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四十二話 結末と最期

誤字脱字、言葉の使い間違いがありましたら指摘宜しくお願いします!

「さぁ、もう一撃だ」


 顕現した明王は暁の命令に素直に従い、再び造魔へ剣を振り下ろさんとする。

 しかし、それを造魔が阻もうと掴みかかり、一瞬だけだが動きが止まる。

 だが、


「ごぉぎゃあああああああああああああああああ!」


「いぎぃぃいぃぃぃいぃぃぃいいぃいいいいい!!」


 掴みかかった造魔が、別の右手に握られた斧に斬り裂かれる。

 そして別の造魔ごと、左手に握られた槌に潰される。

 その速度は巨大な体躯からは想像出来ない程に素早い。


「……人なら兎も角、魔物がHP制ではないから楽だな。……それに、最近は書類仕事ばかりでな。少しストレスが溜まっていたんだ。元々書類仕事は苦手な質だしな」


 そう言いながら暁も造魔達を斬り伏せていく。

 引き締まった長身から繰り出される一撃は、明王に負けず劣らず強力だ。

 それに加え、明王の六本の腕から繰り出される武器が造魔達の数を削って行く。

 ゴウッと風切り音を立て、七つの武器から繰り出される円舞は、虐殺劇の如くである。

 そして冒険者達の造魔達を一通り殲滅し終えると、


「「「ぉぎゃあああああああああああああああ!」」」


 赤子や幼児を素体にしたであろう造魔達が暁へと殺到していく。


「さぁ、行け! 我が愛すべき子供達!」


 少し遠くから、グレゴの声が聞こえるが、最早暁には聞こえなかった。


「……子供とはいえ造魔。最早人に害なす魔物だ。私は手加減しないぞ?」


 そう言うが早いか、明王が動き出す。


「――ッ!」


 明王が得物を叩きつける。

 が、


「「「「ぉぎゃああああああああああああああああ!」」」」


「「「ぉアアアアアアアアアアアアアアアアアア」」」


「「「ママ、何処、何処なのおおおおおおおおおおおお!!!」」」


 二足歩行のその造魔達は、俊敏な動きで攻撃を避け、暁へと襲い掛かった。

 そんな状況であっても、未だに暁は冷静だった。


「「「ァア?」」」


「「「ォヴァアアア?」」」


 守られていたのだ。

 地面から突如出現した幾つもの鎖によって。


「【護法天鎖(ごほうてんさ)金鎖甲(きんさこう)】」


 暁の持つスキルの一つ。

 護法の力を持つ鎖を操るスキルだ。

 本来金鎖甲とは鎖で作られた鎧の事を言うが、『ザ・ワールド・オブ・エタニティー』内では鎖を操るスキルとなっていた。


「速度はそれなり。……なら」


 暁の顕現させた明王が、手に持つ武器を構える。

 膨大な魔力が、更に跳ね上がり、造魔達も本能的に恐れたのか、一歩、下がろうとして、


「「「ォギャアアアアアアアアアアアアア!!?」」」


 逃げる事は出来なかった。

 造魔達の足元には、先程の鎖が巻き付いており、幾ら身体を動かしても、触れても、引き千切る事は出来なかった。


「さて、一気に終わらせる事としようか。……【神殺・三世(ザンゼ)】」


 明王が地面に武器を突き刺すと、そこを中心に眩い程の光を発する魔法陣が現れる。

 そこから光が吹き上がると、一瞬にして造魔達を呑み込んだ。

 光が収まると、そこには何もいなかった。

 グレゴ・リベレウスも、いつの間にか姿を消していたのだ。

 しかし、暁は首謀者を簡単に殺してしまう様な馬鹿ではない。


「……逃がしたか」


 明王を消し、武器を収納し、大剣を背に納めた暁は溜息を吐いた。





「なんなのだあれは! ……なんなのだ!」


 暁が造魔と戦っている間に逃げ出したグレゴ・リベレウスは、森の中を逃げていた。


「あの女共がっ! あの女共さえいなければっ! 私はっ……私は!」


 造魔すらも、傷一つなく簡単に蹴散らした女の相手をするなど馬鹿のすることだ。

 だが、これからどうするべきか。

 焦る気持ちの中、グレゴは必死に考える。


 最早造魔は残っておらず、部下も全て造魔に改造してしまった。

 恐らく事は露呈する。

 現教皇にも、何時かは知られるだろう。

 誰も味方はいない。

 誰も――


「い……いや、まだ。まだだ! あいつの……()()()()に会えれば! あそこに行ければ! まだっ! まだ私は終わっていない!」


 ヒヒヒと、引き攣った笑いを浮かべ森の中を駆けて行く。

 木の根に足を引っ掛けて転んでも、草木で肌を切っても、それを気にせず、走って行く。

 月夜に照らされただけの、ほぼ真っ暗闇と言っても良い森の中だ。

 追いかけられる事もないだろう。


「ヒ……ヒヒヒヒヒ! イーッヒッヒイヒイッヒヒヒッヒ!」


 理性が残っているのかと思う程狂うように笑う。

 そして立ち止まり、天を仰ぐ。


「私はまだ死なぬ! ここで死ぬ運命(さだめ)ではないのだ! ……おぉ、神よ! 我を危機よりお救い下さり感激の至り! 必ずや、真の信仰を捧げて御覧入れましょう!」


 そう天に向かって叫んだグレゴは、己の半生を振り返る。


「……あぁ、何と劇的な生涯か! そうだ! 何時か私を題材にした演劇か話を書かせよう! ……ィヒヒ! さて、行くとするか」


 そう言った瞬間、グレゴの首を風が撫でた。

 それが何故か不吉に思え、立ち去ろうとしたグレゴの真後ろから、


「……ダメ」


 そう鈴の音のような、美しくも冷たい、感情の籠っていない声が掛けられた。


「――っ!」


 驚き、後ろを振り返ろうとして、


「――ェ?」


 急に力が入らなくなり、地面に倒れた。


(何が……あったのだ?)


 音も無く、気配も無く、魔力すら感じなかった。

 声を出そうにも出ず、動こうにも動けない。

 視界はぼやけているが、血が流れている訳ではない。

 それどころか外傷もないようだった。


「……お前に劇的な”生”なんてない。悲劇も、喜劇も、復讐劇もない。お前は誰にも知られず、誰にも悲しまれることなく、誰の眼にも触れられる事無く、今ここで……死ね」


 直ぐ近くから、感情の無い声が聞こえる。

 それは紛れもなく、”死の宣告”だった。

 グレゴは薄れていく意識の中、何が起きたのか、何をされたのかを理解しようとする。


「……確かに伝えた」


 グレゴの考えを読んだのか、声の主が訳の分からぬ事を言う。

 だが、「どういう意味だそれは」、そう聞く前に、グレゴ・リベレウスは呆気無く――死んだ。



読んでくださり有難う御座いました。

あと数話は毎日投稿したいと思います。


良く分からない人の為の分かり易い説明コーナー!


降三世

密教の神様で、五大明王(仏の教えをよく聞く人の意味)の一柱。

前話で書いてますが、火生三昧と言う場所で人の欲を焼き、仏を信じない民衆に対して慈悲の怒りで救おうとするヤバいお方。三世とは過去、現在、未来の三つのこと。

違う宗教とはいえ、ヒンドゥー教の、かの有名な主神シヴァと、その妻パールヴァティーを殺し、復活させて降伏させたなんて言われているどころか、絵ではその二神を踏みつけた状態で描かれる。ナニソレコワイ。


金鎖甲

かの戦国武将上杉さんちの謙信君が信仰した毘沙門天が、天女に支えられ、二匹の鬼を従える状態の”兜跋毘沙門天”が着用している鎖で出来た鎧のこと。

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