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英雄譚はいつも紅に染まる  作者: パン定食
カシシュミナ学園、入試試験
10/92

アルセリア御一行の災難

 森の出口付近を三人の歩く姿があった。


「ずいぶん簡単な試験だったのう」

「はい、アルセリア様」


 アルセリアと呼ばれた少女はエメラルドグリーンの美しいポニーテールを揺らしながら二人の前を歩く、その格好は上に白いワイシャツに濃い茶色のジレ、ゆったりとした黄色いギンガムチェックのパンツを履いており、ところどころに施された装飾から身分の高さが伺えた。

 その手には三つの魔石が握られている。


「エメルダ、アメルダ。後の二つの試験もよろしく頼む」

「はい、お任せください」


 そう言って(かしこ)まる後ろの二人とアルセリアとは明らかに主人と従者の関係であろう。エメルダ、アメルダと呼ばれた二人は同じ顔をしていることから双子だということがわかる。

 エメルダが銀髪でアメルダが金髪、それぞれが左右対称の髪型をしており、エメルダが白い鎧、アメルダが黒い鎧を身にまとっているため、顔がおなじでも見た目での区別はたやすい。


 三人が森から抜けようとしたその時、赤い髪の少女が倒れていることに気がついた。アルセリアは手に持っていた魔石を置き、あわてて近づき声をかけた。


「おい、おぬし大丈夫か?」

「み、みず……」


 顔を上げ赤髪の少女が絞り上げるような声で訴える。


「おい、エメルダ水を」


 すぐさま腰につけていたポーチから水筒を取り出し手渡す。アルセリアはその水筒のふたを開け少女の口へと運んだ。


「ふぅ」


 水を飲み、一息ついた少女は助かったと礼をいい立ち上がる。

 パーカーのついた袖のない短いジャケットにホットパンツというラフな格好。赤い髪の頭につけている方リボンが特徴的だ。


「あたしの名前はアナ。アナ・マスカラスだ。いやーほんとに助かっちゃったよ。い・ろ・い・ろ・ありがとね」


 と赤髪の少女が腰に手を当てウインクすると突如周りから煙が上がる。


「な、なんだ?」


 アルセリア一行は予期せぬ事態に身構えたが、周りが煙に囲まれ何も見えなくなった。


「アルセリア様、ご無事ですか?」

「ああ、大丈夫だ、何が起こっているのだ?」


 お互いの姿が見えないので声でお互いの無事を確認しているうちに煙が晴れていった。


「一体なんだったのだ……」


 エメルダがそう呟きあたりを見回すとアルセリアとアメルダの姿が確認できたがアナの姿はない。

 アメルダが何かに気づき叫ぶように言った。


「しまった!アルセリア様、魔石は?」


 アルセリアも事態に気がついたのか魔石を置いた場所を確認する。そこには魔石が二つ。三つあったはずの魔石の一つが消えていたのだ。


「さっきの赤髪か……まさか受験者から直接奪う者がいるとは」

「学園側に報告しましょう。こんなやり方が許されるはずありません」


 双子が鼻息荒くアルセリアに訴えると意外な答えが返ってきた。


「……いや、無理だろう。ルールでは〈魔石を持ち帰る〉というもので〈ゴーレムを倒せ〉という内容ではないからの。こういうことも見越した上でのルールなのだろうな」

「しかし……」

「それにこのアルセリア・オドノールが盗賊まがいの輩に出し抜かれたなど我が家の恥だ。あの魔石はくれてやったのだ。……そうだろ二人とも?」

「はっ」


 納得の行かない双子をたしなめる主人の言うことに素直に従うその表情には畏怖も反発の感情も見えない。

 それどころかアルセリアに対しての絶対的な信頼を置いている眼をしていることからも、この三人が強い主従関係で結ばれているのが伺えた。


「なに、また一つとってくるだけだ、我等ならたやすいことだろう」


 主人がそう言うと双子は力強い表情で「はい」と答え、三人はまた森の中へと引き返していくのだった。

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