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五十七話 決別

ちょっと展開無理矢理すぎたかな……?

ま、いいや。

 ザドキアの死後、数日間は皆ザドキアの死を振り払う様に、アレンをトップとした新体制への移行を進めていた。

 だが、ザドキアの死によって、そして後継者をアレンに指名したことによって生まれた『綻び』は、治る事など無かった。

 寧ろ、自分と自分の部下を重用し、幹部達を解任し、そこに自分の部下を置き始めたアレンに、周囲の不満は爆発寸前だった。

 そして、終わりの時は訪れる。


「……アレン! テメェにはもう付いていけねぇよ!」


「俺もだ」


 全員の集まる中、とうとうその不満が爆発する。

 一人、また一人と怒りの声を上げる部下達を目の前にしても、アレンの表情は笑った儘だ。

 そして周囲を一瞥すると、


「出て行きたいなら出て行けば良い。もうここは俺の団だ。……俺に従わない奴に、居場所はねぇよ」


 そう言い放った。

 そのアレンに最初に怒ったのは――


「……じゃあ、私は出てく」


 夜であった。

 静かな、だが確かに怒りの感情の籠った声音だった。


「……ザドキアの言葉の意味、理解してない。……お前はずっと、間違った儘、生きて行けば良い。……レイヴンホークの名を返す」


 そう言って、部屋を出て行った。

 アレンはその背を見て笑った。


「へ、へへへ! アイツ、馬鹿だ。行くところなんてありゃしねぇってのに。……俺に従えば、ここにいる事が出来たってのに」


 その姿を見て、部下達の殆どが彼を見限った。

 長になれば変わると思っていた。

 ザドキアから言われた言葉の意味を考え、性根を入れ替えて頑張って行くのだと、そう思っていた。

 だが、甘かったのだ。

 (アレン)は何があろうと変わらない。


「では、私もここを出て行きます」


 そう言ったのはバージェットだった。


「……自分も」


 それに続いて、実働部隊の隊長であったザイールもそれに賛同し、バージェットに続いて部屋を出て行った。

 それに続くように、多くの部下達も部屋を去る。

 その場に残ったのはバージェットの部下である二十人だけ。

 部屋を去った人数はその三倍もいた。

 それを見て、


「へ、へへへ……馬鹿だよ。お前等全員、馬鹿ばっかだ。ここが、居場所だ。俺達の……居場所だってのに。何で……なんでだよ、おい」


 アレンの乾いた笑い声は、誰の心にも響かなかった。






「で? それからどうなったんだ?」


 ”魔女の夜(ヘクセンナハト)”の本部の会議室で、当時からのメンバーであったオリヴィアやバージェットやザイールから説明を受けていた幹部達を代表して、ゴーシュが聞いた。

 当事者である夜は出かけており、会議に来れないとの事で、余ってしまった時間を使って昔話をしていたのだ。

 因みにゼイもいない。


「どうなったって……夜様が団を抜けた者達を集めて、直後に再開した暁さん達の手を借りて、今の”魔女の夜”の基盤を造ったんです」


 それに答えたオリヴィアは、そこまで話すと手に持っていたカップに口を付け、紅茶を飲む。


「いや、良くもまぁ敵だったのに手を借りれたなーと」


「そこは詳しく聞いてませんが、どうやら前ギルドマスターのフルヴァルトの吸い込んでしまった毒を解毒し、身体の治療も行った事で敵対したことは許されたと仰ってましたよ。その後に一発殴られたと文句も言ってましたが」


 バージェットの発言に、その場にいた者達が皆揃って苦笑いを浮かべる。

 普段理知的で、冷静で、優しく、外見に相応しくない達観さを見せ、だが何処か幼い一面もある主の事を、皆が慕っていた。

 ”魔女の夜”の団員や協力者、その多くが『名も無き傭兵団』を脱退した者を含めた行く当てのない人間や、落ちぶれた冒険者達、ほぼ破産状態だった商会だ。

 それを夜が行く当てのない者を受け入れ、冒険者達に情報や武器、依頼を与え、破産状態だった商会はあの手この手で立て直してくれたのだ。

 だからこその高い忠誠心である。


「でもよ、そのアレン……だっけ? なんでお頭の名前やら異名やらを使ってんだ?」


 アレンが襲撃してきた際、名乗っていたのはナハト・レイヴンホークという名前と、”黒死蝶”という団名。

 ふと思った疑問を、ゴーシュは素直に口にした。


「……詳しくは知らんが、何処をどう見ても夜様を意識してるとしか思えんが」


 ”渡り鳥”の長、ラヴィオ・オルファの発言に、バージェットやオリヴィア達アレンを知る者も同意する様に頷く。


「夜様が後継者だとザドキアさんに説明されて、一番腹を立てていたのはアレンでしたし……ですが、アレンも随分狡猾な方法を覚えましたね」


「……同意する」


 バージェットの発言に、ザイールが言葉少なに賛同した。

 静かになった場に、オリヴィアの凛とした声が響く。


「……既に先手は打ってあります。間も無く様々なことが動き出すでしょう。……後は機が熟すのを待つのみ、ですね」


 その言葉に、幹部達は一斉に頷いたのだった。





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