第1話「見知らぬ場所と見知らぬ顔」
途切れた意識が戻っていく。体の感覚がはっきりすると同時に俺は目を開ける。
「は…?」
意味不明、理解不能。目を開けた先には、とりあえず知ってる場所ではなかった。
ゆっくりと周りを見渡す。まずわかったことは、ここは室内で、建物は木造っぽい。木造の定義はよく知らんが、なんだかログハウスみたいな感じだ。前面が木で出来ている。部屋は中々に広い。家具が何もないから違和感が凄い。
ーあとはここに知らない顔がいるってところか。この部屋にいるのは俺を入れて9人。その中には神谷と結城もいる。あとは全員知らない顔だ。
ーというかこの二人がいてくれて本気で助かった。知ってる顔があるだけでここまで安心するとは思ってなかった。
「おいオイオイ。なんなんだよここはぁっ…⁉︎」
俺を含むほぼ全員が驚愕の表情で固まっている中、始めにその驚愕を声に乗せたのは、少し小柄で赤髪の、目つきの鋭い少年だった。どれくらい鋭いかというと、コンビニの前に座り込んでたら不良に間違われかねないレベルだ。だが、俺がその少年の第一印象を確定させている間に、そいつはやってらんないみたいなあからさまに不機嫌な表情で、部屋を出て行った。そして、その隣にいた少女が、慌ててそいつを追いかけて行った。
「はぁ…騒がしいわね少しくらい冷静でいられないのかしら。」
少年が出て行った直後に口を開いたのは、氷のような冷たい目をした少女。黒髪で長身でいかにも優等生って感じだ。だが、友達はいなさそうな、そんな雰囲気をまとっている。発言もなんだか厳しい感じだしな。
「ん〜。この状況で冷静でいる方がおかしいと思うのは僕だけかなぁ?」
氷の少女の発言な返答したのは、亜麻色の髪をした猫のっぽい目をした少年、その顔はニコニコと、少し薄気味悪い笑みを浮かべている。この少年が今言ったことは、俺も同意するがその薄気味悪い笑顔から発せられている余裕そうなオーラが、俺の同意を一瞬で撤回させた。
「全く…貴方のその薄っぺらい態度、本当に気持ち悪いわ、しばらくの間、絶対に話しかけないで。」
そう言って、氷目の少女は逃げ出すように早足で部屋を出て行った。ていうか、氷目猫目のこと滅茶苦茶嫌ってんな。だがそれに反して、猫目はさらにニヤニヤしながら、氷目を追いかけて行った。そしてそれに続くように、残りの二人も部屋を出て行って、この部屋の中には、俺たち三人が残った。
「なぁ相馬、お前はどう思うよ。」
少しばかり静かになったこの空間で、神谷は語彙力のない文章を言ったが、神谷の言いたい事は、状況的にすぐ理解できた。
「知るかよ、そんなの俺らをこうした奴に聞けよ。」
「それがわからないから困ってんだよ、俺らをここに放り込んだ奴がなーんもしてこねーから、今必死で頭を回してんじゃねーかよ。」
神谷の言い分はまあ正しいと思うんだが、別にそれを俺に訊いたところで何も変わらない気がする。
「ねー、そろそろ私たちも外出ようよー。」
と、横からマイペースな発言をした者がいた。結城は状況を理解してんのかわからない顔でこっちを見ている。
「そうだな、いつまでも引きこもっていたら相馬みたいにんっちまうもんなあ。」
危うく頭の血管が切れるとこだった。そう言えば神谷は俺の過去を知らない、俺が普通ののインドア派だと思って、こんな冗談を言ったのだろう。危ない危ない、こんな状況なのに本気でキレるところだった。
俺の脳内がこんな事になりつつも、俺たちは部屋から出て、短い廊下を通り、リビングっぽいところと、その隣に玄関を見つけた。
「……あれ⁈アレ⁈開かないんですケド⁈どーゆーこと⁈」
玄関からやかましい大声が聞こえた。そこには桃色の髪を後ろで纏めた、いかにも煩そーな少女がドアノブを引っ張っていた。どうやらドアが開かならしい。
ーと言うことはもしかして、閉じ込められたってことか。
…………おいマジかよ