表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/111

八十七話 ”勇者”、女王の忠告の意味を考える

あと五話位で終わる……んじゃないですかね。

ガンバリマース。

 翌日、トォナオへと戻って来ていた祐樹達は宿に籠っていた。

 四人が顔を突き合わせ、神妙な面持ちであった。


「……エルフの女王さんが言っていた事、どう思う?」


「祐樹が思ってることは分かるぜ? ……幾ら女王様からの言葉だと言っても、今まで親切にしてくれた人達を疑うってのは、正直言って嫌だ」


 フランチェスカの言葉の真意、それを図りかねていた。


「でも、あの後色んな人に聞いたけど、『エルフの女王様の忠告なら聞いておいた方が良い』って言われたものね~」


 あの後、仲良くなったエルフや護衛や商会の人々にあの言葉はどういう意味なのかを聞いてまわったが、皆同じように


「女王様の忠告は聞いておけ。彼女は全てを見透かしているのだから。きっと君達の置かれている状況を示しているんだ」


 と言っていたのだ。

 そしてそれと同時に、祐樹は思い出したように瑞姫に聞いた。


「そう言えば瑞姫はアァルさんの事を気にしてたよな?」


 瑞姫は頷き、あの瞬間見たことを話しだす。


「ゴブリン退治の前に話してた時ね、一瞬だったけど……なんて言ったら良いのかな。……そう、『冷たい笑み』って感じの笑みを浮かべてたの。まるで”蛇”みたいな、気味の悪い笑みだったわ」


 今でも、思い出すと恐ろしく感じる。

 ”人を護る騎士”のする表情じゃない。

 あれはそう、獲物が罠に掛かるのを待つ獣の様な、底冷えする笑みだ。


 瑞姫はそう思うが、流石に黙っておく。

 瑞姫の言葉を聞いて、龍平がやれやれと頭を掻く。


「じゃあなんだ? アァルさんが俺達に何かしようとしてんのか?」


「いや――」


 龍平の言葉を祐樹が遮る。


「アァルさんじゃないと思う。彼はただの連絡……いや、監視役なんだろうな。多分エルフの女王様が言ってた”良い顔して接してきた相手”ってのは――」


 そこまで言ってから祐樹は三人を見回す。

 そして、ゆっくりと口を開き、考え出した答えを紡ぎ出す。


「――王様の事だと思う」





 一方、その(タックス)はアァルを呼び寄せ、報告を聞いていた。


「よくぞ戻って来たな、アァル。……して、”勇者”達の様子はどうだ?」


 アァルは下げていた頭を上げ、口を開く。


「……はっ! ゴブリン討伐、盗賊討伐と順調に実戦を積んできており、これより国王陛下の命ずる通りに誘導しようと思ったのですが……彼等は我々を疑い始めたやもしれません」


「――なっ!?」


 その言葉を聞いて、タックスは立ち上がった。


「――何故」


 何故バレたのか。

 そう言おうとして口を閉ざす。

 未だ自分は彼等にとっての”協力者”であり”後援者”のはずだ。


「……先日、”不可侵の森”に護衛の任務で行った際、エルフの女王フランチェスカより『疑え』と言われたと言っておりました」


「!? ……邪魔をしよるかあの下等種の女王めが!」


 苦虫を噛み潰したかのような顔で忌々し気に怒鳴る。

 ヴァイアブールも、エルフを”神の御遣い”としており、重要な存在のはずであるが、タックスにとっては己より慕われ、力を持つ”敵”でしかなく、エルフと言う存在も、『人間より文化レベルの低い種族』としか考えていない。

 タックスは一度幼い頃にフランチェスカに会った事があったが、幼い頃より抱いていた自分の心の底にひた隠しにしている野心や邪心を見透かされるようだった印象があった。

 現に、その時にはこう言われた。



『――秘めているその醜い感情(モノ)、それは表には出さない事ね。……一生表に出さず、墓の中までもっていきなさい。死にたくないならね』



 だからこそ、表向きは善政を敷いてきたのだ。

 裏では暗殺者を使い、気に入らない者や従わない者を葬って来たが、それはバレない様にしてきた。


「……一度疑ってしまえば”勇者”達が此方の言う通りにしてくれるとは思えませぬな」


 ハンスの言う通りだ、と怒りが落ち着いてきたタックスも頷く。

 一度疑えば、簡単に信用しないのが人間だ。

 それは異世界より来た”勇者”とて同じこと。

 彼等にはやって欲しい事がまだまだ多くあったが、これ以上彼等を使うことなど出来ないだろう。

 そして、決心したようにハンスに命令を下した。


「……飼い馴らせぬ犬などいらぬ。”魔女の夜”に連絡を取るが良い。奴等に依頼せよ『”勇者”を殺せ』、とな」


「「……畏まりました」」


 頭を下げ、部屋を出て行くアァルとハンスを見送り、


「……駒は最後まで駒であるべきなのだ。ただプレイヤーの言うが儘にしていれば良いのだ」


 そう言ってタックスも自室へと消えていった。







 俺は久しぶりに”アァル”の格好をして、王座の間から続く廊下を歩いていた。

 王の言った『”勇者”の暗殺』。

 これこそが最後のピースだ。

 アイツの悪事の情報は既に得ている。

 さぁ、潰す為に動き出すとしよう。




 なぁ、タックス・ヴァイアブール。

 お前は俺達のいた世界(地球)の物語のお約束を知らないだろ?

 ”勇者”が活躍する英雄譚においては良くある話だ。

 ”()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って子供でも知っているお約束(テンプレ)だ。

 

 だからお前の計画は潰されるのさ。

 お前によって召喚された”勇者”によって、な。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ