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四十七話 相手のターン

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お願いします。

 翌日、太陽が真上に昇る少し前にアドランド王が商会を訪ねて来た。

 勿論、人目につかない裏口に案内した。

 二人を応接室に通し、夜も隠し通路に隠れる。

 二人が椅子に座り、用意したお茶で一息吐くのを待ってからバージェットが話を切り出した。


「……ようこそアドランド王。”魔女の夜(ヘクセンナハト)”へ」


 営業用のにこやかな、胡散臭さを感じさせない爽やかな笑みを浮かべるバージェット。

 対して、アドランド王エドノアは睨み付けるが如き視線だった。

 それを見て、ニコリと笑い、


「陛下ともなれば()()()『血で汚れた場』など通常なら近寄る事もないでしょうね?」


「「―—っ!」」


 そう毒づいたバージェットの言葉に意表を突かれたのか、肩をビクリと震わせる二人。

 それを気にせず、バージェットは切り出した。


「では、アドランド王。貴方の口から、全てを話して頂きましょうか」


「…………」


 バージェットの質問に、長い間眼を閉じていたエドノアは、やがてポツリポツリと話し始めた。


「……自惚れている訳ではないが、私は昔から王になる事が決まっていた。だからと言って努力を怠ったこともないし、傲慢になった事も無い。……国王になってからも私は国民を愛した。国民にも愛されていたと思う。痩せこけた土地を国税を使い耕し、水害のあった地域の税を免除して支援した。……だが、全てから恨みを買わぬなど無理な事。……私の場合、それが弟だった」


 王弟――現国王を名乗っているエドノアの弟、エドヴェントは両親から愛され、貴族達には持ち上げられ、傲慢で我儘な性格に育ってしまったのだと言う。

 エドノアはそんな弟を王都から離れた土地で暮らさせていた。

 だが、エドヴェントは既に手遅れだった。

 懇意にしていた貴族から謀略を学び、更には裏の人間とも接触しており、それを使いクーデターを起こしたのだと言う。

 それも国民や貴族にすら悟らせない程の迅速さで。

 あっと言う間に王宮は制圧され、エドノアは命辛々ホランドと共に逃げて来たのだ。

 国ではエドノアは病に伏した、と説明されているようだ。


「……だが、又聞きしたところによると弟は贅沢を尽くして国民には重税を敷いているらしい。更には意見した貴族の首を刎ねたとも聞いた。王として見過ごせるモノではない」


 熱く語るエドノアを見て、バージェットは頷く。


「えぇ。聞き及んでおりますよ。国からは早くも民が逃げ出し、商人も近づかない状況だとか」


 国民は兎も角、商人が近寄らないのは夜達のせいだ。

 アドランドにある商会を買い取ったり、裏の商人であれば叩いて従わせるなどして、最低限の物流のみを行っている。

 民が飢えない程度にだが。

 そうすれば、王宮へ集められる税も少なくなり、やがて国政が立ち行かなくなる。

 エドヴェントはそれに気づくだろう。

 単なるバカではないだろうし。

 だが、それで良い。

 これが”魔女の夜(ヘクセンナハト)”の先制攻撃である。

 つまり、既に夜達は依頼を受ける事を決めているのだ。


「あぁ。……だからこそ、お前達の噂を聞いてやってきたのだ」


 ……ちょっと待て。

 噂を聞いた?

 夜は慌ててバージェットと会話をする。


「……(……バージェット、噂の出を聞いて)」


「……(畏まりました)」


 突然話しかけたにも関わらず、バージェットはそれを顔に出すことなく、答えた。

 そして、二人に問う。


「……その噂は何処で?」


「ん? ……ホランドからだが。お前はどうだ?」


「そうですね。……?」


 思い出し、何故か思い出せないのか首を傾げるホランド。

 その瞬間、夜は隠し通路から飛び出し、ホランドの意識を刈り取った。


「――はっ!?」


 ガタンと音を立てて倒れたホランド。

 隣にいた臣下が急に倒れてしまったエドノアは驚いて席を立つ。

 エドノアは夜の姿に何を思ったのか、呆然としていた。

 夜はそれを無視してバージェットの方を向く。


「……バージェット。……魔術使える誰か、呼んで」


「……オリヴィアを隣室に待機させております。連れてきましょう」


 バージェットはそう言って部屋を出て行った。

 夜がホランドを気絶させたのは理由がある。

 ホランドには微弱な魔力反応があった。

 しかし、魔術を操る人間なら、全員が多少なりの魔力を持っている。

 だが、彼の場合、()()()()()()()()()があった。

 それも悪質な。

 この魔力の質は恐らく洗脳の類の術だろう。

 それをホランドから感じた。

 つまりホランドがここを知っていたのは『ここが”魔女の夜”の本部である事を知っている誰かがホランドの意識下に刷り込んだ』と言う事だ。


 夜はすぐさまホランドに向けて魔術を使用する。

 使うのは【魔術破壊(スペルブレイク)】。

 洗脳魔術や身体強化を含め、身体に影響を与える魔術を無効化するモノだ。


「何をしている!」


 そうエドノアに怒鳴られるが、夜に気にする時間などない。


「オリヴィアを連れてきました」


 部屋に入って来た二人に、


「……警戒態勢」


 夜がそう命令する。

 それを聞いた瞬間、バージェットとオリヴィアの雰囲気が変わった。


「……ここに()()された」


「「――了解!」」


 言葉の意味を理解した二人は直に動き出す為に退室していった。


「……此処にいる」


 夜もそう言い放ち、部屋を退室していった。


「……今の少女。……誰だ?」


 応接室には、殆ど何も理解していないエドノアが、ポツンと突っ立った儘だった。




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