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英雄譚はいつも紅に染まる  作者: パン定食
実技トーナメント
48/92

小細工勝負 (ヨハンナ vs オウル)

 続いての対決はヨハンナとオウルだ。


 様々な知識と道具を駆使する錬金術師のヨハンナと暗器を使い多才な攻撃方法を持つ暗殺者のオウル、トリッキーな者同士の対決となる。


 お互いそのことについては理解しており、先手を取られないよう警戒しにらみ合った状態が続いている。


<相手の出方を待っていても埒が明かないな>


 先に行動を起こしたのはオウルだ。飛びナイフを投げ牽制をしかける。


「うひゃあ」


 ヨハンナは飛んでくるナイフを避けようととし、盛大にこけてしまう。


<そういえば運動神経悪かったな、コイツ……>


 そう考えたオウルはすぐさまに距離をつめる。何を隠しておこうとも使う本人の身体能力が低ければいくらでも避けられる、そう考えた上での行動だった。

 その姿を確認したヨハンナはすぐさま逃げ出す。


「うへぇ、こっちくるなー!」

「くるなと言われて追うのをやめると思うか?」


 途端、オウルの足元で爆発が起こる。


「なんだ?」

「だからこっちくるなっていったのに……」


 先ほどはわざと転んだふりをし、地雷型の魔導爆弾(マジックボム)を仕掛けていたのだ。

 二カッと笑みを浮かべるヨハンナは次なる行動を取る。

 服の下に手を伸ばすと、ボールを取り出し投げつける。そのボールは着弾間近で破裂し、中からベタベタした粘着性の強い白い粘液が飛び出し、オウルの体に絡みつき自由を奪った。


「なんだこれ? うごけない……」

「はっは、ベタベ弾だよ、相手の動きを封じるためにボクが作った道具だよ」

「ベタベ弾……? 絶望的なネーミングセンスだな」

「なっ!」


 センスがないと言われショックを隠せないヨハンナ。しかし落ち込んでる暇はなく、電光棒(ライトニングロッド)を取り出す。


「いいさいいさ、ネーミングセンスなんかなくたって……悪いけどこの勝負は勝たせてもらうよ」


 電気が流れバチバチと音を立てているロッドを手に、動けないオウルに近づいていく。

するとオウルの姿が突如消えてしまう。


「うぇぇ、どこに消えたの?」


 慌てふためくヨハンナの背後から声が聞こえた。


影移動(シャドウムーブ)、実体を消し移動する魔法だ。これでようやく間合いに入れたな」


 オウルは爪や蹴りなど連激を繰り出しヨハンナのLPを削っていく。いいようにダメージを受けるヨハンナは手にしたロッドをがむしゃらに振り回し抵抗をする。


「おっと、その棒に当たったら致命的だからな」


 がむしゃらに振り回され、当たりそうになったロッドを警戒し一旦距離をとるオウルだが、すぐさま大きく息を吸い込むと火炎を吐き出す。立て続けに攻めて戦略を練らせない作戦なのだろう。


「うわっちぃ」


 炎にひるんだヨハンナの後ろから再びオウルが現れる。


「止めを刺してやる!」


 再び攻撃を仕掛けようとしたオウルだが、タイミングを見計らったようにヨハンナのロッドがオウルを襲った。その攻撃をギリギリでかわすとロッドの電気が髪を焦がす匂いがかすかに広がる。


「まさか私の攻撃を読んでいたのか?」


 再び距離をとったオウルは驚愕していた。考える隙など与えなかったし、炎で目眩ましもした。

 それなのに背後から再び攻撃を仕掛けることを予測できたとは思えなかった。


「いんや、君がどこにいるのか大体の見当がついてるだけだよ」

「……どういうことだ」


 よく見るとヨハンナの傍らにてこてこ歩く小さな物体があった。それは大きさこそ違えど試験の時に見たゴーレムそっくりだった。


「なんだそいつは?」

「ゴーレムだよ、君も闘ったはずだろ? こいつに君の匂いを覚えさせ追いかけさせていたのさ」


 ゴーレムはよちよちとオウルに近づいてゆく。オウルが右へ移動すると右へ、左へ移動すると再び向きを変え近づいていった。


「なるほどな、コイツが向きを変えればオレがどこへ移動したのか検討がつくわけか……」

「その通り、しかも衝撃与えたり、触れても爆発するおまけつきだよ」


 ドヤ顔するヨハンナをみて、オウルは覚悟を決めたような表情になった。


「ふん、小細工勝負だとおまえの方に利があるようだな。真っ向勝負の方がいいか……」


 そういうなりゴーレムを避けヨハンナに向かって駆け出してゆく。

 ヨハンナは真正面から向かってくる相手にロッドを身構えるが、直前でオウルの口から黒い霧が吐き出され視界を奪われる。


「汚い、真っ向勝負とか言ってたくせに!」

(フェイク)こそがオレの真っ向勝負だよ。もらった!」


 ヨハンナの眼鏡は真っ黒に染まり、辺りが視認できない。その隙を狙い勝負をつけようとしたその時だった、ヨハンナの大きな帽子の中と背中からと二体のゴーレムが現れ、オウルに飛びついた。


「しまった! こいつら爆発する!」


 しがみつくゴーレムを必死に引き剥がそうとするがなかなか取れない。


「……爆発……しない?」

「その通りだよ、さっき爆発するって言ったのはとっさについた嘘さ。爆弾付きのも作ろうと思ったんだけどね、最初の魔法爆弾で材料切らしちゃってね」


 いつの間にか眼鏡をはずしていたヨハンナはウインクしながらペロッと舌を出すと、オウルにロッドを突きつけた。


「ぐあああああ」


 オウルのLPが0になったのを確認するとロッドの電源を切る。


「勝負あったね、嘘が得意なのは君だけじゃないんだよ」

「……お前、いったいどれだけの『武器』を仕込んでるんだよ……オレの負けだ……」


 体にしびれが残っているのか、倒れ込んだオウルは動けないまま潔く敗北を認めた。

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