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三十九話 反撃開始!

「――ふむ。これはまた随分と多いな」


「――そうね、まるで獲物に群がる蟻みたいね」


 その声は、やけにはっきりと聞こえた。

 そしてコウリン達は来てくれたと悟った。


「――少しばかり退いて貰おうか。フラン、少し下がっていてくれ。術では彼等を巻き込みかねない」


「分かったわ。……任せましょう」


 そして、次の瞬間に、


 ドオォォォン!


 と言う大きな音と、造魔達の悲鳴が上がり、空中に造魔のと思われる身体の一部と血が跳ぶ。

 同じ相手だとは思言えない程に、いとも容易く造魔達を葬っていく。

 力任せに横薙いだ暁の大剣が、造魔数体を纏めて上半身を切り離す。

 だが、それでもまだ造魔は蠢いていた。


「成程。意外と生命力は高いらしいな。……【火属性付与(フレイムエンチャント)】」


 暁が使ったのは低レベルの剣士でも使える火属性を付与するスキルだ。


「――さぁ、仲間を助けに行くとしよう。……斬り込むぞ!」


 そして、他のメンバーを率い、駆けながら、その剣で造魔の身体を次々と斬っていく。


「ぎゃああああああああああああああああああああああ!!!」


「ぎゃあああはははははははははははは!!」


 聞くに堪えない笑い声にも聞こえる断末魔が空気を振動させる。

 だが、暁はそれを気にする様子もない。

 ただ無表情に、冷静に、斬る……と言うよりは解体していく。

 そこに他人が入り込むような隙はない。


 そして、コウリン達の元に辿り着いた時には、暁は全身を返り血で真っ赤に染めていた。

 造魔達は同胞を殺した暁を本能で警戒しているのか、襲ってこない。

 暁達は、コウリン達に駆け寄ると、倒れているワンダの状況に思わず眉を顰めた。


「ワンダ翁がやられたのか?」


「……う、うん。僕を庇って蠍型の造魔に刺されたんだ」


 暁の質問にハルキが答える。

 更に、それに続いてフランチェスカがハルキに尋ねた。


「治癒魔術はしたのでしょう?」


「う、うん」


「……少し見せて。――暁、周囲の警戒は任せるわ」


「あぁ、任せてくれ」


 そう言ってワンダに寄ったフランチェスカだが、その顔は厳しい。

 魔法陣を展開し、すぐさまワンダへと翳す。


「…………遅かったか」


 そうぽつりと呟いた。

 フランチェスカの呟いた通り、ワンダの状態は極めて危険だった。

 高度な治癒魔術で傷は塞がっており、蠍の毒は状態異常回復魔術で消せるだろう。

 だが、それをしたとしても、ワンダの身体はボロボロと言っても良い。

 最初は毒だけだったのが、それに誘発されたように様々な病原菌がワンダの身体を蝕み始めていた。

 どうやら、蠍の造魔の持つ毒の性質らしい。

 これでは治癒魔術でも治せない。

 治癒魔術で治せるのは外傷や、毒、麻痺を代表とする状態異常だけだ。

 治癒魔術では病は治せないのだ。


「……貴方達はワンダを治癒魔術で癒し、護衛をしておいて頂戴」


 そう言ってフランチェスカは立ち上がり、己の得物である杖を取り出した。


「造魔は、私と暁で相手しましょう」





 造魔を前に、暁とフランチェスカはさもいつも通りの調子で立っている。


「私とお前の二人で……か。フフフ……どれ程いるのやら」


「別に()()()と状況は大差無いでしょう? それに、貴女にとっては嬉しいんじゃない? 貴女、生粋の戦闘狂(バトルマニア)だものね」


 フランチェスカの言葉に、ニヤリと笑い返した。


「あぁ、正直言って高揚している。このような事、最近は無かったからな。……ワンダの事は残念だが、久しぶりに血が滾る」


「そ。じゃ、貴女は存分に暴れまわりなさい。サポートはしてあげるわ。”狂戦士(バーサーカー)”」


 其々の言葉には、互いに寄せる高い信頼が滲み出ていた。

 お互いの言いたい事は言わずともわかっているし、役割も決まっている。

 一歩、暁が前に出る。

 暁が纏う雰囲気が、まるで飢えた獣の如き、血生臭く、荒いモノに変わる。

 だが、あくまでも、暁が発するのは水の様に波立っていない静かな声だ。


「……お前がサポートしてくれるなら、何の心配もいらないな。……遠慮なく、やらせて貰うぞ」


 愛用の大剣を軽々しく構える。

 浮かんだ笑みは、獰猛で、凄絶なモノへと変化した。


「さぁ、造魔共。私がお前達を――喰らってやる」




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