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九十五話 見つける

 数日後、有り余る体力と、この世界屈指と自負がある速度をフル活用して、ローデンタリアまでやってきた俺は、気配を消し、国境沿いを調査していた。

 ”レジェンドアサシン”である俺が気配を消せば、大概の人間には察知されない。

 勿論、高位の魔術師としての気配察知能力と高い探知能力を持ち合わせたフランチェスカは俺が気配を消しても気付くし、暁の場合は勘で俺が何処にいるのかを見つけてくる。

 フランチェスカみたいにスキルとかで見つけられるならまだしも、勘って……。

 本当に相性が悪いというか、厄介というか……敵対関係じゃなくて良かったよ。

 一方、ローデンタリアの軍隊には俺が脅威を感じる相手はいない。

 一番強いのはローデンタリア軍の元帥だった筈だが、サポート系のハルキでも勝てる。

 それ程に転生者・転移者達の能力はチートなのだ。



 え? どうして閉鎖的な国として有名なローデンタリアの情報を持ってるかって?

 ハハハ、”魔女の夜”を舐めてもらっちゃ困るな。

 ローデンタリアの高名な侯爵家は俺の部下が当主をしている傀儡だし、軍の将軍職に就いている一人も俺の部下だ。

 ”魔女の夜”自体設立されてからそう長い組織ではないが、貴族でも商人でも軍人でも資金難に陥っていたり、恨みを買っている人間はいるものだ。

 俺達はそれに付け込んだだけ。

 ま、”魔女の夜”の情報を管理する部署”梟”に眼を付けられたのが運の尽きだったのだ。





 で、俺が今来ているのは、ローデンタリアと国境を接している国の、国境に一番近い街だ。

 ローデンタリアは閉鎖的な為、”渡り鳥”や”不如帰”を送り込む事は難しいが、この国は普通の国なので、拠点があるし、”不如帰”に所属している人間が経営する店も出店しているので、諜報員達が入り放題だ。

 開放的な国はこういう点が大変だな。

 あ、この国の王様は奥さん……つまり女王以外にも愛人がいるんだが、それが女王に知られて、折檻された挙句Mに目覚めたんだぜ。これ、国家機密な。

 俺はその”不如帰”の人間が経営している高級宝飾店の裏手から入る。


「……いらっしゃいませ。お待ちしておりました。ここの代表のセブリナと申します」


 物静かな、おっとりという言葉が似合う貴族の夫人の様な雰囲気の金髪巨乳美女が俺に敬語を使い、頭を下げて迎え入れてくる。

 ……うむ、眼福。


「……そう。……情報は?」


 俺が端的にそう言うと、金髪美女――セブリナは二つに折りたたまれた羊皮紙を差し出して来た。

 その紙から、彼女が愛用しているのだろう、フローラルな香りの甘やかな香水の匂いが香って来る。


「――此方に」


 差し出された羊皮紙を受け取り、チラチラと流し読みする。

 それにしても羊皮紙とは随分凝った物を……。

 この世界では普通に紙が浸透しているので、わざわざ羊皮紙を使う理由はない。

 つまりは此奴の趣味なのだろうが、それを咎めるなんて事はしない。

 だって、別に羊皮紙だからって何? だからな。

 任務を全うし、情報を漏らしたりしないのであれば、それで構わない。

 書かれていたのは、何者かによってローデンタリアの砦や村や街、そしてそこに住む住人達が無惨にも殺されており、その犯人は男一人であること、そしてその犯人の外見の特徴に加え、国の方針や軍の方針等、事細かに書かれていた。

 ローデンタリア内に潜む部下達が集めた情報だが、彼等も余り詳しくは知らないらしい。

 犯人の情報に関してだけは、推測であったり、曖昧な表現が多かった。

 これ以上の情報が欲しいなら、自分で調べに行くしかないだろう。

 俺は羊皮紙を懐に終い、


「……わかった。……危険、なら……カラス……飛ばす。……そしたら、逃げて」


 ここもいつ危なくなるか分からないからな。

 殺伐とした裏の世界に生きてはいるものの、部下にはなるべく死んでほしくない。


「はい、承知致しました。夜様も、お気を付けて下さい」


 セブリナは俺に一礼した後、優し気な笑みを浮かべた。

 これ、若しかして子供に思われてないか?

 まぁ外見的に大人には見えないけどさ。十代後半位の外見はしてるぞ?

 ……自分で言うのもなんだが、結構胸あるし。

 いや、セブリナみたいな豊満なアラサー美女からしてみりゃ俺なんざ子供に見えるんだろう。


「……じゃ」


 俺は振り返って店を出ると、再び気配を消して国境沿いに向かった。








 さて、そんな訳で国境沿いに来た訳だが、まぁ随分と厳重な警備態勢だこと。

 遠くから気配を消して見てるんだが、何十人いんだこれ? ……というか、関所の兵士が寝泊まりする屯所に六人気配があるんだけど、一人女性なんだが……やっぱりこれ、()()()()()だよな?

 ……まー真昼間っから元気な事で。

 女性が可哀そうだが、助ける義理がないし、ここで俺が助けて状況が変わるのも避けたい。

 これ以上警備の数を増やされるのは面倒ではないが、ウザい。

 ここは無視するのが最善だろう。


「……じゃ、お願い」


 関所の情報は得たし、報告書を二枚書いて、二羽のカラスに一枚ずつくくり付け、べリオスと暁の場所に届ける事を命じる。

 可愛い部下(カラス)達は小さくカーと鳴き、羽ばたいていった。

 じゃ、俺も色々見て回りますかね。





 次にやって来たのは関所から少し離れた森の中。

 俺は空腹を満たす為に、木の上に登って小休憩だ。

 空腹用にと持って来た果実や焼き菓子を食べてます。いやー……美味いね。ハルキが作った焼き菓子は。また腕を上げたんじゃないか?

 男になったのに、嫁スキルがガンガン上がっている。……是非嫁になってくれ。


「――不法出国者を徹底的に探せ!!」


 そんな風にのんびりしている俺が座っている樹の下では、ローデンタリアの兵士達が、脱走者がいないかどうか血眼になって探していた。

 ……はーい、侵入者ならここにいまーす。

 勿論見つからない様にって【気配遮断】を使ってるからわざわざ声を上げたりはしないけど。

 何やら「女なら犯す」とか言ってゲラゲラ下品に笑っている。

 ……女ならここにいるよー。心は男だけど。

 殺す理由もないからコイツ等は放っておくとして……そろそろ本命の調査に行くとしますかね。

【気配察知】を最大で使えば見つかるよな。こんな小国だし。

 俺が【気配察知】を使うと、一際大きな魔力を持つ人間を察知した。

 場所は王都からはまだ遠いけど、それなりに大きな街。

 どうやら虐殺してるみたいだな。

 俺は【身体強化】に【気配遮断】、【速度上昇】を併用し、自分の身体能力を限界まで高めて、走りだす。

 新幹線もビックリの速さで景色があっという間に流れていく。

 ハーハッハッハ! なんせ俺はこの世界最速を自負している男!

 誰も俺を止められないし、追いつけないぜぇ!!

 ……因みに、初めてこれをやった時はガチで吐きそうになったのは内緒だ。

 一切の状態異常にならないこの身体は、そんな吐き気も通用しなかったのだが。

 そんな風に全速力で走っていると、【気配察知】で察知した大きな魔力を放つ人間がいる場所に到着した。


「……見つけた」


 広がっていたのは、破壊尽くされた街並みと、肉塊となった人々、そして街中を真っ赤に染め上げている血だ。

 まだ生き残っている人々がいるらしく、悲鳴が聞こえてくる。


「――ハハ、ハハハ! ヒャハハハハハハ!!」


 其方にいくと、一人の男が血の色の槍を持って笑っていた。

 その周囲には死体が積まれている。

 あー……”吸血公(ヴラド)”かー。

 また中々に特殊な職業をとってるんだな。……転生者(同輩)さん。





現在投稿中のもう一作品になります。


Next World Order――アサシンが行くVRMMOライフ――

https://ncode.syosetu.com/n3391ff/


相も変わらずの主人公暗殺者職のVRMMOモノです。

此方もブックマークして頂ければ嬉しいです!


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