気功術(ガルシア vs パイ)
ガルシアの鞭がしなる。
パイはその鞭をギリギリでかわし懐に飛び込むと拳を繰り出し、ダメージを与える。
先ほどからパイとガルシアの攻防が行われているが、純粋な肉弾戦となるとやはり武道家であるパイの方が優勢だ。
「なぜ魔物を使わないアルか?」
劣勢にも関わらず、魔物を呼び出さないガルシアに対して抱く当然の疑問だった。
「……わたしの魔物たちはね、エマの精霊達と違って傷つくと治るのに時間がかかるし、死んだらよみがえることもないんだ。いざって時意外呼びたくないんだよ」
「なるほど……魔物を呼ぶくらいなら負けた方がマシってことアルか?」
「ふっ、誰が負けるって! 焔の鞭」
ガルシアは両手に握られた二つの鞭を振り回す。時には体を回転させ、時には手首のスナップを利かせ器用に鞭をしならせる。
「さすが、そうでないと倒し甲斐が無いアル」
「全く、無いんだか有るんだか……」
火花を撒き散らした鞭がパイを襲う。
ギリギリで避けたとしても熱によるダメージがあるため大きく避けなければいけなくなる。その避けた先に第二の鞭が襲い掛かる。その次もその次も反撃の機会が掴められぬまま、防戦一方となる。
やがて激しい衝撃音が響き渡ると共にパイにダメージが与えられる。
それから休む間もなく三度、鞭にいたぶられたところで鞭の嵐の中から転げ這いでる。
「その鞭、思った以上に厄介アルな……」
「そうだろう?これで数々の魔物を使役してきたんだ。易々と負けてあげられないよ」
「わたしは魔法を使えない、前に教わった呼吸法も毎日試してるけど全く使えないアル。けど、わたしには魔法にも負けない技があるアル」
朝、誰よりも早く起きて走り筋トレをし、寝る前には型稽古を行うなど誰よりも努力をしているのがパイだった。
「それなのに、ここに来てずっと負けっぱなしアル! これ以上情け無い姿を見せるわけにはいかないアル」
パイは走り出すと、振り回される鞭の嵐に再び身を投じた。
<何か策があるのか?>
ガルシアはそう思い警戒する。
が、その考えは無駄となる、パイはただダメージ覚悟で突っ込んでくるだけだった。頭を両腕でガードし、ガルシアの懐まで距離を詰める。
「これが君の言う『技』なのか?」
「そんな訳ないアル。気功術・牡丹」
パイの掌がぼやっとした光に包まれる。その手でガルシアの腹に掌底打ちを繰り出すとガルシアの背中からまるで牡丹のような形をした光が飛び散る。
「グフッ!!」
ガルシアの口からは血が吐き出された。
「魔力障壁があるのに、なんで直接ダメージが……」
観客席で見ていたルルティアが不安の言葉を上げると、眉をしかめたミコトが説明をする。
「魔力障壁はあくまで外からのダメージを防ぐものだけど、さっきのパイの攻撃は気功術といって体内に直接ダメージを与える技なんだ。本来は呼吸法を身につけた後に覚える技術なんだが……順番めちゃくちゃだな、アイツ」
試験の時と同じように頭上にはLPが表示されているが、魔力障壁にダメージがないとLPも減らない仕組みになっているのだろう、その数値は全く減っていない。
「どうアル、まだ続けるアルか?」
「……いいや、ちょっと無理、かな……降参だ」
かろうじて立ってはいるが、ガルシアの膝はガクガクと震えている。その様子がダメージの大きさを物語っていた。
「やった勝ったアル! ようやくわたしの実力が示せたアル!」
喜ぶパイを横目にガルシアの口からボソッと言葉が漏れる。
「別にわたしは勝ちにこだわる必要もなかったんだけどな……」




