六十二話 開戦
今回は短めです。
毎日投稿できるようになりたいなぁ……。
その後数日の内にヴァネッサ達の仕事は終わった。
それによって得た情報は、
・王弟の軍は物資……特に食料の不足によって士気が低い。
・騎士や弓兵を中心とした部隊である。
・王弟軍とエドノア軍の兵数差は殆ど無い。
・一部の民達を兵士として無理矢理徴兵した。
以上だ。
まぁ仮にもクーデターを成功させた割にはお粗末なモノである。
物資が足りないのは俺等のせいだからまぁ仕方ないけど、今更魔術師や魔道具の無い部隊編成なんて時代遅れにも程がある。
辺境伯の軍みたいに一人一人が少なくともCクラスの冒険者並みの力量を持ってるならマシかもしれないけど、調べたらそんなに強い兵士が王弟側にはいない。
国民頼みの綱のヒューズ家もエドノア王側に付いたしな。
王弟側も辺境伯やヒューズ家、ザッツリュー家と言う武闘派の貴族を引き抜こうと画策しているが、彼等は断っている状況だ。
まぁ今の王国の惨状を見れば王弟側に付こうとは思わないだろう。
本当に心の底から貴族だと自覚してるなら、だが。
しかし、例え貴族達が寝返るのだとしても、王弟が持つ軍は国王直下の軍だ。
軍元帥がいなかろうが、例えクーデターで即位した王だろうが、国王直下の軍ともなれば規模が違う。
だから総数で言えばアドランド王の率いる軍の方が数は少ない。
まぁ暁がいれば数は関係ないだろう。
数日後、アドランド国現国王である元王弟、アドノア・アドランドがマグニフィカへの侵略を宣言した。
アドノア王は直にマグニフィカへの侵攻を開始した。
あろうことかアドノア軍は侵攻上にある村を襲い、物資を略奪するという暴挙に出た。
戦場はマグニフィカにあるエーデン広原だ。
だが、そちらは暁に任せておけば良い。
俺が調べるべきは”黒死蝶”ナハト・レイヴンホークを名乗るアレンだ。
その動きはそれなりに統制されているのか、部下が調べても情報が余り入ってこなかった。
どうやらアドノア王の近辺にいるらしい、とは聞いたが。
つまり簡単に言ってしまえば、戦に参加すれば嫌でも戦う羽目になるってことだ。
「さて、もう数日後には戦が始まる。……準備は出来ているな?」
エーデン広原近くに本陣を構えたエドノアを大将としたアドランド元王軍の軍議場には、べリオス、エドノア、ホランド、ザッツリュー、アズラン、ヒューズそして暁と言う主要メンバーが集まっていた。
「……無論だ。だが、油断は出来ん」
「えぇ。……数としては王弟率いる王直下の軍の方が多いですからな」
べリオスの言葉に、エドノアとホランドが答える。
「そうだ。なのでアドランドの方々には両翼を任せたい」
「……それでは被害が大きくなる中央を任せて良いと? こちらは有難いですが……」
実質的にアドランド軍を指揮するザッツリューの質問にべリオスは頷く。
「俺が今回引き連れてきたのは魔術師を中心にした部隊だ。接近戦では不利ってのはある……が、まぁ問題は無い。……じゃ、最後に一言頼むぜ大将」
そう言うと、べリオスはエドノアに目線を送る。
エドノアは頷き、席を立つ。
そして全員の顔を見回し、
「では皆、愚かな弟を止める為に力を貸してくれ。宜しく頼む!」
「「「――はっ!!」」」
臣下達が一斉に頭を下げる。
それを見て、べリオスはパンと手を叩き、
「じゃ、とっとと仕度しようぜ」
そう言って二ヤリと笑ったのだった。
アドランド勢が出て行った軍議場に、べリオスと暁だけ残っていた。
べリオスはふぅ、と息を吐く。
次期国王として既に政務を熟している自分が戦争に参加する事は出来ないが、、
「……頼みの綱はお前だ暁。頼むぜ?」
「無論だ」
気負いなく答える暁の表情を見て、大丈夫だとべリオスは確信する。
目の前にいる彼女は自分より圧倒的な、それこそ世界を壊せるのではないかと思える実力を持っているのだ。
そしてもう一人――
「……べリオス、暁」
この戦場においてもう一人の『最強』が姿を現した。
個人的な戦闘力では劣る夜であるが、表に出る事が出来ない彼女はナハト・レイヴンホークをどうにかするのが今回における仕事である。
べリオスは夜に声を掛ける。
「夜か。……ナハト・レイヴンホークの居場所は掴めたか?」
夜はナハトがどこにいるのかもう知っているのだろう。
迷いなく頷く。
「……うん」
「なら、そっちは任せて良いんだな?」
夜はべリオスの顔をジッと見て、
「……うん」
そうしっかりと頷いた。