偽り王子、本物の王子様と出会う
初心者ですが、頑張って書きます!よろしくお願いします。ハッピーエンドを目指しています!
「ユリウス様、どうかわたくしと将来結婚してくださいませ!」
波打つような美しい桃色がかった金色の髪と少し潤んだ上目づかいの海色の瞳、いつもなら陶器のように白い肌は今は少し頬が赤く染まっている。
質の良いピンクのドレスはフリルとリボンをあしらっており、少女らしい魅力をとても引き立てている。
普通ならはしたないと言われてもおかしくない彼女の振舞だが、幼さや彼女の身分も相成って咎める者はいない。
普通の同年代の男の子なら、一も二もなく頷いてしまいそうな可憐さだった。
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ここはガラナテス王国。言わずと知れた大国で、魔法と剣技に優れた見目麗しい王子がいると評判だ。その王子は美しいプラチナブランドの髪にグリーンの瞳、優しげな表情に落ち着いた雰囲気。そして第一王位継承権をもつ。そんな彼が女性からモテないはずはなかった。しかし、何故だか彼は婚約者がいまだに決まっていない。貴族や王族は生まれた頃から婚約者がいてもおかしくないなかで、15歳の王子はまだ婚約者も恋人もいない。なので、多くの令嬢や姫が彼の婚約者の座を争っているのが現状である。
「ユリウス殿下!!」
「どうしました?ジル」
ジルと呼ばれる青年は黒い髪に切れ長の藍色の瞳、どこか冷たい印象を受けるが、真面目で家柄もよく、とても優秀だ。彼は剣技では国内でも五本の指に入ると言われ、文官としても、宰相の補佐をしても他の宰相補佐と比べても遜色はないのではと言われている。なので17歳という若さで王子の護衛かつ側近として仕えている。いつもは落ち着いている彼だが、今日はどこか急いでいるようだ。
それもそうだろう、明日から隣国の王族や有力貴族が3日後に行われる同盟国会議のために続々と到着する予定なのだから。
2年に一度行われる会議の開催場所は、同盟国の中を順番に巡っており、国力をアピールする大事な機会なので、自国の番になると国を挙げて準備をするのだ。
「ユリウス殿下、申し訳ありません。こちらの資料の確認をお願いします。」
「あぁ。出席者の人数と晩餐会の料理のメニューだな。」
そういって目を通すと、同盟国の王族や貴族と国内の有力貴族などが参加するので、かなりの人数になっている。しかし、席の順番や料理の内容に間違いがあっては国の面子に関わる。すでに細心の注意を払って組まれているが、王子として最終確認が必要なのだ。
「とてもよくできている。ただ、デザートの種類をもう少し増やしてくれ。今回は若い令嬢が多く招待されているので、その方が喜ばれると思う。せっかくなのでこの国ならではのデザートを増やすのはどうかな。気候のことも考えて、さっぱりとした柑橘系のものがあってもいいのではないかな。色合いも華やかになるし。」
「わかりました。ではそのように料理長に伝えます。」
「ありがとう。ジル。あと、忙しいところ悪いんだけど、食後に剣の稽古に付き合ってくれないか??最近準備に追われていてなかなか時間が取れなくて、腕が鈍りそうだ。」
「かしこまりました。では夕食の後に訓練場でよろしいですか??」
「あぁ。よろしく頼む。」
ユリウスは魔法と剣技に優れていると有名だが、それは才能だけではなく、彼自身が努力家だからだ。どんなに忙しくても、毎日欠かさず訓練している。ユリウスは広域の攻撃魔法を得意としてるということになっているが、実際には防御魔法や付加魔法など正確に細かく魔力を操作する方が得意だ。そして、細身なので筋力で押し負けてしまわないように、剣技を磨き、力に頼らず技術で勝つことを目的とした訓練をしている。
夕食後、いつものようにジルとの稽古を終えた後、ユリウスが自室に戻ると待機していた侍女が一礼した。
「おかえりなさいませ。ユリウス様。本日もお疲れ様でございました。」
「ありがとう。ローナ。稽古をしてきたばかりで汗をかいているから先に入浴を済ませたいんだけどいいかな?」
「すでに用意は出来ております。」
王族なので、侍女がお風呂などの世話をするのは普通のことだ。そして入浴後、いつものように寝巻きに着替え、明日の日程の確認を一通り済ませたあと、ユリウスは眠りについた。
「おやすみなさいませ。ユリウス様。」
ローナは一礼して部屋を後にした。
*
翌日は朝から大忙しだった。今日から到着する同盟国の王族や貴族達の出迎えとして、第一王子であるユリウスは目の回るような忙しさの中、空いた時間に講義を受け、剣や魔法の稽古もこなしていた。
午後一番に到着したのは、エストリア王国の王とその第二王女であるリリー王女である。
国王が直々に毎回出迎えるわけにもいかないが、かと言って軽んじてはいけない相手に対しては、必然的に、実質一人しかいない公務が行える直系の王族であるユリウスが対応することになるのだ。
ユリウスには弟が一人いるがまだ幼く、公務ができるようになるにはまだまだ時間がかかりそうだった。
「お久しぶりです。エストリア王。ユリウスでございます。父に代わり皆様のお出迎えをしております。」
そう言ってユリウスは胸に手を当て礼をした。
「久しいな。ユリウスよ。出迎えご苦労。これは我が娘のリリーだ。其方と一つ違いの14だ。仲良くしてやってくれ。ほら、リリー。挨拶を。」
エストリア王とはユリウスが幼いころから交流があったが、数年前からユリウスが父王について公務に携わるようになってからより顔を合わす機会が増え、最近では直接話をするようにもなっていた。
「はじめまして、ユリウス様。リリーと申します。よろしくお願いいたします。」
リリーはゆっくりと丁寧に淑女の礼をした。
「こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。」
そう言ってユリウスはリリーの右手を取ると手の甲に軽くキスを落とした。
リリーの頬が赤く染まったが、ユリウスの意識は彼女の反応にはなかった。
「では、長旅でお疲れでしょう。先にお部屋にご案内させていただきます。」
「うむ。よろしく頼む。」
ユリウスは部屋への案内を済ますと、まだ残っている他国の王族の出迎えの用意をするため、すぐにその場を離れてしまった。リリーのうっとりとした表情には気づかずに。
その後、他国の有力貴族や王族を出迎え、一通りの案内を済まし、昼間出来なかったの分の講義と稽古をするという激務をこなした後、ユリウスは自室に戻るために王宮内の中庭に面した廊下をあるいていた。
「あの!ユリウス様!」
「どうされましたか?リリー姫。遅くにお一人で出歩くのは危ないですよ?道に迷われたようでしたら、僕がお部屋までお送りしますよ。」
急にリリーに呼び止められたとはいえ、ユリウスの態度は一貫して紳士的だ。そして柔らかな笑みを浮かべて話をする。
「そうです。迷いましたの…!是非お願いいたしますわ。」
リリーはパッと花が咲いたような笑顔でお願いをした。
「では姫君、こちらへどうぞ。」
そう言ってユリウスがリリーをエスコートして歩いていると、もう少しでリリーの為に用意された部屋につくという所で、急にリリーが足を止めた。そしてユリウスが振り返ると、リリーはうつむいていた。
「リリー姫?どうかされましたか??」
しばらくうつむいていたリリーがパッと顔をあげた。
「ユリウス様、あの、どうかわたくしと将来結婚してくださいませ!」
波打つような美しい桃色がかった金色の髪と少し潤んだ上目づかいの海色の瞳、いつもなら陶器のように白い肌は今は少し頬が赤く染まっている。
質の良いピンクのドレスはフリルとリボンをあしらっており、少女らしい魅力をとても引き立てている。
その完璧な愛らしい容姿に加えて、彼女は隣国の姫だ。彼女の国は資源も豊かで安定している。
そして第二王女であるという面から政略結婚としても申し分なく、エストリア王国との同盟をさらに強固なものにできるだろう。
普通の同年代の男の子なら、一も二もなく頷いているだろう。
そう、普通の 男の子なら。
(そんなこと言われても困ります。だって私、本当は女の子ですもの…!)
ユリウスには秘密があった。
それは、ユリウスが正真正銘、女の子であるという事だ。
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