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七十九話 ”勇者”パーティーVS盗賊 2

「――はぁっ!!」


「――チッ!!」


 祐樹の振り下ろした鞘に入った儘の剣を盗賊の一人が手にした斧で受け止める。

 腕力は【身体強化】の掛かった祐樹が勝っており、徐々に盗賊を押し始める。


「――ぅぐぅ!」


「野郎!」


 近くの盗賊達がそれに気付き、剣を振り上げて祐樹に斬りかかろうとするが、


「――妖精の生み出す清らかな風よ、吹き飛ばせ! 【妖精の悪戯風(シルフィーウィンド)】!」


「――ぎゃあ!」


 そうはさせないと瑞姫の唱えた低級の風魔術によって吹き飛ばされ、地面に転がる。


「――はぁあああああ!」


「うぉっ――ごっ!」


 その間に、祐樹は盗賊の斧を弾き飛ばし、頭を殴って昏倒させた。


「――荒ぶる魂を眠りに誘い給え。【眠りの泡沫(スリーピーバブル)】」


 瑞姫の魔術で転んだ盗賊達を、由梨花が放った水属性の、相手を眠らせる効果を持つ術で眠らせ、無効化する。

 立ち上がろうとしていた盗賊達は次々に地面に倒れ、鼾をかき始めた。


 それを見て、バズは舌打ちをする。


「……チッ。使えねぇバカ共がっ! 俺自らやるしかねぇらしい――なぁ!」


「瑞姫、由梨姉! 捕まえた奴等を動けないようにしておいてくれ! 龍平、行くぞ!」


「えぇ。わかったわ!」


「おう、任せとけ!」


 盗賊達の事は瑞姫と由梨花に任せ、斧を構えて一気に肉薄してくるバズを祐樹が龍平と共に剣を構えて対応する。


「剣を抜かねぇで勝てるなんざ思わねぇ事だな!」


 バズはニヤリと笑いながら手に持った斧を振り下ろした。






 鈍い剣戟音が何度も鳴り響く。

 十分程、彼等は戦い続けていた。


「――オォオオオラアアアアアアァァ!!」


「ぐっ!」


 気合と共に振られたバズの持つ斧をどうにか双剣で受け止めた龍平だが、威力を殺しきれずに大きく後退する。


「龍平! 大丈夫か!?」


「――おう! 大事無ぇ!」


 慌てて祐樹は龍平に声を掛けるが、そう言ってニヤリと笑みを浮かべる姿に安堵する。


「……おら、どうしたよ!? 二人でそんなモンか? あぁん?」


 流石に手慣れているのか、バズは二人を相手にしても苦にした様子はない。

 それどころか、息の上がり始めた二人に比べ、少し汗を掻いている位で、全く疲れていなかった。

 祐樹や龍平より頭一つ高い身長と、鍛え抜かれた太い腕から繰り出される強烈な連撃に、二人は苦戦していた。

 瑞姫や由梨花も参戦しようとしたが、集中している今、下手に入ってしまえば邪魔になるとアァルに止められ、固唾を飲んで見守っていた。

 そのアァル――夜は内心、"勇者"のレベルの低さに驚いていた。

 隠れて相手のレベルや状態を見る【アナライズ】を使ったが、バズ・ラィバのレベルは三十後半程だ。

 "勇者"は何か加護があるのかレベルが見れないが、苦戦しているところを見ると二十後半から三十前半といったところだろう。

 だからと言ってレベルが全てかと言えばそうとは言えないのがこの世界なのだが。


「……そんな訳あるもんか。【腕力強化(パワーブースト)】!」


「全く以ってその通りだっての。――【速度上昇(スピードアップ)】!」


 祐樹は荒い息を吐きながらも、その眼には依然闘志を滲ませて答える。

 その隣で龍平も袖で額の汗を拭い、不敵に笑って見せる。


「へぇ……少しは張り合いあるじゃねぇの。じゃ、ちょっくら本気ってのを見せてやるぜ」


 そう言うとバズは斧を片手に持って後ろに構える。


「先ずはっと……【戦神の雄叫び(ヴォーダンロア)】!」


【腕力上昇】の上位スキルを使用し、自身の攻撃力を上げる。

 そして暫く瞑目した後、眼を開くと同時に、


「――ぶっ壊れろや!! 【大地割砕(アースクエイク)】!」


 そう叫びながら斧を叩きつけた。

 そこから地面が隆起し、早い速度で祐樹と龍平に襲い掛かる。


「――っ!!」


「――ぅおっ!?」


 其々左右に跳び、避けようとするが、生み出された衝撃に吹き飛ばされ、飛んでくる大小様々な石や土の欠片が当たり痛みを伴う。

 なんとか受け身を取り、立ち上がる二人だが、その表情には驚きが浮かんでいた。


「今のって見たことないけどスキルか!?」


「この世界にもあるってことなの――いや、魔術があるんだ。スキルもあるに決まってるか」


 驚きを隠せない祐樹に同意しようとする龍平だが、途中で考え直す。


「……じゃあ俺達も使える可能性があるってことだろ?」


「多分な。……つーか、使えるようになんなきゃ、勝てねぇかもな」


 彼等は理解していた。

 補助魔術だけでは目の前の(バズ)を倒せない事を。

 少なくとも、同じ高みまで登らなければならない事を感じ取っていた。


「でも今はまだ何も覚えてないぞ?」


 祐樹がネガティブな事を言うが、それを聞いた龍平は自信満々に笑って言う。


「んなもん気合で何とかなんだろ。……なぁ”勇者”?」


 龍平の言葉に、祐樹は一瞬眼を見開くが、直にフッと肩の力を抜き、笑い返す。


「……あぁ、そうだな。俺達は”勇者”なんだ。それ位、やってみせてやらないとな」


 二人は頷き合うと、目の前で笑うバズを睨み付けた。




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