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六十八話 やって来た異世界勇者

最終章です!

出来るだけ一日一話投稿で駆け抜けますよ~!

「祐樹ー。一緒に帰ろ?」


声を掛けられ、帰り支度をしていた須藤祐樹(すどうゆうき)は顔を上げた。

映ったのは二人の少女と一人の少年だった。

三人とも既に帰り支度は終わっており、祐樹を待っていた。


「あ、悪い! すぐに準備する」


机の中に仕舞ってあった教科書を鞄の中に急いで入れ、鞄を閉めて立ち上がる。


「じゃ、行こうか」


祐樹を先頭に、四人は仲良さそうに歩き始めた。


「そう言えばさ。最近不慮の事故が多いわよねー」


そう言って空を見上げたのは祐樹の幼馴染でもある少女中原瑞姫(なかはらみずき)だ。

明るめの髪をツーサイドアップに結わえた快活な雰囲気を持つ。


「あの化学工場が大規模な爆発を起こしたって話? 近隣の住居も巻き込まれて死傷者が沢山出たんでしょ?」


色素の薄いウェーブ掛かった髪とおっとりした雰囲気の少女周防由梨花(すおうゆりか)が眉を下げて答える。


「ま、大丈夫だと思うぜ中原、周防先輩。滅多にそんな事は起きないって。な、祐樹?」


祐樹の親友でありクラスメートの渡辺龍平(わたなべりゅうへい)が安心させる様にそう言う。

それに対して祐樹も頷く。

少女達は祐樹が頷いたのを見て安心したのか、互いに楽しそうに話し始めた。

祐樹も、龍平と共に二人共通の趣味であり、最近ハマっているVRMMOの話をしていた。

だが、


「――うおっ!?」


「―—わっ!」


「――きゃっ!」


「――な、何だ!?」


突如、足元が光り始める。

そして円型の紋様が現れた。

それはまるで祐樹や龍平のハマっているゲームの――


「……魔法陣?」


祐樹がぽつりと呟く。

だが、逃げることは出来ず、彼等は魔法陣と共に消え去った。








「……っ!」


祐樹達が眼を覚ますと、そこは見たことも無い場所だった。

ヨーロッパのお城の広間のような、旅番組やゲームでしか見た事の無い場所に彼等はいた。

近くを見回すと、眠っている様に倒れている友人達がいた。


「瑞姫! 由梨姉(ゆりねぇ)! 龍平!」


慌てて身体を揺らすが、どうやら気絶していただけのようで、三人共直に眼を覚まし、起き上がる。


「成功しましたぞ陛下!」


「うむ。流石我が一族に伝わる秘術だ」


と、少し離れた処から声が聞こえ、祐樹は其方の方に眼を向ける。

そこには興奮した様な様子の二人の男がいた。

二人の男は祐樹の視線に気付くと、柔和な笑みを浮かべ、話しかけて来た。


「眼が覚めたか異界より来たりし勇者達よ」


「……貴方方は?」


四人を代表し、祐樹が聞く。

すると、男の一人が頭を下げる。


「私の名はハンス・ウードリッヒ。此方におられるのはこの国、ヴァイアブールの国主、タックス・ヴァイアブール国王陛下。少々混乱していると思われますが、危害を加えるつもりは一切ありません。ご安心下さい」


ハンスと名乗った男は丁寧な口調でそう言うと、もう一度頭を下げた。


「貴方方は元いた世界より、この世界に召喚されたのです。……魔法陣はお気づきでしたか?」


そう言われて祐樹は数分前の事を思い出す。

光り輝く魔法陣が足元に現れたのだ。


「はい。……じゃあここは」


「えぇ、貴方方からすれば異世界でしょう」


その言葉に、四人の反応は様々だった。

冷静に考えを纏める様に顎に手を置く祐樹、心配そうに祐樹を見る瑞姫、不安そうに周囲を見回す由梨花、まるで小説の様な状況に興奮を抑え切れていない龍平。

ただ四人共異世界に召喚されたことは何となく理解していた。

それを理解し、似た様な状況に陥っているゲームや漫画、小説を嗜んだこともある祐樹は端的に聞いた。


「それで? 僕達がここに呼ばれたのは何故なんですか?」


「おぉ、理解しているなら話が早い」


嬉々とした表情を浮かべる二人の男の内、陛下と呼ばれたタックスと言う男が口を開いた。


「この世界では今あちこちで戦が起こっている。それを止めて欲しいのだ。この国の為、この世界の為、どうか力を貸してはくれまいか、異世界の勇者達よ」


そう沈痛な表情を浮かべて言う。

それを見て、正義感の強い祐樹は他の三人に意見を求める事無く答えた。


「わかりました。事が終わったら元の世界に帰して頂けるのでしたらお受けします」


祐樹の返答に満足そうに頷いたタックスは、


「今は返す方法の目星は無いが、必ず返すと約束しよう」


祐樹の眼を見てそう言った。





祐樹達を彼等専用に用意させた部屋に案内する様に指示し、彼等がいなくなった後の部屋でタックスとハンスが小さな声で会話をしていた。


「どうやら上手くいったようだな」


「はい。これで彼等が上手くやってくれさえすれば他国に対して主導権を得る事が出来ます。更に言えば国を吸収する事も出来ましょう」


「うむ。……ロド派の連中もアドランドの阿呆も失敗したが、此度こそが本命。必ずやこの国を大きく、豊かにしてみせようぞ」


タックスはそう言って意地の悪い笑みを浮かべた。





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これからもどうぞ読んで下さいませ。

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