プロローグ3
その後、ユリの率いる兵団はリズの住んでいたオホノシ村の住人の埋葬を手早く行い、野営の準備を整えていた。
リズを助けた恩人は先ほどまで持っていた剣を包丁に持ち替え、炊き出しを作っていた。
「リズ、そこの器とってくれる?」
「は、はい」
リズが木製の器を持っていくと、切り刻んだ色とりどりの野菜をてきぱきと盛り付ける。
先ほどまでの凛々しさとは打って変わり、急に所帯じみた面を見せる。
「よし、完成! 他の奴らはまだ作業が残ってるようだから先に食べてようか? このスープもらうよ」
他の炊き出し班に声をかけスープをもらうと、パンとサラダを皿に乗せテーブルへと移り腰掛けた。
「さ、冷めないうちに食べよ。いただきます!」
「い、いただきます」
手を合わせたユリを真似て手を合わせ夕食をとる。正直あまり食欲は湧かなかったが、喉がやたら乾いていたのでスープだけでもと思い口をつけた。
そして皿が空になった頃、見計らった様にユリが重い口を開いた。
それはリズの父親は見つからず、妹を食った魔物の姿もなかったということだった。
その言葉にリズは愕然と項垂れはしたが、薄々は覚悟していたのだろう、涙が零れることもなく冷静に受け止めることができた。
「わたし、これからどうなるの?」
口から出たのは生きる術を知らない子供の当然の疑問だった。
「そうだね、親戚がいないのであれば、どこかの街の孤児院に入ってもらうことになるだろうね」
「わたし……わたし、ユリさんと一緒にいたい!」
突然の申し出に、ユリは面食らってしまう。
「……残念だけど、わたしたちは常に魔物と戦っているんだ。危険が付きまとうし、とても君の面倒を見ることはできない」
「……わたし、あの魔物に言われた。弱いことは罪だって……本当はわたしが死んで弟が生き残るはずだった。わたしが……わたしが弱かったから、勇気がなかったから弟を、リックを殺してしまったの」
リズは獅子の魔物、リオルグに言われたこと告げる。
ずっと心に引っかかっていたのだ。
自分が弟を守っていたのなら、一分一秒どころか今こうしてユリに助けられスープを啜っていたのはリックだったのだと。弟を殺したのは自分なのだと。
少女の目からはほろほろと涙が零れる。
「わたしは弱いから、強くなって誰かを救うことが、生き残ってしまったわたしの責だから! 一人でもリックのような子を守りたい! 涙の一粒でも、血の一滴でも止めれるように、わたしは、あなたの様に強くなりたい!!」
ユリは黙って少女の叫びに耳を傾けていた。
強い子だ――
幼いながらも、その強い眼差しにユリの心が揺り動かされる。
「……うん、リズの気持ちはよく分かった……それでも残念だけど連れていくことはできない。ただその気持ちは考慮して、わたしの知人に預けよう。その人は強く、厳しい人だ。その人の元ならきっと望みは叶うだろうさ」
リズは涙に濡れた眼をユリに向ける。
「わたしも強く、なれますか?」
「ああ、君は強くなれる」
そして時は流れ、8年の年月が経った――




