正体はモモだった。机に向かい何かを書いているようだった。


「モモ?」

「あっ、ごめん起こしちゃった?」


 すぐ近くでクロエが寝ていることもあり、二人の声はヒソヒソ声だ。


「こんな時間に何してるの?」

「ん、あぁ、今日はあまり勉強できなかったからね、みんなが寝静まってからコッソリやろうってね。天才は努力している姿を見せたくないのだよ」


 モモは強気な姿勢を示す。


「ふふ、何それ……じゃあわたしは何も見なかったことにしてまた寝るね」

「うん……ねぇリズ……」

「ん?」

「……ううん、おやすみね」

「・・うん、おやすみ」


 何かをいいかけ、一瞬躊躇した様子が少し気になったがリズの意識は再びベットの中へと吸い込まれていった。

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