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英雄譚はいつも紅に染まる  作者: パン定食
カシシュミナ学園、入試試験
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墓参り

 リズは幼いころ暮らしていたオホノシ村に来ていた。


 カシシュミナ学園での入園試験は終わり、学園での生活は二週間後からとなるので、他の者はそのための準備のために帰郷し、リズは空いた時間に家族への墓参りにと訪れているのだ。


「こ、ここが……リリリ、リズの故郷、なのですか?」


 傍らにはクロエがいた。

 試験の終わった夜、相談したいことがあるといったのは自身のコミュ症を治したいというものだった。学園生活に必要な準備も特にないし、家族もいないので何もすることが無いとリズにくっついてきたというわけだ。


「うん、わたしが暮らしてた頃とはかなり様変わりしちゃったけどね……」


 リズが知っている村はもう無い。八年前のあの日魔物に襲われ、家々は焼け大事な人たちもいなくなってしまった。

 廃墟のままでは魔物や盗賊が住み着いてしまうため家々は取り壊され、今は寂しい荒地へとなっていた。


 オホノシ村の風景は今やリズの胸の中にしかないのだ。


「こ、ここの人たちに、だ、大事に……されていたんですね」

「そう……なのかな?そうなら嬉しいけど……」

「わ、わたしは死霊魔術師(ネクロマンサー)だから……いろいろわかる……の……わかります? ……わ、わかるんだ」


 クロエは言葉尻をどうしようかとクビをかしげている。


「いろいろって?」

「リ、リズのまわりに……集まってきてる」

「集まってるって……何が?」


 クロエの視線はリズの背後に注がれていた。その様子に、死霊魔術師には一体何が見えているのかと、リズの首筋が寒くなる。


「じょ、冗談はやめてよ。その手の話は得意じゃないんだから……」

「ひ、ひかりが集まってる、のです。……こう、ぼやっとしてて……あたたかい感じのものが……」

「れ、霊か何かなの?」


 クロエはまたもやクビをかしげる。


「んんん、霊というか……正確には残留思念ですね。この村で暮らしてた人たちの生前のあなたへの想いがまだこの地に残ってるようです」


 先ほどとは打って変わり、流暢(りゅうちょう)に話す。どうやら得意分野での話しになるとスラスラ言葉が出てくるようだ。

 リズの表情も柔らかいものへと変わる。


「そっか……クロエにはそういう世界が視えてるんだね、ちょっとうらやましいかも」

「わ、わたしは……こういうことが視えなくなりたいんです!」


 普段ぼそぼそとしかしゃべらないクロエがはじめて大きな声を上げる。


「ごめんね、気に障ったなら謝る」

「あっい、いえ……わたしこそ……」

「ただね、わたしも怖かったのが逆に嬉しい気持ちになったし、そういうことが視えてたら救える人もいるだろうって思っただけだから」

「救える……わたしが?」


 リズの言葉にドラゴンが水鉄砲食らったような顔になる。


「……そうだよ、お墓参りに来たのだって家族のこと忘れないためとか、自分の気持ちの整理のために来てるんだもの。上手く言えないけどクロエだったらもっと上手に誰かの気持ちをやわらげることが出来るんじゃないかな?」

「わたし、この力……忌むべきものだってずっと思ってた。……これがだれかのためになるなんて考えたことも無かった……」


 クロエは自分の左腕を握りしめ、自身の過去を思い出していた。

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