表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/111

七十二話 ”勇者”旅立つ

毎日投稿してますが、金曜日に投稿できるか怪しくなってきた……。

取り敢えず書き溜めて投稿できるように頑張ります。

 ヴァイアブール国王城王座の間。


「よくぞ来てくれた”勇者”達よ」


 堂々とした態度で王座に座っていた国王タックス・ヴァイアブールの前に祐樹達四人が立っている。


「……其方達は十分力を付けた。最早我が国に其方等に敵う者は無い。汝等に命令を下そう。……勇者達よ、この世に蔓延る悪を討ち、真の正義を、我が国の威信を、其方等の『正しさ』を世界中の者共に見せよ!」


「「「「――はい!!!」」」」


 素直に、元気に返事をする四人に、タックスはにっこりと柔和に笑いかけると、


「外に案内役が待っている。彼にこの世界の様々な情報を与えておる。其方等が討伐すべき悪人達の情報もな。……では、行ってまいれ」


 四人は頭を下げると、部屋を出て行った。

 天気は雲一つない晴れ。

 優しい光が、彼等を祝福しているような光景だった。





 外に出た四人は、城の門で立っている背の高い男が此方に向けて頭を下げるのを見つけた。

 彼が王の言っていた案内役であると瞬時に理解し、駆け寄る。

 どこか飄々とした雰囲気を纏った優男が、ニコリと笑い四人に頭を下げた。


「これはこれは”勇者”の皆様方。私の名はアァル・ユゥ・ワィオ。皆様の案内を仰せ付かった者です」


 四人を代表し、祐樹が話し掛ける。


「此方こそ宜しくお願いします。お……私は祐樹。隣から龍平、瑞姫、由梨花です」


 後ろで事の運びを見守っていた三人ももう一度頭を下げる。


「い、いやいや…… ”勇者”様が簡単に頭を下げますな! 言葉遣いもどうか気負いなく。皆様、余り堅苦しいのには慣れていない様子、どうか同輩、(ともがら)と話す様にお話下されば」


 慌てて頭を下げるアァル。

 その腰の低さに、信頼出来そうだと判断し、祐樹達は言葉遣いを直す。


「じゃ、案内の方お願いします」


「はい。お任せを。先ずは近くの城下街トォナオに向かいます。宜しいですか?」


 アァルの言葉に、四人は頷き、その後ろを付いていった。






 歩いて何時間経っただろうか、日も暮れる頃にトォナオに到着した。

 アァルは祐樹達が付いてきているか確かめながらもどんどん歩いていく。


「何で王城と城下街が離れているんだ……?」


 それを追いかけながらの祐樹の質問に、アァルが振り返り答えた。


「王城には多くの禁術が書かれた書物が眠っていますし、それに戦の際、小高い丘の上にある方が守り易い、と言う理由の様ですよ。……さて、到着致しました。今宵泊まって頂く『赤鶏の卵亭』です」


 祐樹達が辿り着いたのはそれなりに立派そうな構えの宿屋だった。


「……へぇ、ここが」


「なんか高価そうね」


「……何か変に緊張してきた」


「う~ん、凄い立派ねぇ~」


 四人が呆然と見上げているのをアァルが苦笑いしながら見守る。

 だが、何時までもそうしている訳にもいかず、


「既に部屋はとってあります。さ、入りましょう」


 四人は男女別に二人部屋に分かれ、アァルは一人別の部屋に宿泊することになっていた。


 男子部屋では、


「しっかし、元の世界には帰れるのかねぇ?」


「さぁな。王様が調べてくれるらしいけど……」


 男子二人は既にベッドに横たわりリラックスしていた。

 湯浴みや夕餉も済ませ、後は寝るだけだ。

 一方女子部屋では、


「……あのアァルって人、信用出来ますかね?」


「う~ん……信頼は出来ると思うけれど、瑞姫ちゃんはそうは思わないのね?」


「……あ、いえ、祐……アイツ等が呑気なので、『疑う』事が私の役目なんです」


 恥ずかしそうに答える瑞姫に柔らかく微笑みかける由梨花。


「フフッ、そうね~。私達がしっかりしないと、ね」


「はい!」


 その後夜遅くまで二人の会話は続いたのだった。





 深夜、『赤鶏(せきけい)の卵亭』の受付カウンターにアァルの姿があった。

 何時ものにこやかな笑みを浮かべ、受付にいた女性に話しかける。


「……どうも、こんばんは」


「えぇ、こんばんは」


 受付の女性もにこやかに答える。


「……すいません、私の部屋はどの部屋でしたっけね?」


「二階、廊下の突き当り。……一番奥ですよ」


「あぁ、有難う御座います。では、これで」


 アァルは階段を歩き、二階へと上がる。

 女性の言っていた通りに二階の廊下の突き当りまで歩くと、周囲に誰もいない事を確認し、壁の一ヵ所を触る。

 何の音もたてずに、壁が回転し、奥への通路が現れた。

 そこに何の躊躇も無くアァルは踏み込んでいき、奥にあった扉を開く。

 扉を開けた中には机とベッドがあるだけの小さな部屋があった。

 その部屋には見る限りは誰もいない。


「……遅れて申し訳御座いません」


 しかし、アァルは誰もいない筈なのだが謝った。

 だが、


「……別に良い。……”勇者”の案内、苦労」


 誰もいない筈の部屋に突如声が響く。

 それと同時にベッドの淵が揺らめき始め、何時の間にかそこに腰掛けている夜が姿を現していた。


「……”鴉”所属、アーフェド。ご報告に参りました」


 このアァルと名乗っていた男、正体はアーフェドと言い、”魔女の夜”の一員である。


「……うん。報告を」


「はっ! ”勇者”達のこれからの動向ですが、先ずはこの先の山に潜む盗賊を討伐するとの事。現在、既に引き継ぎは終わっており、これよりは”蛇”所属のヴァンディ・ローンズが”アァル”としてタックスと”勇者”の取り次ぎ、及び案内をします。私は”鴉”本隊と合流させて頂きます」


 そう。

 アァルなどと言う人物はこの世に存在しない。

 ”魔女の夜”が国王からヴァイアブールの動向の情報を得、”勇者”と接触する為に生み出した共通の『皮』である。


「……苦労。本体と合流、サポートを宜しく」


「了解致しました」


 にこやかな笑みを浮かべた儘、アーフェドはアッという間に姿を消した。

 これから本体に合流し、夜や”アァル”の補助をするのだ。

 既に”魔女の夜”は全体を動かし、タックスの計画を頓挫させようと動き出しているのである。


「……うん、寝よ」


 夜は一度伸びをすると、其の儘ベッドに潜り込み、寝始めた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ