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レティシアが疲労感からすぐに立ち上がれずにる横で、ユリウスの魔法陣から伸びた光があと少しというところまでゆっくりと消えている。
耳の奥にはビシビシ ピリピリと、不快な音が響いてる。結界がもうほとんど消えかかっているようだった。
(このままここに留まるわけには行かないわ。かと言って何が起こっているか分からない外に飛び出すわけにもいかない…。ユリウスと話し合いましょう。)
天に光が完全に昇ったのを見て、安堵したレティシアは重い体を精一杯持ち上げユリウスの方に向かおうとした。
その瞬間、結界が限界を知らせるかのように、女神像の背にある窓が、バリンッと不自然に大きな音を立てて割れた。
「ユリウスっ!」
先程まで体が重かった事など意識の隅に追いやり、無理矢理足を動かす。
先程のレティシアと同じように、ユリウスも体が追いつかないのか、思考と意識で反応はしているけれど動けないようだった。
思考で結論を出すよりも先に、レティシアはユリウスに飛びかかり、覆い被さった。
火事場の馬鹿力というのだろうか、普段の自分から想像するよりも強い力で飛びかかったらしく思っていたよりも勢いがついてしまった。
それが幸いして、2人ともぎりぎりのところでガラスの破片を被らずに済んだのだが。
「ユリウスっ!ごめんなさい…!大丈夫…?」
両膝から手までををユリウスの顔の横につき、胸より下はがぴったりとくっつき、押し倒すような形で覆い被さっていた。
レティシアの長い髪がユリウスの頬に落ち、同じ色の2人の髪はどちらのものかわからなくなるくらいに溶け合っていた。
ユリウスは驚いたように少し目を見開き、レティシアの目を見つめた。
そして頭の中の整理が終わったのか、ふぅ と気を取り直したように小さな息をついた。
「ありがとう、レティ。レティこそ大丈夫?」
レティシアの体を支えつつ、ゆっくりと体を起こしながら、レティシアの体に傷がないか慎重に観察した。
「大丈夫よ。どこも怪我をしていないわ。」
体を起こしたユリウスとレティシアは、二人で向かい合うような形で座っていた。
(ユリウスの身体の周りにも光の粒が集まっているわ…。)
自分と同じように、体の周りに光を纏っているユリウスを不思議そうに眺めた。
「とりあえず、儀式は終えることができたし、この後どうするか考えようか。」
「そうね。理由が何にせよ結果が壊されたのは事実のようだし…。」
「それなんだけど、完全には壊されていないのではないかな?まだうっすらとだけど結界の気配を感じるんだ。」
そう言われてレティシアは感覚を結界と外の世界に向けた。
儀式とこの非常事態で結界の外まで意識を張り巡らせてはいなかったのだが、ユリウスに言われて気づく。
「…そう見たいね。何重かになっていた結界の一番厚い部分が壊れたけれど、まだ薄い部分は何層か残ってる感じがするわ。外の世界は遠い気がするの。」
「レティがそう感じるなら、そうなんだろうね。結界が壊されたこの状態を考えると、外で何かが起こってると考えるのが妥当だね。自然災害か人為的なものか…。ただ、今の僕たちはこの通り力が入らないし、魔法も上手に使えない可能性が高い。だとしたら外に出ても護衛の対象を増やすだけで足手纏いだろうね。」
「…そうよね。この神殿が狙われたという可能性も十分にあると思うのだけど、その場合を考慮して、この場に留まるべきか外に出るべきか、ユリウスはどう思う?」
2人はいろいろな可能性を分析し、意見を出しながら考えている。
10歳といえど、王位に着く可能性が高い、直系の王族としての教育を受けてきているので、並の10歳では考えられない冷静さと思慮深さで議論をする。
「ここが狙われているなら、神殿の外で待ち伏せされている可能性もある。ただ、結界がここまで壊されていることを考えると侵入される事も考慮しなければいけないだろうけど…、神殿内に侵入するよりは外で待ち伏せしたほうが労力は少ないだろうね。そうなると時間がかかって城を制圧するくらいの規模で動かないと悠長に外では待っていられないだろうし…。」
「どちらにせよ、外が危ないと言うことね。ここにいても安全ではないのだろうけど…。神殿の目の前で待っているジルが心配だわ。」
「そうだね。…ここが狙われた可能性を一番に考えるなら、一度ジルと合流して現状把握したいところだね。流石に侵入者も僕達が儀式を始めてから今までのこの時間で城の奥まで入ってくるのは容易ではないだろうし。ともかく一度外に出れるか試してみようか。」
どちらにしても外で何かが起こったことには変わりがないのと、子供の自分達2人だけで現状をどうにかするのは難しいので、情報を集めることにした。
ユリウスは立ち上がり、レティシアに手を差し伸ばした。
「レティ、立てそう?」
「えぇ、もう大丈夫よ。体もだいぶ動くようになったわ。」
立ち上がろうと、差し出された手を握った時
ユリウスの体に緊張が走ったのを感じた。
(え?)
魔力の感知はレティシアの方が少し適性があるのか、深くまで事象を捉えたり、早く反応することが多かった。
ユリウスはそれに比べると、魔力ではなく、訓練の賜物か適性なのか、人の気配に敏感だった。
異変を感じ取り、ユリウスの見つめる先を見ると結界の歪みが見えた。
そしてその歪みからゆっくりと、黒いローブを深く被った男が出てきた。
ユリウスから今まで感じたことがないような緊張を、繋いだままの手が教えてくれた。
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