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英雄譚はいつも紅に染まる  作者: パン定食
カシシュミナ学園、入試試験
13/92

食堂での闘い

 リズとモモは食堂の中にいた。この受験当日だけ特別に休憩の間、受験者に食事が無料で提供されるのだ。


 食堂の中には六人がけのテーブルが三十二台きれいに整列されており、壁際にはひとりひとりが座り食事できる長机が用意されていて、最大で十二人が利用できるスペースが確保されていた。

 ゆったりとした広さが確保されているが、他の受験者は次の試験に向けてのメンバー集めに勤しんでいるため食堂の中にはまばらにしか人がいない。


 リズが軽めの食事をトレイにのせテーブル席について食事には手をつけずモモをまっている。三人目のメンバー集めをどうしようかといろいろと思考をめぐらせていると、そこにモモがやってきたので、ふと目線を上げた瞬間ちょうど飲んでいた水を吹き出した。

 モモの両手には二つのトレイ、その上に皿が山のように器用に積まれているのだ。


「な、なにその量!?」


 ゆうに二十人前はあろうかという量に驚き尋ねた。


「ああ、このあとも試験が続くからね、ちょっと少なめに持ってきちゃった」

「えっ……少なめ……」


 パーティーでも開けそうな量の料理を「少なめ」と表現するモモに言葉が詰まり何もいえなくなってしまった。


「リズはそれだけでいいの?」

「う、うん……」


 ふーんとモモは首をかしげ、リズの前の席に座ると「いただきまーす」と言うなり早速食べ始める。


 おいしー、と満面の笑みを浮かべながら次々とほおばる姿は決して下品ではなく、むしろ上品に料理を口へと運ぶ。それなのに料理のなくなるスピードは、リズがサンドウィッチを一つほおばるうちに三皿はなくなっているほどだ。


ガシャン


 いきなりけもの耳の褐色肌の少女、ウルがモモの隣の席にトレイを置く。その上にはモモに負けず劣らずの料理の量が乗っていた。

 ウルとモモの目が合う。その瞬間お互いの目から火花が飛び散った――ように見えた。

 ウルが席に着くとお互い何も言わず、目もそらさないまますごい勢いで料理をほおばる。モモと違って料理を素手で掴み取る姿は品がない。


「なんなのよ、これ……」


 突如始まったモモとウルのフードバトルに目を取られているといつの間にかリズの隣に背の低いジト目の少女が座っていた。

 そのさらに隣に赤い髪でラフな格好の少女が座っている、エマとアナだ。どうやらこの三人はグループを組んだらしく、休憩を取りに食堂に来たのだろう。


「ごめんなさいね、なんかこの馬鹿に火が点いちゃったみたいで」


 エマがリズにそう誤る。


「いやぁ、モモもなんだか乗り気になっちゃってるし……あっわたしはリズ、こっちがモモね」

「わたしはエマ、こっちがアナでそこの大食らいがウル、よろしくね」


 そう言いながら自己紹介されると赤髪の少女も「どうもー」とリズに手を振る。

 二人の大食らいに呆気に取られながら軽めの食事を取っていると更なる来客がやってくる。


「なんだか騒がしいと思ったら泥棒さんじゃない」


 そう聞こえてきた声の先に目を向けるとエメラルドの髪の少女と黒と白の鎧が特徴的な双子の姉妹、アルセリア、エメルダ、アメルダがいた。


「先ほどはどうも、わたしたちが差し上げた魔石は役に立ったかしら?」

「おかげさまでね、助かっちゃったよ。ありがとねー」


 アナを見下すよう直視しアルセリアがわざといやみっぽく言うと、軽い感じでアナが受け流す。


「この盗人が悪びれもせずに何を言うか!」


 大声を張り上げ、食って掛かったのはアメルダだったが、アルセリアがそれを制す。


「いいんですのよ、あれは差し上げたものですから……ただ、そんな手段で勝ち残ったとしても本人のためにはなりませんし、もし我々と戦うようなことがあれば手加減などしてもらえると努々思わぬよう気をつけてくださいましね」

「はいはい、気をつけまーす」

「そうですか、それならよろしいんですよ……それではごきげんよう」


 にっこりと別れの言葉を告げるとアルセリア一行は去っていった。あくまで相手にしないという態度をとるアナに双子の姉妹は不快感を表情に出し睨みつけるが、アルセリアを立てているためか何も言わなかった。


「全く……何したのよ、あんた」

「えー、ちょっと魔石をもらっただけだよー」


 エマがジト目をさらに細めて聞くととアナはにこにこと笑ってごまかした。


「んーーーーー!!」


 先ほどの騒動の中でも食べるのを止めなかったウルが口に物を入れたまま言葉にならない叫びを上げ、ガッツポーズをとりながら立ち上がった。どうやら持ってきた料理をモモより早く食べきって勝ち名乗りを上げたらい。


 その様子を冷め切った目で見ていたエマは、アナとウルを交互に見た後に大きなため息をつくのだった。

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