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英雄譚はいつも紅に染まる  作者: パン定食
実技トーナメント
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つかの間の休息

 トーナメント最終戦の前に連戦での疲れを癒すために昼食タイムを設けることになった。

 通常の昼食の時間からはずれているため、食堂の中は誰もおらず、がらんとしていた。


「相変わらずよく食べるね、これからまた動くって言うのに」

「腹が減ってはなんとやらだよ」


 リズとモモ、決勝を争う二人はいつもの調子で同じテーブルに向かい合い昼食をとっている。

 他の面々は気を使ってか、二人とは少し離れたテーブルを囲んでいた。珍しくオウルから会話の糸口を切り出す。


「よくこれから戦う相手と同じ食事ができるもんだ」

「確かにな、ウルだったら意識してご飯も喉を通らないのだ」

「ウルがご飯食べられなくなることなんてあるのか?」


 大量の食事を平らげているウルを見て、呆れた顔をしサンドイッチを頬張るアナ。


「ボクだったら下剤でも混ぜてるところだよ」

「勝つためなら手段を選ばないのはわかりますけど、それは駄目ですよ!」

「ふふ、ヨハンナの冗談だよ。ルルはまじめだなぁ」


 どこまで本気なのかわからないヨハンナの冗談にルルティアが注意を促す。

 そんなルルティアを微笑ましく眺めブラックコーヒーを(すす)っていたのはガルシアだ。


「あの二人ならそんなことしないでしょうね~。あの仲良し二人が決勝まで残るなんて思いもしなかったわ」

「そうね……正直リズが勝ち残るなんて意外だったわ……てっきりコリンかクロエだとおもってたんだけどね」


 のんびりとした口調のユノに同意したのは先ほど激しい戦いを終えたばかりのベルトーシカだ。


「わ、わたしなんて……」


 クロエは予期せぬところで自分の名前が出たことで赤くなり、ごにょごにょ言いながらうつむき、お味噌汁を啜り始めた。


「いやいや、リズ殿は立派に戦いましたぞ。わたしも完敗でした」


 その言葉に一同コリンの顔を覗き込む。


「ん? 何かわたしの顔についてますかな?」


 そういうコリンは自慢の髭を撫でる。

『うん、ついてるよね』と皆が一斉に心の中で突っ込みを入れていたのは言うまでもない。ただ一人を除いては……


「いやいや、ついてるアルよ、コリンのその鼻のしt―― 」

「パイはちょっと空気読めるようになったほうがいい……」


 さっきまで餃子を食べていたパイの口に突然モフモフのケットシーのお尻が詰め込まれる。

 エマは特徴的なジト目でパイを睨んでいた。そのエマにささやかな抵抗を見せる困り顔のケットシー。


「ちょっとエマ、人の口にボクを詰めないでもらえるかな……? うっ餃子くさい……」




「あーお腹いっぱい、これでリズとの戦いも全力出せれるよ」

「うん、わたしも全力でモモと戦いたい」


 モモは目をパチクリさせる。


「およ、始まる前とは違って妙にやる気だね、揉まれたのが効いたのかな?」

「バカ……いや、皆いろんな戦う理由があったり、頑張ってる様子見たらね。特にさっきのベルトーシカとの戦いで苦戦してるモモ見たら、なんかくやしくなっちゃって……」

「くやしい? なんでリズが?」


 またもや目をパチクリさせる。


「わたしの方がモモをもっと苦しめさせてやりたいから」


 リズはモモの目を覗き込みながら微笑む。

 通常ならひどい言葉に聞こえるかもしれないが、モモは鼻息荒く微笑を返した。その顔はわずかに高揚していた。


「リズもわかってきたね。うん、わたしのこともっと苦しませて、もっと追い込んで! そしたらわたしはもっと強くなれるから!」

「まぁ、やるからには勝てるように頑張るけどね。ほら、そろそろ時間だよ、行こっ」

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