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英雄譚はいつも紅に染まる  作者: パン定食
実技トーナメント
43/92

わたし自身が強くならないと! (リズ vs エマ)

「よし、みんな集まったな、誰がどう対戦するかはこちらで決めさせてもらった」


 生徒達が着替えをすませ、グラウンドに集合すると早速トーナメント表が開示された。それによると、最初の組み合わせはリズとエマの戦いだった。


「よろしくね、エマ。それとケットシーも」

「うん、よろしく」

「よろしくにゃ」


 リズとエマ達は挨拶を交わすと、早速グラウンド中央に向かい臨戦態勢をとる。


「それじゃあ始めてくれ」


 口で言うとともに合図のベルを鳴らすと、早速行動を起こしたのはエマだった。


「今回は個人戦、数が多ければ有利。出でよ、ウォーターリーパー!」


 地中に魔法陣が現れると、そこからスーッと空の色のような色の青い蛙の姿が現れた。

 ずんぐりむっくりの体に手足がない代わりに羽と長いしっぽがついており、召喚されるなり早速空中に飛び上がりエマの周りを飛び回る。


「エマ、久しぶりゲロ」

「うん、力を貸してね、リー君。相手は水属性だから土属性のわたしとシー君のが有利だけど、足りない部分があったら補ってちょうだい」


<召喚士の強みは数を増やせること、それにいろんな属性の精霊を呼び出せ相手の弱点をつける。シー君は土、リー君は水の属性魔法を使える。わたしも土属性の魔法を使えるし、これで三対一>


「多人数との対戦は苦手なんだけどな……水よ、その姿を我の前に映せ、青い幻像(ブルーファンタズム)


 エマの様子を伺ってたリズがポツリと呟くと続いて魔法を唱える。するとリズの両脇の二箇所に水が集まり、やがてそれはリズと見間違えるほどそっくりな形を成した。


「これで条件は同じだね」

「嘘、それはあくまで水がリズの形になっただけで攻撃力はあまりないはず」

「あちゃあ、さっそくばれちゃったか。でもめくらましにはなるんだよ」


 リズがにっと笑みを浮かべた途端、エマの背後から水が浴びせられる。驚き振り返った先には数二人のリズがいた。


「いつの間に後に!」


 エマが気をとられた隙に正面にいた三人のリズが攻撃へと向かう。それに気づくなり、エマと精霊達は一斉に魔法で迎撃する。


岩の棍棒(ロッククラブ)

水鉄砲(ジェットガン)

大地の手(アースハンド)


 宙を舞う岩、強力な水圧を放つ水の塊、大地から生えた手が真正面から来る三人のリズに攻撃を仕掛ける。


「うそ……」


 真正面から来た三人のリズは攻撃を受け、すべて水に戻った。予想外の事態にエマは驚きを隠せなかった。


「一人は本物のはずにゃ!」

「どこに行ったゲロ!」


 途端、青い蛙が刃につらぬかれる。後ろに気を取られた一瞬で、エマと精霊達の死角に潜り込んでいたのだ。


「ごめんね、猫を斬るのは抵抗あったから」

「そんな、出てきたばかりなのにゲロ……」


 つらぬかれた蛙の精霊は姿を消していった。立て続けにエマも狙う。


<身体能力の低いわたしが間合いに入られたら終わり!>


 地中から生えた手がリズの腰を掴む。


「ぐっ、動けない……」

「シー君、今!」

「わかってるにゃ」


 岩の棍棒がリズを襲うが、盾でその棍棒を防ぐ。

 リズの形を成した水人形が、大地から生えた土の手に体当たりし、柔らかくふやけさせると剣の柄で崩し落とす。


「よし、これで自由に動ける!」

「くっ、対応が早い、けど……」


再びエマの前に魔法陣が現れる。

 その中から現れたのは大きな翼と長い爪、人間の二倍くらいの巨体を持ち、細長い首の先には角や触手のついたとかげのような顔、ギョロッとした大きな目が特徴のドラゴンのような精霊だった。


「ジャバウォックだよ、さぁウォッ君やっちゃって!」

「まいったね、ドラゴンが相手なの? はじめて見たよ」


 空に舞ったジャバウォックは、リズの姿を瞳に映すなり急降下し、長い爪で攻撃を仕掛けてきた。それを盾で流し、すれ違いざまにその脚を斬りつける。


「ドラゴン相手でも意外と受け流せるものだね、師匠に感謝しなきゃだね」


 思わぬ反撃を受けたドラゴンは叫び声を上げ、再び空へと舞い上がると大きく息を吸い込んだ。


「あ、これまずいやつ」


 ジャバウォックの口から炎が吐き出される。

 リズはすぐさま、冷気の渦を作り炎を受け流すと、炎がおさまるなりエマの方へと駆け出し近づいた。


「属性の相性だとこっちのが有利だけど、こんなの相手にしてられないよ。エマの近くなら炎も出せないでしょ?」

「なっ、そんなの卑怯にゃ!ちゃんとジャバと戦えにゃあ」

「そんな義理ないでしょ」


 ジャバウォックもどうしていいかわからず空中を旋回し続ける。

 急降下攻撃を仕掛けようにも、その巨体ゆえにやはりエマを巻き込みかねないためだ。


 リズがエマに斬りつけようとしたとき、ケットシーが身を挺して刃を受けるが、体を石に変えていたために斬られることはなかった。


石の細胞(ストーンセル)だにゃ、これでリズの攻撃は通じないし、ボク自慢の拳も威力倍増にゃ!食らうにゃ、(ケットシー)パンチ!」

「いたたた、いたいいたい、あはははは」


 ポコポコポコポコ何度も殴りつける。しかしちょっと痛いくらいでほとんどダメージにはならなかった。


「ぜぇぜぇ、どうだまいったかにゃ?」

「……うん、かわいすぎてまいっちゃった」


 ほっこりとしていたリズの顔が歪む。すっかりと油断していたところを石の棍棒を持ったエマが背後から叩いたのだった。


「この子達にばかりやらせるわけにはいかない、わたし自身が強くならないと!」

 

 再び殴りかかろうとするが、リズはそれを難なく受け流し、逆にエマを転がし剣を突きつける。

 エマは鼻で大きく息を吐くと、くやしそうに口を開いた。


「降参……わたし、ほんとに弱いなぁ……」

「そんなことないよ。あんなドラゴンみたいなの呼び出せるんだもん、戦い方次第じゃわたしの方が負けていたよ」


 リズは剣を鞘に収めると手を差し伸べ、エマを起こす。


「ん、ありがと……リズってどれくらい訓練を積んだの?」

「えーと、八年くらいかな?どうして?」

「わたし、召喚術や魔法の勉強はしてたけど、こういう実戦みたいなことってこの学園に入ってからだから……どれくらい経験値積めばいいのかなって」

「あー、わたしは師匠相手に実戦ばっかりだったからなぁ……思い出しただけで吐きそう、負負負負(ふふふふ)


 師匠との訓練時のことを思い出し、死人のように青ざめた顔で乾いた笑いを吐き出す。


「でもそのおかげで強くなれたんでしょ? わたしからみたら羨ましい」

「羨ましいって、訓練で何度死にかけたことか……」

「ふふ、そのお師匠さんにも会ってみたい……今度は負けないから」


 エマが握った拳を向ける。


「わたしももっと強くなる。次も負けないからね」


 リズは差し出された拳に自身の拳をこつんと合わせた。

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