反魔法 (ベルトーシカ vs ヨハンナ)
グラウンドには虚ろな表情のベルトーシカと、初戦を突破し、やる気に溢れているヨハンナが相まみえていた。
戦うことを嫌いながら戦う理由ができてしまった魔女の心中はぐるぐると渦を巻いていた。
憎んでいた相手を母が助けたこと、母を殺した相手が遠い昔の同族だということ。復讐……とまではいかなくとも同族を止めるために戦うべきではないだろうか、大きな力など無ければ戦わなくてすんだのだろうか、などといろんな考えがベルトーシカを支配しており、戦う気などさらさら起きなかった。
勝負を開始すると同時にヨハンナを氷付けにしようと躊躇無く魔力を放つ。
「悪いけど、すぐに勝負をつけさせてもらうわ、氷結の牢獄」
「相手が魔術師とわかっていてボクがなんの準備もなく勝負に挑むとおもったかい?」
ヨハンナは唐草模様の布を取り出すと、向かってくる魔法をその布で払う。すると魔法ははじかれ観客席へと向かってしまう。
「あっヤバ……」
観客席で見ていた仲間達すれすれの席が氷付けになる。
「こらー、殺す気かー!」
特に一番近くにいたアナが腕を振り上げ喚いている。
「あちゃー、うまく跳ね返す練習もしないとなぁ」
「……変な道具をもってるわね」
「へへっ、ボク特製の反魔法布だよ。その名の通り魔法を跳ね返す優れものさ、ボクに魔法は効かないよ」
ドヤ顔でそう言い放つが、それは半分嘘である。跳ね返すにも限度があり、ばれる前に決着をつけないとなー、などと内心思考をめぐらせていた。
「そう……反魔法ね」
冷静なベルトーシカは右手を頭上に掲げる。
何をしているのかと思いふと顔を上げてみると、ヨハンナの頭上には氷の塊が浮かんでいた。その氷はどんどん成長を続けている。
「ヨハンナには今更説明するまでもないだろうけど、魔法で氷を作るには大きく二種類のやり方があるの。一つは魔力から直接氷を作る方法、もう一つは大気中の水分を集め冷却して氷を作る方法。この二つは似て非なるものだって……わかるわね?」
「うん、前者は魔力の氷。こうしゃは物理の氷だよね」
「そのとおり。じゃあ今作っているのはどっちだと思う?」
「個人的には前者であってほしいかな~。後者だとこの布じゃあ返せないし……」
「それじゃあ落としていい?」
そう言うベルトーシカの表情は氷のように冷たい。ヨハンナは頭をぶんぶんと横に振る。
対魔法道具ならいくつか用意してあったが物理攻撃での脅しをかけられるとは思ってもなかったヨハンナにその氷を避ける術も壊す術もなかった。
ヨハンナは両手を上げる。
「いいや、やめておくよ。試験でぺちゃんこにされるとかご勘弁だよ……まいった」
これでベルトーシカは無傷での二連勝となり、圧倒的な強さを見せつけ準決勝へと駒を進めた。
続くモモもシード枠なので自動的にトーナメントは三回戦目、準決勝へと進むこととなる。




