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英雄譚はいつも紅に染まる  作者: パン定食
カシシュミナ学園、入試試験
26/92

アルセリアの決意

「納得がいきませんわ!」


 強い口調で抗議するのは双子の姉、エメルダだ。

 先ほど第二次試験の合格者が発表されたばかり、それに挙げられた名前の中にエメルダとアメルダ双子の名前は挙がっていたのだが、アルセリアの名前がなかったのだ。


「わたしたちは同じチームでしたのよ。しかも勝ちました! それなの何故アルセリア様の名前がないのでございますか!」


 食って掛かるエメルダに対し、エルザは冷静に受け答えをする。


「我々はチームの勝敗を見ていたわけではありません。個人の実力とチームプレイが出来るかどうか、それらを判断した上で各個人の合否を決めさせていただきました。もちろん戦いに参加せず傍観を決めていたアルセリアは実力もチームプレイもできていなかったため不合格です」

「しかし……」

「もうよいお前たち」


 卓上にいるエルザは冷静に選考基準を説明するが、抗議に加わったアメルダとエメルダの興奮は冷めることはなかった。

 その双子を制したのは、渦中の人のアルセリアだ。


「確かにわたしは弱いし、お前たち双子の力でここまで来れたのだ。マスタークラスでなくともこの学園に入園できるだけでもうけものだ。わたしが力をつけるためにはスタンダードクラスからで良いから、お前たちはわたしに気兼ねせずマスタークラスを目指せ」

「「嫌でございます」」


 双子ならではのシンパシーなのか間髪いれず同時に主人の命令に拒否の言葉を発する。この様子にアルセリアは目を細め、珍しくたじろぐ。


「わたしたちはアルセリア様の剣であり盾ですわ」

「わたしたちは常にアルセリア様のおそばにおります……エルザ様」

「「我等姉妹、三次試験を棄権いたします」」


 姉が「いいですわよね」と付け加えエルザを見つめると、「ふぅ」とあきらめた様にため息をつく。


「……いいでしょう。あなた方二人は大変優秀な逸材なのですが……スタンダードからマスターに昇格する機会もあります。アルセリアが強くなったのなら三人でそちらを目指すのもよろしいでしょう」

「エルザ様ありがとうございます」

「すまないな、お前たち……必ずわたしも強くなる」


 ぱっと表情が明るくなる双子と手を取り合うアルセリアの表情には決意のようなものが見て取れた。


「それでは暗くなってきましたし、全員園内にご案内いたしますので休息をとってください。三次試験に臨む方にはおって連絡いたします」


 一次試験を突破し、入園が決まった者は本日この学園で泊まりとなるため、部屋や飲食などが提供されることとなっているのだ。

 二次試験を突破した者たちはまとめてシンシアに案内されることとなった。そのシンシアにヨハンナが質問をする。


「三次試験は明日やるの?」

「いいえ、今日のうちに行うわ。この後各二名ずつの部屋に案内するけど、二時間の間に食事やお風呂なんかを済ませておいてね」

「お風呂はいいわね、汗かいちゃったもの。さっぱりしたいわね」

「そうね~、わたしも転んで泥だらけになっちゃたもの」


 お風呂という言葉に反応したのはベルトーシカとユノだ。するとシンシアはいたずらっぽくにっこり微笑みながら二人の顔を覗き込む。


「そうそう、いいことを教えるわ。ウチの学園ね、温泉があるのよ」

「「「温泉!」」」


 案内されている一同は声をそろえ、黄色い声をあげるのだった。

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