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七話 暗殺者の日常

若干下ネタ入りまーす。

苦手な方はお気をつけて下さいませ。

「情報が欲しいんだ」


 暁の言葉に、俺は首を傾げた。

 (こいつ)はこう見えても一応ギルドのマスターで、ギルドのマスタークラス以上の権限を持ち、その力量とカリスマからギルド全体を取りまとめる事もあるのだ。

 その名と逸話は王国どころか大陸、いや世界中に轟いている。

 それ程の実力者なのである。

 そんな彼女が知らない、知ることが出来ない情報とはつまり、今俺も部下達に集めさせているモノなのだろう。


「……戦争の事?」


「あぁ。そうだ。お前なら何か知っているかと思ってな」


 ……余り俺を便利屋みたく使うのはやめてくれと、声を大にして言いたい。

 まぁこの身体ではそれは無理なんだが……。


「私も色々調べているんだが、()()()()()()()()()()がわからないんだ」


「……今調べている。少し、待って」


「……ふむ。そうか」


 俺の返答に、暁は呆気無く諦める。

 男以上に男らしく、またあっけらかんとした奴だ。

 本当に女だったのか、時々怪しくなるくらいである。


「……あと数日位で情報は集まると思う。集会で集まった時に言うから」


 暁にそう言って、俺は残ったパンケーキを放りこんだ。






「……ご馳走様。ハルキ、また今度ね」


 俺は手を合わせ、金をハルキに預けて席を立つ。

 隣で座っていた暁も、俺に伴って席を立った。

 其の儘、俺は暁を連れて外へ出る為に出口へ向かう。

 その途中、入れ替わるように入って来た仲良さそうに喋る女性二人組の横を通り抜ける際、その内の一人から周囲に隠されるように差し出された紙をスッと受け取って外へ出た。

 そして人混みに紛れる様にして暁と二人で歩く。


 その道すがら、暁が口を開いた。


「先程の女性達は知り合いか?」


「……うん。部下」


 暁の言葉に対応しながらも、俺は紙を流し読みしていた。

 そしてすぐに読み終わる。


「……成程」


「……何が書いてある? 私の知りたい事か?」


 暁の言葉に俺は首を横に振って否定する。


「……違う。……依頼」


 紙には暗殺の目標(ターゲット)の情報とその内容が書かれていた。






 月明かりの眩しい夜、俺はとある貴族の屋敷へと潜入していた。

 依頼主は同じ王国貴族。

 勿論、だからと言って簡単に依頼を受ける訳ではない。

 ”梟”による審査によって受けるかどうかが決まるのだ。

 俺の場合は受けるかどうかが()()()で決められる。

 俺が断れば再調査の上、他に回される。

 特に、貴族や王族等の上位階級の人間は殺してしまえば俺達自身の生活に影響――例えば商業への影響や戦争、派閥争いによる庶民への被害等だ――が出る場合もある為、より綿密に調査する。

 俺だって好き好んで殺す訳じゃない。

 殺し屋(おれ)には殺し屋(おれ)の誇り……って程じゃないが、弁えてる事はあるのだ。


 俺が着ているのは黒尽くめの身体にぴったりとしたタイプの服だ。

 それにマフラーやら腰布やらをつけている。

 なるべく肌を外に出さないように、顔以外に肌はでていない。


 俺は【気配遮断】のスキルを使用し、同時に【透過】と【気配察知】も発動して人のいる場所を把握しながら進んでいく。

 流石、王都近郊に屋敷を構える家柄だけあって、近衛の兵や従者も多い。

 人の眼が多いと厄介だ。

 だから先ずは()を潰す。


 俺はスルリと当主の部屋に潜入しようとして……


「………」


 思わず動きを止めてしまった。

 漏れ出す荒い息、そして布の擦れる音。

 ……つまりは()()をなさっていた訳だ。

 おーおー、周囲を警戒もしてねぇし、当たり前だけど護衛もついていない。

 まぁ()()()()()()()がなければそんなことしないだろうけど……。

 これなら楽勝だ。

 俺は音も気配もなく、後ろから忍び寄って、女を組み敷いている男を――


「……【蜂は二度(アナフィラキシー)刺す(・スタブ)】」


「……ゴッ!」


「――きゃっ!!」


 はい、サクッとね。


 レジェンドアサシンの習得するスキル【蜂は二度刺す】を使用して心臓部分を突き刺す。

蜂は二度(アナフィラキシー)刺す(・スタブ)】は名前の通り、蜂をモチーフにしたスキルで、相手を二度、武器で刺し、毒を流し込むという簡単なスキルだ。

 毒を流し込むスキルなのだが、その毒性は変化出来、麻痺程度から即死まで自由自在に変化させることが出来る。

 本来ならば二回目までに『溜め』が必要なのだが、最高まで高めれば一瞬の内に二度刺すことが可能である。


 ……自分で言っててあれだけど、スキルを使う時に技名を言わないと発動しないのってどうにかならんのか?

 恥ずかしくてしょうがない。


 ついでに男が死んだ為に倒れて下敷きとなっている女も顔にナイフを突き立てて殺す。

 そりゃ、逃げられないよね。

 ()()()()()んだもの……おっと、下ネタだな。自重自重。


 それにしても『情事の最中に殺された』なんて間抜けにもほどがある。

 見つけた奴はさぞ困惑するに違いない。

 現代社会であれば、さぞ笑いものになったろう。

 まぁ、俺には関係ない事だけど。

 ……南無。


 次に部屋の扉から出て隣の部屋に扉を少しだけ開けて滑り込む。

 ここには主人を守るために詰めている守衛達がいる。

 勿論、隣で起きている情事の音も聞こえているだろう。

 ご愁傷様。

 おぉ、この哀れなる童貞諸君等に運命のお相手を!

 なぁんて……これから死ぬんだけどね?


「……ふっ!!」


 息を吐いて手に持ったナイフをクルリと一振り。すると何という事でしょう!

 俺の手には黒く塗りつぶされたナイフが握れるだけ握られているではありませんか!

 それを周囲に乱雑に撒き散らす。

 守衛達が対応しようとするけど遅い。


「……くっ!!」


「……ぐ!!」


 ただ小型のナイフが刺さっただけなのに次々と倒れていく守衛達。

 このナイフには致死性の高い毒が塗られている。

 少しでも刺されば即死である。


「……次」


 俺は部屋を出て、次の場所へと向かった。






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