~17歳・冬1~
気がつけば雪が降る季節になっていた。
今年は昨年に比べて雪が少なく、雪かきをする人々はあまり見当たらない。その代わり、昨年よりも数段寒い風が青森の気温を下げていた。
クッキーの渡された日の翌日、鈴からメールが来た。
「クッキーどうだった?美味しかったら亮太にあげることにするから、食べたら感想お願いねー」
まだ鈴は、浮気されてることに気がついていないらしい。まぁ当たり前か。と、気を落とし、僕はメールを打った。メールでだったら真実を伝えられるかもしれない。
「美味しかったよ!鈴、クッキー焼くの上手いね。また食べたくなってきたよ。…実は」
と打ったあと、僕はメールを打つ手を止めた。
結局、ホントのことは言えず、クッキーの感想だけをメールにして鈴に送信した。
すると、
「ほんとに?ありがとう。今度暇あったら俊太郎にも焼くね!」
と、元気なメールが返ってきて、僕はさらに気を落とした。
こうして、本当のことを言えないまま、1ヶ月がすぎた。未だに鈴は浮気されてることに気がついておらず、たまにコンビニに彼氏と一緒にやってくる。鈴が笑顔で彼氏と話しているのを見る度に、本当のことを言えない自分と、鈴の彼氏に対しての、激しい憤怒の気持ちがこみ上げてきた。
そんなある日のことだった。
夕方、もう少しで仕事が終わりそうな時間に、鈴の彼氏が一人でコンビニに来た。その頃には、僕は鈴の彼氏を見るだけでイラッとするぐらいになっていた。幸い、僕はその時、商品を並べる仕事をしていたので、レジで対応することはなく、少しホッとしていた。
僕が商品を並び替えていた棚を挟んで向こう側で、鈴の彼氏のケータイがなった。
「鈴からだ。」
と、その声に僕はドキッとしながら、聞き耳を立てていた。そして鈴の彼氏が、
「ホントうっせーよなー鈴のやつ。俺はあそびでやってるだなんて知らずによwww」
その言葉を聞いた瞬間、
「おい」
と、思わず鈴の彼氏に声をかけた。
「ん?誰か呼んだか?」
「今の話どういうことだ?」
僕は仕事をほったらかして、鈴の彼氏の元へ行った。
「あんた、誰だよ?」
「だから今の話はどういうことだよ」
「あ?遊ばれてることにも気づかない奴ってバカだなーっていうはな…」
と、鈴の彼氏が言い終わる前に、僕は鈴の彼氏の胸元を掴んで、
「お前、鈴がどれだけ本気でお前のことが好きかってわかってんのかよ!」
「あ?だからあんた誰だよ?離せよ!」
もう我慢出来ない。僕は思いっきり、鈴の彼氏を殴った。
「イテッ!お前何すんだ…」
「うるせぇ!お前は鈴をなんだと思ってんだよ!お前に鈴の彼氏の資格なんてねぇんだよ!」
と言い、鈴の彼氏を押し倒して、2発、3発、4発、5発と、連続で鈴の彼氏を殴りつけた。もう抑えきれなかった。
「てめぇ!このやろ!」
今までの怒りを込めて1発1発、本気で殴りつけた。
幸い、店の中に客はおらず、店の端の方で殴っていたので、止める人は誰もいなかった。
拳がどんどん汚れていき、自分が流した傷か、鈴の彼氏の鼻血か、どっちかわかんない血が、僕の拳にべっとりとついた。それでも僕は殴り続けた。
その時、後ろに人の気配を感じて、僕は後ろを振り向いた。
そこには口を開いて唖然としている鈴がいた。
「キャーーーーーーー!!!」
その鈴の一声で、レジで働いていた人がこっちに駆けつけた。
「うわっ?!なんだこれ?!」
「おいっ!俊太郎!おまえなにやってんだよ!」
すぐに僕は鈴の彼氏と引き離された。
鈴が彼氏に駆け寄り、「大丈夫?大丈夫?」と、懸命に声をかけている。
「鈴!そいつは…」
「うるさい!だまって!」
と、鈴に怒鳴られ、僕はだまってしまった。
自分の血だらけの拳をみて、僕は正気に戻った。
鈴の彼氏は、顔面がボコボコになっている。自分がやっただなんて信じられないまま、
「俊太郎!おまえちょっとこっち来い!」
と、僕は事務室に連れていかれた。
その日、僕はもちろん、ガッツリ怒られた。
「幸い、お客様が許してくれたから大事にはならなかったけど、お前仮にもおきゃくさまにたいしてなにやってんだよ!」
と、いう具合に怒られた。
そんなことよりも、僕は鈴に、
「うるさい!だまって!」
と言われたことの方がショックだった。
重い足取りで家に帰り、僕は何もせずにベッドに横になった。
これで、俺は完全に鈴に嫌われた。ただ、ホントのことを知って欲しかっただけなのに。
「うるさい!だまって!」
が、何回も耳の奥で響く。もう、鈴に何を言っても信じてもらえない。
「あ〜もう!どうしたらいいんだよ!」
と、僕は、ベッドを叩いた。そして、何もかもやになって、布団に突っ伏して泣いた。
高校は、ほんとに時間が無いです。
来週にもテストが控えていて、勉強しなきゃ行けません。
こんな状態ですが、出来るだけ早く投稿しようと、努めていこうと思います。