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八十話 ”勇者”パーティーVS盗賊 3

「お二人共、スキルを使いたいのであれば、それをイメージして下さい!」


 祐樹と龍平が盗賊団首領バズ・ラィバと睨み合っていると、後ろからアァルが叫んだ。


 この世界において、スキルを使う為には魔力とイメージ力が必要だ。

 一般的に使われているスキルはそれが使い易かったり、体系化されているからだ。

 つまりは『教える人間がいて、更に覚えやすく、使い易いから』という単純な理由に他ならない。

 それに加えて【固有スキル】は膨大な魔力を必要とするので、それ程の魔力量を持つ者がいない、と言う事もある。


 一方で、夜や暁達の使う【固有スキル】に重要なのはイメージだ。

 それを魔力を使って再現するのが【固有スキル】である。

 だとするならば、今使うようになりたいのならば普通のスキルよりは【固有スキル】の方が楽だろう。

 そして彼等にとって『ザ・ワールド・オブ・エタニティー』で使っていたスキル以上に慣れ親しみ、またイメージしやすいものはない。

 幸い、両名ともに使用しているのはゲームの時と同じ武器なのだ。


「イメージ……ねぇ」


 龍平が思い浮かべたのはゲーム内でも使っていたスキルだ。

 速度を重視したステータスにしていた龍平にとっての一番のお気に入りだったスキル。

 それを頭の中で思い浮かべる。

 そしてイメージをより再現出来る様に、そのスキルの詠唱を思い出す様にゆっくりと紡ぎ出す。


「……切り裂け、切り裂け、切り乱れろ。我が身は風。我が身は刃。疾風の如く吹き荒れろ!」


 龍平の周囲に風が吹き始め、髪を揺らす。

 自分の中の何か――魔力だろうか――が減っていくのを感じ、上手くいっていると理解する。

 後はただ、己のイメージを、ゲーム内のスキルを現実にするだけだ。


「――っ! 今だ! 【西風の(ゼフィロス)剣舞(ダンス)】!」


 再現するのは双剣のクラスで覚える事が出来る上位スキルである【西風の(ゼフィロス)剣舞(ダンス)】。

 名の通り、風を纏い、舞うが如く敵を切り裂くという代物だ。

 使い方によっては風を飛ばして遠距離攻撃をする事も出来る便利なスキルである。


「で――出来た!?」


 自分で発動しておきながら自分で驚く龍平だが、その顔には笑みが浮かんでいる。

 そして祐樹もそれに続く。


「イーリアスは記す。我が生涯は闘争。我が人生は戦争。我は不老不死の身体にて、数多の英傑を斃し、無双を誇りし英雄(なり)。――【英装(ヒーロー・リプ)再現(ロダクション)トロイアの英雄(アキレウス)】!」


 祐樹が使ったのは英雄の武器を再現する【英装再現】と言うスキルだ。

 その中でも、不死の肉体を持つ無双の英雄アキレウスの武装を再現する。

 現れたのは青く光り輝く半透明の剣と盾だ。

 しかし、【英装再現】は剣と盾のみならず、アキレウスの異名である”駿足”、そして不死の肉体すらも再現するのだ。

 そして自分の中の熱を放出するが如く、大きく息を吸い、吐く。


「――良し!」


 そう言った祐樹は龍平と頷き合い、


「「行くぜ!」」


 二人揃って駆け出した。

 それに対抗し、バズもスキルを唱える。


「――へぇ、やるじゃねぇの! 【身体硬化(ボディーアーマー)】!」


 スキルによって身体を鉄の如く硬質化し、斧を構える。


「――おぉおおおおおおおおおおっ!!」


 先にバズに斬りかかったのは龍平だった。

 スキルによって齎された圧倒的な速度で、縦横無尽にバズの周囲を掛け、翻弄しながら一撃離脱を繰り返す。

 スキルによって硬くなった肌が刃を防ぐが、それでも痛みはある。


「――チッ! なめてんじゃねぇよ!」


 バズが不機嫌を隠そうともせずに舌打ちしながら振り下ろした斧を、


「――っ!!」


 ガキン!


 龍平に向けて振り下ろされた斧を、間に入った祐樹が左手に構えた盾で受け止める。

 円型の薄い盾のはずだが、片手で受け止めたというのにビクともしない。

 祐樹は冷静に、右手に持った剣を下から掬い上げるようにして振り上げる。

 刃はバズの肌をほんの僅かに切り裂いた。

 そこからツーと血が流れ出る。


「――へっ。まだまだァ!」


 そう叫び襲い掛かるバズだが、戦闘に慣れ始め、【スキル】を使用して巧みに攻める二人に翻弄され、防戦一方となってしまう。


「――ごぁっ!」


 とうとう吹き飛ばされ、小屋の壁に激突したバズの身体には大小様々な切傷があった。

 しかし――


「へッ――へへへへへへ! ヘァハハハハハハハハ!!」


 バズは笑っていた。

 ユラリと立ち上がると、いつの間にか手に持っていた綺麗な色の結晶を掲げる。


「テメェ等に使うつもりはなかったが、いいさ、使ってやるよ!」


 結晶が光り始め、次の瞬間には呆気なく崩れた。

 しかし、それと同時に何処かでパリィンという何かが壊れる音。

 そして、


 ――ゴアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァッッ!!


 ()()が吠える声が空気をビリビリと振動させる。

 それと同時に近付いてくるズン、ズンと言う足音。


「……まさかあんなものを飼っているとは。被害が盗賊団の規模と一致しない理由はこれですか」


 思わずアァルは呟いていた。

 アァル達の視界に現れた()()は、見上げる程の巨大な身体、樹の幹より太い四つの四肢。槍の如く鋭い角、そして鉄すらも砕きそうな顎を持つ――


「――地嶺竜(じれいりゅう)バグナゴガル」




 ――ゴォギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!




 気性の荒い地竜の中でも、この山の奥地に生息し、小型ながら特に獰猛と言われている地竜が祐樹達の前に立ちはだかった。




誤字脱字がありそうで怖い……。

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