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八十五話 エルフの女王

 暁、コウリン、そして祐樹達”勇者”メンバーを含めたラヴィオ率いる”兎の足(ラビットフット)”の商隊はその後数日掛けてエルフ達の住む森へと到着した。

 そして森に入る手前で商隊が一度立ち止まる。

 そしてラヴィオが馬車から降り、


「……”兎の足”のラヴィオ・オルファです! 食材や鉄製品等をお持ちしました故、族長殿にお取次ぎ願いたい!」


 ラヴィオの言葉に回答は無かったが、ラヴィオは其の儘待機している。

 暫くして、数人の美しい金髪の美男美女が弓を構えて現れた。


「――っ!」


 祐樹達は武器を構えようとするが、アァルがそれを止め、エルフ達に聞こえない様に小さな声で、


「エルフは警戒の強い種族です。……よくある事なので武器は抜かないでくださいね」


 そう忠告した。


 この森が”不可侵の森”などと言われているのはこういった理由も含まれている。

 エルフは警戒心が強く、初見で入って来る者ならば問答無用で追い返す。

 ラヴィオ達に対してもフランチェスカと顔見知りであるから親しく接しているようなモノだ。

 更にはエルフの集落へと到達出来ないようにフランチェスカによる高度な幻術が掛けられているので、侵入出来る者などいない。


 祐樹達はアァルの言葉に従い、武器から手を放す。

 一方、ラヴィオに一人のエルフが近付くと、親しそうな笑みを浮かべる。


「お久し振りですラヴィオさん。……案内します。どうぞ、付いて来て下さい」


 ラヴィオもそれに握手で応じると、


「商隊前進!」


 そう声を掛ける。

 エルフ達が樹々を駆け抜けていくのを追いかける様に、商隊も森の中へと入って行った。




 やがて、暫くして集落へと到着する。


「うわぁ……」


「凄いな」


 思わず祐樹達がそう呟くのも無理はない。

 地上や背の高い樹々の上にログハウスの様に建てられた家同士はロープと木で出来た橋で通じている。

 その下には川が流れており、清らかなのかキラキラと光り輝いている。

 更には淡く光っている発光体が宙に向けて浮かんでおり、まるで御伽話の様であった。


「……先ずは族長であり、エルフの女王である”我等が母”にお会いして頂きます」


 案内してきたエルフが、ラヴィオに向けて言うと、ラヴィオも頷く。


「……荷物は降ろしておいてくれ! その後は各々休んで良し!」


 そう部下に言うと、


「アァル殿も、護衛の方々も同行して下さい」


 ラヴィオの言葉にアァル達は頷き、案内に付いて行った。





 エルフの女王がいるのは集落の中でも特に大きく造られた家の中であった。

 案内人のエルフが家の前に立つと、


「――我等が女王、言い付け通り客人をお連れ致しました」


 扉の前でそう言った。

 そして言い終わると同時に扉が一人でに開く。


「――失礼致します」


「……うぉ」


 入って早々龍平が思わず溜め息を吐く。

 理由は言わずもがな。


「――久しぶりねラヴィオ・オルファ。物資の援助感謝するわ」


 そう言いながら左右に控える若いエルフに命じ、羽扇で仰がれている一人の女性。

 風によってキラキラと輝く金髪、まるで絵画の様に整った美貌が浮かべる気怠げな表情は蠱惑的にすら感じる。

 豊満ながら均整の取れた身体は神話の女神の如く。

 その姿を目にした者なら、劣情を抱くどころか触れてはならぬ秘宝を目にしたと錯覚するだろう。

 ”真祖のエルフ(ハイエルフ)”、全てのエルフの女王にして、数多の妖精や精霊を従える”神の末”――


「お久しゅう御座いますフランチェスカ様」


 ラヴィオが深く頭を垂れる。

 その後ろでアァルや暁、コウリンも同様に頭を下げた。

 祐樹達も空気を読み、遅れながらも頭を下げる。


「……それでそっちが」


 チラリ、とフランチェスカが祐樹達を見る。

 その眼は全てを見透かすかのようで、何も悪事をしていない筈の祐樹達であっても、何か自分が疚しい事をしたのではないかと思わせた。


「須藤祐樹、中原瑞姫、周防由梨花、渡辺龍平……今回召喚された”勇者”ね」


「「「「――!?」」」」


 四人は知らない筈の自分達のフルネームを言われて驚きを隠せない。


「……な、なんで自分達の事を?」


 祐樹の疑問に、フランチェスカは大したことじゃない、と首を振る。


「……貴方達は思っている以上に目立つって事よ。それに、”真祖のエルフ(ハイエルフ)”の女王である私に知らない事なんてないの。妖精や精霊が教えてくれるから」


 そしてフランチェスカは意味ありげな淡い笑みを浮かべ、


「……全てを疑いなさい。良い顔して接してきた相手を、味方の顔をして近付いてきた者を。……そうでなければ、貴方達に待つのは――」


 フランチェスカは告げた。


「――”死”よ」




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