六十三話 ”神殺し”の全力
ブックマーク300突破、本当に有難う御座います!
本当に嬉しく思います!
前章よりも更に本気を出した暁の蹂躙劇をご覧下さい。
PS、暁の技名を変えました。
同時にタイトルを変えてみました。
こんなで大丈夫なのか不安ですが……。
マグニフィカ及びアドランド同盟軍エドノア陣営で、べリオスとエドノアが目の前に整列している兵士達の前で並び立っていた。
べリオスが声を張り上げる。
「勇敢なる者達よ! 正義は我等にある! アドランドの同輩よ、諸君等の国を取り戻すための戦だ! 死力を振り絞り、戦え!」
オオオオオオォォォォォォォ!!
男達の雄叫びが空気をビリビリと揺らす。
べリオスはエドノアの肩を組み、何か言うように促す。
「マグニフィカの輩よ、此度は内輪揉めに巻き込んで済まない! だが、我等の為にその力を貸してくれ! アドランドの臣民よ! 私の元に集まってくれたこと、感謝する。愚かな弟を止め、再び我が国に平和と安寧を取り戻すのだ! ……いざ、開戦だ!」
オオオオオオオオオオォォォォォォォォォォッ!!!
先程よりも大きな雄叫びが空に響く。
それは王弟アドノア・アドランド率いるアドランド国軍にも聞こえていた。
「――諸君、あの声など所詮は有象無象の囀りだ!]
アドノア・アドランドが演説をする中、兵士達が小さな声で会話をする。
「……なぁ、これって俺達が反逆者ってことにはならないよな?」
「……さぁ? でもよヒューズ様やザッツリュー様、アズラン様まで向こうについたって話じゃねぇか」
「マジかよ。……けどよ、幾ら命令だからって途中の村とか襲っちまってるし、もう引き返せねえだろ」
「あぁ、やるしかねぇよな」
兵士達がそう納得し合い、アドノアの方を向くと、演説は終わる直前となっていた。
「さぁ、我等が力をこの世に示す為、目の前の雑兵共を嬲り殺せ! 征服せよ! ――出陣!」
そして、戦争が始まる。
エドノア軍の先頭に、たった一人立つ暁は、静かに眼を瞑っていた。
その背には愛用の大剣、そして腰には太刀が吊り下げられている。
その眼と鼻の先には既にアドノア軍が迫って来ていた。
「魔術師部隊! 術式展開、攻撃開始!」
魔術師部隊を率いる部隊長が叫ぶと同時に魔術師達が術を展開する。
「うおぉぉぉぉっ!!」
一人の兵士が暁目がけて剣を振り上げ――
「――フッ!!」
――一閃。
居合の要領で鞘から放たれた太刀が、兵士の身体を音も無く切断した。
続けて後方に離れている魔術師達の放つ術が降り注ぐ。
直ぐ近くに降り注ぐ魔術を気にした様子も無く、暁は太刀を捨て、右手で大剣を抜く。
「最初から遠慮なく全力で以ってやらせて貰うぞ」
暁は空いた左手を空間に突っ込む。
そこから器用に計六つの武器を取り出し、それを目の前に突き刺していく。
剣、刀、斧、槌、矛、そして三鈷杵だ。
そして、その内、剣を左手に持ち、
――Oṃ・śumbha・niśumbha・hūṃ・vajra・hūṃ・phaṭ――
静かに、波立たぬ水面の如く、詠唱する。
「……火生三昧に住まう天を護法せし明王よ。煩悩、欲望を打ち払い、慈悲の怒りを以て、我を阻む三毒を、悪鬼、邪鬼の如く踏み倒さん。汝を弑逆せし我に、力を貸し給え――」
そして左手に持った剣を上に投げる。
その剣は徐々に、その形を大きく変える。
「顕現せよ”三界の勝利者”。――【神功召来・降三世】」
暁の後ろに徐々に姿を現したそれが剣を掴む。
顕現する憤怒の表情を浮かべた四面八臂の明王が、造魔の時とは違い、今度はその全身を晒す。
暁は目の前に刺した武器を放り投げると、剣と同じように巨大化し、明王がそれを掴む。
その両足には苦痛に顔を歪ませ、暴れる男女がそれぞれ鎖で括りつけられており、それを引き摺る様にして一歩、歩を進める。
「さぁ、始めようか。……存分に暴れるとしよう」
王の住まう城の如き巨体が、今度は質量を伴い顕現したのだ。
一歩踏み出しただけで、その足元にいた何十人と言う人間が踏み潰される。
まさに、敵であるアドノア軍にとっては絶望以外の何物でもない。
【神功召来】は暁の持つスキル、その中でも最上位に位置するスキルの一つだ。
そう、あくまでも最上位の内の一つである。
「う、うわあああああああぁぁぁぁぁぁ!!」
「な、う、嘘だ! こんな……こ、うわあああああああ!」
「こんな化物と戦うなんて聞いてない! お、俺は逃げるぞ!」
散らすように逃げて行く兵士達を無視し、暁が剣を振り下ろす。
それと同時に、明王の振り下ろした剣によって大地が割れる。
たった一撃で、何十という人間の命が消えてしまう。
明王は振り下ろした剣を軽々と持ち上げ、再び構えた。
明王と同じ格好で大剣を構えた暁が叫ぶ。
「さぁ、貴様等の覚悟、私に見せて見ろ!」
一方的な殺戮劇が始まろうとしていた。