体力テスト2
<反復横とび>
「こういうのなら得意なんだよねー」
反復横とびを好成績で終えるとアナは得意げになっていた。逆に不満を漏らしたのはベルトーシカだ。
「わたしはどれもごめんだわ、魔術師系統の人にこんなことやらせたって意味無いじゃない」
「あれー、ベルともあろうものが負け惜しみかな?」
「事実を言っただけよ」
ふん、と鼻を鳴らしながら答えると、ミコトがやってくる。
「そんなことはないぞ。昔はそうやって戦士なら肉体を鍛え、魔術師なら魔力だけを鍛えるって訓練が一般的だったみたいだけど、今では得意分野はあれどどちらも身体も魔力も鍛えるのが一般化してるし、ここでもそういう訓練の仕方をしていくんだ」
「そんなの不合理じゃないの?」
「いいや、そうやって引き出し増やしていろんな事態に対処できるようにした方が生き残りやすいってデータもあるんだ。一応わたしも魔法使えるしな」
「えっそうなの?」
二人が心底意外そうな顔をする。
「ふふん、意外だったか? まぁわたしの場合魔法なんて使わなくても腕一本で魔物なんてやっつけてやるけどね」
<やっぱそうだよね。どう見ても体力バカにしか見えないし……>
そう心で呟く二人だった。
反復横とび結果(十七歳の女性平均 約42回)
一位 オウル 144回
二位 ウル 127回
三位 アナ 111回
(以下順列)パイ97回、モモ90回、ルルティア88回、リズ77回、ガルシア68回、ベルトーシカ60回、ヨハンナ42回、クロエ35回、ユノ33回、コリン31回、エマ20回
<100m走>
長い手足を交互に動かし華麗に走る姿があった。その者に珍しく自分から声をかけるオウル。
「お前ってエルフなんだよな?」
「は、はい、そうですけども……なにか?」
「いや、手足が長くていいなって……その……思っただけだ……」
人を褒めることなどほとんどないオウルは、言葉の途中で恥ずかしくなったのか歯切れが悪くなる。そして褒められたルルティアも顔を真っ赤にする。
「あ、ありがとうございます……オウルさんもクールでかっこいいですよ」
「……あ、ありがとう……それじゃ、次走る番だから……」
「あ、はい、頑張ってください」
ぎこちない挨拶を交わし、オウルがコースにつくと隣にリズがいた。
「オウルって人に『ありがとう』って言えたんだね?」
「な、馬鹿にしてるのか! 人をなんだとおもってるんだ?」
「いやぁ……今のオウル、かわいいなって」
「なっ!」
『かわいい』といわれ、動揺したタイミングでスタートの合図が鳴り、見事出遅れるオウルだった。
100m走結果(十七歳の女性平均 約17秒46)
一位 オウル 7秒88
二位 アナ 8秒25
三位 ウル 8秒63
(以下順列)パイ9秒02、モモ9秒32、ルルティア11秒19、ガルシア12秒57、リズ13秒24、ベルトーシカ15秒18、クロエ16秒22、ヨハンナ17秒77、ユノ19秒54、コリン20秒17、エマ22秒82
<持久走(10km)>
二つの荒い息使いが聞こえる。
「ぜぃぜぃ、もう、他の、人たち、見えなく、なったよ」
「はぁはぁ、そう、ね」
汗だくのヨハンナとエマは、今までの競技でほとんどのスタミナを使い果たしていた上に10kmも走らされることになり体力の限界だった。100m走ではたいした記録を出せなかったユノとクロエもスタミナがあるのか、二人のはるか先をいっていた。
「ぜぇ、もう、限界……歩いちゃ、おうか?」
「……嫌、わたしは最後まで、走りきる」
「エマ、って、けっこう、まじめ、なんだね」
「ううん、昔、約束、したの、『今を精一杯生きる』って……今を、妥協、したくない」
ぜいぜい、はあはあと息を切らしながらもエマの発した言葉には力強さがあった。
「しょうが、ないね。ボクも、つき、あうよ」
それから二人は黙々と走り続ける、学園から続く街道を走り、近くのリクシェルの街の入り口まで行きユーターンし学園まで戻ってくるという単調なコース。
折り返し戻ってきた他の子達ともすれ違いだいぶ経つ。二人で歩くのともさほど変わらないスピードで進み、やがてゴールが見えてきた。
「がんばれー、もう少しだぞ!」
「ファイトなのだー!」
「ガッツアルー!」
ゴールに近づくにつれ、仲間の応援の声は大きくなってゆく。その応援に後押しされヨハンナの脚がわずかに加速され、エマの前に出る。
そして体がゴールラインを超えた。
「やった。ゴールだよ、エマ」
脚を止め、後ろを振り返ったヨハンナの目にはゴール直前で倒れているエマの姿があった。
持久走結果(十六歳以上の女性平均 約60分)
一位 ウル 20分
二位 パイ 29分
三位 モモ 32分
(以下順列)リズ33分、ガルシア36分、オウル41分、アナ44分、ルルティア47分、ベルトーシカ52分、コリン57分、クロエ62分、ユノ66分、ヨハンナ75分
―― エマ棄権




