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九十七話 王都大虐殺の幕開け

お待たせいたしました!

「――兎に角」


 静寂を破ったのは、暁だった。


「……仲間にするなり敵対するなり、どういう展開になるかはわからんが……此度の件、その男と接触する人間を限定する」


 その場にいた皆が暁の意見に同意する、と頷く。

 アイツはただの狂った殺人鬼だ。

 出会った人間の悉くを殺していっている事からも想像出来るが、接触したが最後問答無用で殺しに来る可能性が高かった。

 なら、その男と応対しても確実に大丈夫だろうというメンバーを選ぶしかない。


「私と……まぁ接触する事はないだろうがフラン、そして夜。……万が一に備え、私を含めこの三人以外が直接接触する事を禁じる」


 ……まぁ妥当な判断だろう。

 自慢じゃないが、互助会のメンバーの中でフランチェスカと暁の次に強いのは俺だろう。


「まぁフランは動かんだろうし、実際に動くとするならば私と夜になるだろうが……夜、早速だが、もう一度ローデンタリアに行ってその男を見張って貰いたい。……正直に言えばローデンタリアはどうでも良いが、被害を周囲の国にまで拡大させる訳にもいかないからな」


 ……随分ぶっちゃけるな。

 まぁ閉鎖的で好戦的なローデンタリアはいらない、というのは分からなくも無いけど。

 あの国は一度滅んで立て直した方が良いとは思う。

 国王は野心家だし、軍人達も好戦的な人間ばかり。

 周囲の国にとっては厄介というか、目の上のたん瘤なのだ。

 いっそ今回ので王国潰して貰って、”魔女の夜(うち)”の傀儡国家にでもするかねぇ?

 そっちの方がメリットが大きそうだし。

 いや、その前に全員いなくなるか。


「……私も国境近くまでついていこう。お前は潜入して逐一報告して欲しい」


「……(コクリ)」


 俺が頷くのを確認して、暁はフランチェスカに視線を向ける。


「はい、じゃあ今回はここまで。……暁、夜。任せるわ。……では解散しましょう」


 フランチェスカの解散の一言で、それまで静かだった場が一気に賑やかになる。

 酒を出して飲みだしたり、喋り出したりと、皆がリラックスした様子で、会話に花を咲かせている。

 正直に言えばここに残って飲み会に参加したいのだが、頼まれた手前そうも言ってられない。


「では行こうか夜」


「……ん」


 俺と暁は揃ってローデンタリアに向けて出立したのだった。







 夜と暁が互助会本部を出立した翌日。

 男はただ真っすぐ進んでいた。

 王都に――次の狩場に向けて、ただ真っすぐ進んでいた。

【千里眼】によって王都の位置は把握していたので、迷う事はない。

 勿論道すがら出会う人間は勿論片っ端から殺していくのも忘れない。


「――ヒ、ヒヒ、ヒヒヒヒヒ!!」


 その最中も、男は笑みを浮かべた儘だ。

 というよりは、壊れた様な笑みがデフォルトになりつつあった。

 壊れた男は外見上はマトモであっても、最早理性など無いに等しかった。

 まぁ血走った眼に狂った様な笑みを浮かべ、血塗れの男がマトモかと言えばそうでもないのだろうが……。





 そして、男は王都を護る分厚い砦の様な門に辿り着く。

 男は知る由もないが、この国は文化・芸術等よりも防衛施設や武器等の戦争に関する事を優先する国性なので、砦等の防衛施設にも莫大なお金が使われており、他国よりも遥かに頑丈で分厚い砦になっている。

 戦う為のスペースは勿論、詰めている兵士達の居住スペースから食堂、武器倉庫、食糧倉庫、訓練所等この砦のみでも相当数の兵士達が生活し、長い間籠城しても問題ない様になっているのだ。

 それはこの国の『他国は全て仮想敵国とする』という方針が生み出したモノであり、特に首都という事もあって、他の都市よりも遥かに頑丈で巨大な砦門となっているのだ。

 だが、そんな事男は知らないし、知っていても気にしないだろう。

 国の威信をかけて建てた門であろうと、チートと言える程の能力を得た転生者にとっては、ガラクタも同然だ。


「――止まれ!!」


「何者だ!?」


 砦門を警備する兵士が、男に声を掛ける。

 だが、当然の様に男はそれに答える事なく、


「ハハ、ハハハ!! ハハハハハハハ――死ね」


 狂った様に笑い、死刑宣告をする。


「――がっ!?」


「いぎぃっ!?」


 次の瞬間、地中から出現した赤黒い槍が兵士達を貫いた。

 貫かれた兵士は白目を剥き、口から槍を生やして痙攣している。

 その光景を見て、砦門の内部にある一室からその光景を見張る役目を与えられた兵士が顔を青白くさせながらも慌てて側にある紐を引っ張った。

 すると、


 ゴーン! ゴーン!


 重苦しい鐘の音が鳴り響く。

 これは砦門内に詰めている兵士達への『緊急事態』を知らせる装置だ。

 通常時は鳴らされない。

 担当兵士が見て『砦門内に詰めている人間がほぼ全員で担当するべき』だと判断した時のみ、鳴らされるのだ。

 鐘の音が砦門内に鳴り響く中、俄かに砦門内が騒がしくなり、暫くして兵士達がぞろぞろと出てくるのを、男は笑みを浮かべて待っていた。


「ハハ、ハハハハハ……ハハハハハハハハハハ!!」


 獲物が来るのを――待っていた。




 男がゲーム内で使用していたこの”吸血公”は、この世界においてもまた、少し特殊だ。

 男は知らないが、人間状態でスキルを使用していくと、身体は徐々に吸血鬼に()()()()()

 身体は最早常人の()()から変化し、ただでさえ最早耐えきれない程だった殺人衝動に壊れかけていた理性は飲み込まれた。

 これが他の人間であれば……いや、結局のところ耐えきれなかっただろう。

 殺人衝動と血への欲求。

 それを耐えきれるのは、転生者の中でも一握りといえる。

 ある意味、壊れたこの男と”吸血公”の組み合わせは最高であり、また最悪だったと言う事だろう。


「――【吸血公の大虐殺ヴラッドリー・カーニバル】!!」


 男が叫んだ瞬間、血の色をした槍が地中から現れ、兵士達の悉くを下から串刺しにし、更に追撃としてその周囲から幾つもの血の色をした杭が地中から出現し、兵士達へと突き刺さる。


「あ、あああああああああああああああああああああああああああ!!」


「ぎぃ……っ!? いぎぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいっ!!」


「死……死にたく……」


 屈強な、精強な男達が、耳障りな悲鳴を上げ、血を撒き散らし、白目を剥いて絶命していく。

 常人が見れば、狂ってしまいそうな程の凄惨な光景だ。

 正に、地獄絵図。大虐殺であった。


「クク……クククッ! いいねぇ。いいねぇ! ……さて、と」


 男は目の前の光景に心の底から笑うと、右手を翳す。


「【魔血変換(ブラッドコンバート)】」


【魔血変換】は、血――ゲーム内では直前に相手に与えたダメージ――を己の魔力に変換するスキルだ。


 辺りにある血が発光し、男の右手に集まっていく。

 その光景を、男は満足気に見て、


「……あぁ、さいっこうだなァ」


 笑ったのだった。






VRMMOモノ

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此方も読んで下さると嬉しいです。

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