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英雄譚はいつも紅に染まる  作者: パン定食
カシシュミナ学園、入試試験
23/92

オウルの目標

「あれがリズの戦い方かぁ、マネできないな……」


 コリンとの戦いの最中、リズの様子を伺っていたモモはつぶやく。


「戦いの最中に余所見とは失礼ですぞ」


 コリンの武器である棍棒がモモの顔に迫るが、それを華麗なステップで回転するように避け、そのままの勢いで巨剣をコリンに叩きつける。かなりの衝撃を与えられているはずだが、コリンは飛ばされることなく踏ん張りこらえた。

 その様子をみて面白くない顔をする。


「うーん、やっぱりあんまりダメージ与えられないね、その鎧硬すぎでしょ」

「ふふ、重戦士(ヘビーアーマー)自慢の一品ですからの、舐めてもらっては困る。しかしそんな剣を持っているのに速さもパワーもある、なかなかやっかいな相手ですな」


 そう言うとぼーと立ってるだけで戦いに加わらないもう一人の仲間に声をかける。


「クロエ殿、そろそろあなたも戦いに参加したらいかがですかな?」


 その言葉が耳に届いたのか、空を仰いでいたクロエがゆっくりと顔を向けた。




 もう一方ではリズとオウルの攻防が再開されていた。

 先ほどはリズのカウンターが優勢でオウルの攻撃が当たることはほとんどなかったが、通常攻撃が効果がないことを学んだオウルはトリッキーな動きを織り交ぜ攻撃の展開を読めないよう攻撃している。


黒霧(ブラックミスト)


 オウルが口から黒い霧を吐く、その霧はリズの視界を奪った。


「どうだ、何も見えないだろ!」

「くっ……それに、なんか臭い!」


 視界を塞がれうずくまったリズだったが、カメムシのような匂いを数段濃くしたような臭さを顔に吹きかけられ悶絶する。


「視界だけじゃない、同時に嗅覚も奪いこちらの位置を悟らせないようにしてある」

「犬じゃないんだから匂いで位置わかるとか無理だし! 臭いのだけはやめてー!」

「……半分ただの嫌がらせで入れただけなのに思った以上に効果があるな」

「やっぱりただの嫌がらせじゃんか! くさいくさい!」


 まるでコントのようなやり取りの最中でもオウルの攻撃の手は止まず、音だけを頼りに盾を構えるがとても防ぎきれるものではない。次第に目が開くようになってある程度防げるようになったが、それでも一進一退の攻防は変わらず、頭上の数値もお互い百前後で後がない。

 決着の時を悟ったのか、リズは構えていた盾を捨て去った。


「何のつもりだ? 盾がなければ攻撃は防げないぞ」

「さあね、いいからかかってきなよ」


<盾を捨てて身軽にしたってことは防ぐのではなく避けてカウンターを繰り出すつもりか?>


 そう考えたオウルは意を決し攻撃を仕掛けた。駆け出し、左手にもっていたナイフを投げつける。


<これで避けたところを爪で仕留める!>


 投げつけたナイフが近づくがリズは避けない。軽く手でなぎ払い防ぐと、オウルを迎え撃つ。


 予想外の行動をとられたがそれでもオウルの進撃は止まらない。

 リズめがけ右手の爪を繰り出す。つかまれることを警戒し、剣でこの爪を防ぎ、その剣も捨て去る。


 そしてカウンターで渾身の拳を叩き込んだ。

 が、オウルの頭上の数値は残っており、まだ脱落はしていない。


 殴られ少し体制を崩したが、そこは暗殺者(アサシン)、様々な体勢からでも攻撃が仕掛けられる。

 爪で腹から胸にかけて引き裂き、リズにダメージを与えると頭上の数値は0となった。


 はぁはぁと荒い息遣いが聞こえる。


「あー負けたー!」

「……どっちが負けててもおかしくなかった。かなりの僅差だったよ」


 リズが叫ぶとオウルは謙虚な態度を見せる。その頭上の数値は三しか残っていなかった。


「僅差だけど、これが実力差だよ」

「なぁリズ、オレ目標ができたよ」

「……なぁに?」


 大の字に寝そべっていたリズは顔だけ上げてオウルを見つめる。


「もう一度ジンに会いたい、そして自分の気持ちを確かめたいんだ。もう人も殺さない、誰かを助けるためにこの力を使う。それにジンがこの学園に行けって言った意味も知りたい。示したかった『違う道?』ってのがなんなのか、この学園で学んでみたいんだ。


 憑き物が落ちたような表情で目標を語るオウルの言葉を聞いたリズの顔には満面の笑みが浮かんでいた。

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