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白黒HEROTIME!!  作者: 島崎 悠
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入団勧誘式

桜舞い散る季節に俺は大きく溜め息を吐いた。



右手には青い薄っぺらい卒業証書が入ったファイルがいる。



そう、この春。俺は晴れてこの学校を卒業した。



学校の名は―――国立依頼屋育成学校。



うーん、何度見ても単純な名前だ。設立者のネーミングセンスを疑いたくなる。



っと、そんな事はどうでもいい。



まず、説明しなければならないことがある。



依頼屋とは何か、だ。



依頼屋は、ベビーシッターから不倫相手探し、お偉い様の護衛までする言わば何でも屋だ。



だが、時としてそれは変化する。



理由は1つ、何でも屋が本来の存在理由ではないからだ。



       



本来の存在理由。それは――――人間兵器の撲滅だ。



ここでは、一般的にノームと呼ばれる存在で、非政府と呼ばれる機関から生産された人成らざる物を指している。



最近はあまり出没しないせいか、俺らもぬくぬくと温室で仕事が出来ると聞いたが、試験内容は甘くなったりしないらしい。



まぁ、卒業した俺には試験内容の難易度なんて無関係なんだけどな。



俺は卒業証書を左手に持っていた紙袋の中に無造作に突っ込むと余った右手をポケットの中に突っ込んで、その場を後にした。


                                                                   

暫く、校内をうろちょろしながら歩いてると、色んな人間が見れた。



学校の苦しい授業内容の呪縛から解放された、と喜び泣き叫ぶ同期生や、親と自撮りして記念撮影する者。



同期生と最後の校内徘徊する者など様々だ。



ちなみに、俺にそんな事をする相手はいない。



別に欲しいとも思わない。



それなのに、俺は、何故か胸が苦しくなっていくのを感じていた。



人間って本当に変だよな。


ずっと歩き回るのにも疲労を感じてきた俺は近くのベンチに腰を下ろした。



目の前には大きな桜の木が桃色の吹雪を作っていた。



こんな俺でも、なかなか感傷に浸ってしまう程綺麗に散っている。



そうやって、独りで居ると、大抵余計な奴、代表のアイツがやって来る。



俺と同じように黒いスーツに身を包み、少し髪型を整えたソイツは案の定来た。



「よお!我が戦友よ!今日もぼっちやってんなぁ!」



デカい声で何人かの視線を奪ってきたソイツは、いつも以上に調子が良さげな表情を周りに撒き散らしている。



コイツの名前はバン。名字は…忘れた。本当、こういう所で俺という人間の適当具合がよく分かる。



バンは、確か身長が185cmでなかなかガタイが良いせいか、建築や土木関係でよく活躍してたなぁ…。



因みに、髪の毛の色は茶色。目の色は赤色。顔はそこそこ良い感じ。チートだ、チート。



更には結構成績が良いと聞いた。腹立つ要素しかない。



まぁ、性格の悪い俺の隣に居てくれる、と言う点で、俺はバンを無下には出来ないんだけどな。



そうこうする内に、バンはいつの間にか、俺の隣に腰かけていた。



「このあと、入団勧誘会もあるんだからな。シャキッとしろ」



俺の背中を、俺より遥かにデカイ手でバシバシ叩きながら、バンが言う。



「あー…そう言えば…そうだな…」



卒業式の醍醐味である、入団勧誘式―――俺にとっては、只の喧しい会式でしかないけどな。



でも、入団勧誘式がなけりゃ、俺は無職になるかもしれないから…下手に愚痴は吐けない。



因みに、今更になるが、依頼屋について、更に詳しく説明を加えておこう。



依頼屋は幾つもの団から成る。



更に、その団1つ1つも、団長1人、副団長2人、その他上限なしの団員から成る。



団長になるには、団員より、遥かに厳しい入学試験や卒業試験を突破しなければならない。



団長試験では、毎年500人の受験生が居れば、無事入学出来るのは半分の250人程度。更に卒業出来るのは20人に満たない程度。



聞いただけでも、あまり考えたくない確率と競争率だ。



因みに、俺が受け、卒業したのは団員試験だ。



で、入団勧誘式と言うのは御察しの通り、団長試験を合格し無事卒業した新団長や、新しい団員を探しに来たベテラン団長がこれから、団を担ってくれそうな団員を直接勧誘する式の事だ。


「…で!今回は、あの有名な最年少で依頼屋史上初の女団長、バンフォード・アクアも勧誘しに来るらしいからな!」



目を輝かせながら、バンが嬉しそうに隣で話す。



最年少……女……俺にはピンと来ない単語だな。



バンの話を右耳から左耳に受け流しながら、俺は桜の花弁の最後を目に焼き付けていた。

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