ガルシア、ルルティア、パイ 対 ミコト
「えー、ここでお知らせがあります」
前回の戦いの後、救護班が出動するなどあわただしい動きがあったため、次の試合までしばらく時間が空いていたが、エルザからのアナウンスがあった。
「次の十三回戦ですが、先ほどの戦いを見た後に片方のチームから棄権するとの申し出がありました。そのため協議した結果、学園の教員を代役に立てることになりました」
そう言うとエルザと入れ替わりで一人の女性が朝礼台に上がる。
長いポニーテールの黒髪に、ジャージと呼ばれるこの世界では割とめずらしい服を着ている。下半身には紺のピチピチとした短パンのようなものを履いており、何となく体を動かすことが得意そうな人に見える。
「先ほど紹介に上がりました本校の教員のミコト・テンリーです。えー、対戦する受験者に一言。三対一での試合になりますが、わたしはこの学園の教員でもあり《英雄》の称号も持っています。相手が一人だと高をくくらないで全力で挑みに来てください」
《英雄》との単語が出た途端「おおお」とざわめきの声が上がり、それと同時に対戦相手であるガルシア・ルルティア・パイには緊張が走る。それだけ《英雄》とは絶対的な力や憧れなどを示す称号なのである。
ミコトと対戦者である三人が指輪をつけグラウンドの中央に対峙すると試合開始の合図が伝えられた。ガルシア、ルルティアが構えをとる中、胸にてを当てたパイが口を開く。
「まさかこんなに早く会えるとは思ってなかったアル」
「ん、わたしにか?どこかで会ったことあったか?」
ミコトは眉をしかめ首をかしげる。
「はい、ミコトさんはおぼえてないでしょうけど、わたしはあなたに故郷を救われたアル」
「なるほどね」と言うミコトは心当たりがあるのか納得した様子だ。
「でも今は試験中だ、話は後だ今は戦いに集中しろ!」
激を飛ばすミコトにどこか嬉しそうに「はい」と返す。
「なんだかわからないけど集中ね、相手はあの英雄さんだ。パイが接近して足止め、わたしがそこを狙って攻撃を仕掛ける。ルルが後方支援でいい?」
てきぱきと支持を出すガルシアに二人はうなずいて答える。
「いくらでも話し合っていーよ。そだ、ハンデにわたしは攻撃に指しか使わないからね」
「指だけって、いくらなんでもそれは馬鹿にしすぎじゃ……」
少しムッとし、そうルルティアが呟いたその瞬間風が走った。
風は一瞬のうちに一番後方にいたルルティアまでの距離を詰め押し倒す。目を閉じ倒れこむルルティアが再び目を開けた時、眼前にはミコトの指があった。二本の指で両目を突く寸前で止めていたのだ。
「これでも馬鹿にしてる?」
にっこり微笑むと手を差し出しルルティアを起こす。
「言ったよね『高をくくるな』って……さ、仕切りなおそう」
三人の顔が青ざめる。
「こりゃあちょっと、気合い入れなおさないといけないかな」
「この人と手合わせできるなんてありがたいアル」
英雄の動きを目で捉えることも出来ず、後方のルルティアまで素通りされたことからも実力の差は明らか。それなのにやる気を失わないどころか瞳に炎を宿す二人を見て、自信を失いかけていたルルティアも自分の頬を叩き気合を入れた。
「おおおおお!」
雄たけびを上げはじめに動いたのはパイだ。
次から次へと流れるようなコンビネーションを披露するがかすりもしない。二人のチームメイトも手を出そうとするが、あまりの猛攻に隙がない。
「君はもうちょっとここを鍛えた方が良いな」
そう言うとみぞおちにデコピンをする。たかがデコピンだが重い鈍器で殴られたような衝撃を与えられ呼吸困難に陥る。
「肺にある酸素を全部出せ。君は呼吸に意識を向けるべきだ」
嘔吐いているパイに代わりに今度はガルシアとルルティアが攻め立てる。
ガルシアが鞭で攻め、距離を詰めようとするミコトをルルティアが弓で威嚇し近づけさせない。
「いいコンビネーションだ、けど……」
そう言うと地面を蹴り上げ砂埃を舞い上げる。
予想外の攻撃にガルシアの目が塞がれ、その隙に狙いを変えルルティアに詰め寄り、おでこにデコピン。続いてまだ目の開けないガルシアにもゆっくり近づき、同じようにデコピン。
「動きが単調だな、だから不意なことに対処できないんだ。相手に動きを読ませるな」
「いたた、うー頭が吹っ飛んだかと思った……」
「こうなったら、奥の手出すしかないね」
痛みでうずくまったたルルティアが起き上がると、ようやく目が開くようになったガルシアが小瓶を取り出す。その瓶の蓋を開けると中から煙が出て、広がってゆくとその中から獣の姿が現れる。
「あいつは……」
試合を見ていたリズの鼓動が高鳴る。
黒と白の模様のウサギに良く似た魔獣。
かつてリズの妹、アルマを食い殺した魔獣と同じ種だった。




