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三十三話 意外とすぐに分かった黒幕

今日投稿できなかったので、今投稿します。

今回だけの特例です。次からは何時もの時間に戻ると思います。

 エッフェンベラ教首都、トリコロにある幾つもの教会の内、最も大きな建物であるイルファジオ聖堂。

 そこで人々が真摯に祈りを捧げていた。

 その前で、法衣を纏った司祭の男が祈りを唱え始める。


「……祈り給う。祈り給う。か弱き無垢な人の子等よ。我等が神たる聖神に祈り給う。……叶え給う。叶え給う。聖神よ我等が願いを聞き届け給う。さぁ、皆様も願いましょう」


「「「……聖神よ。我等の願い聞き届け給う」」」


 司祭の言葉で、人々も同じように祈り始めた。





「……聖神よ。我等の願い聞き届け給う」


 ……あーメンド。

 潜入しなきゃいけないとはいえ、なんでこんな事やらんといけないんだ。

 村人に変装してまで……俺信者じゃないんですけど。

 聖神ってなんだよ。どんな神だ。

 まさか俺達を召喚したアイツじゃないだろうな。

 ……ま、いいや。

 俺は次に、聖教の中でどの宗派がやったのかを調べようと聖教内に潜入していた。

 その中でも先ずは最大宗派であるユル派に潜入している。

 歴代の教皇を輩出している派で、権威や権力、金を持っているのはこの宗派なのだが、俺としては可能性低いと思うんだよなぁ……。

 敵=魔物の考え方の宗派なのだ。

 そんな連中が人間と魔物を融合するか、と言う疑問が浮かぶのだ。

 ……やっぱあれかなぁ。

 もし見つかるとやばいからって行かなかったけど、やっぱりあの森の奥に何があるのかを調べた方が良いのかなぁ……。


「……では、皆さん。良い一日を」


 おっと! しさいさまの ありがたいおはなしが おわった ようだ!

 祈りの時間を終えた俺は、伸びをしてから雑踏の中に踏み出した。





 その夜、他の宗派を調査していた部下達が調査報告をしに俺の元へ集まった。


「……報告を」


 俺の言葉に、俺の前に並んで待機していた部下が一斉に頭を下げる。


「では……自分からはユル派より別れたコリトン派を。結果としては犯人である可能性は低いかと。分かれているとはいえ、現在の信者の数は百にも満たない少数派閥です。造魔を生み出せる程の力はないかと」


「私からはシュドー派の報告を。……この派閥は聖神ではなく、英知、知識を信じる一派で、数も少なく、崇めるモノも違う事から、可能性が無いとは言えません。ですが、帳簿を見たところ、資金は底を尽きかけています」


「自分はファルニ派をご報告します。ユル派よりわかれたコリトン派、それより独立した新興宗派です。起こしてからまだ一年にも満たず、信者もまだごく僅かです」


「自分からはユル派の次に規模が多いカリファ派を報告させて頂きます。カリファ派は、初代女教皇カリファの考え方を信じる、ユル派より更に穏健な派閥です。『人も魔物も、ありとあらゆる存在が聖神に作られた』と言う教義を掲げています。この宗派が犯人の可能性は低いと思われます」


「では、私から……カリファ派程ではありませんが、それなりの規模を持つロド派の報告を。……個人的見解を申しますと、恐らく犯人はこの宗派の人間ではないかと。聖教の掲げる敵を、異教徒……つまり他国の人間とし、聖戦による布教、そして宗教の一本化を掲げる宗派です」


 なにそれ怪しすぎ。


「……最近の行動と金の動きは?」


「はい。主導者ですが、五十代の男で、時折姿を眩まします。……行方を追ったところ、『あの森』へと入って行きました。……それにロド派は数年前から金銭の動きが激しく、規模に見合わず、寄付の額が驚く程に多いです。恐ら外部からの援助があるのでしょう」


 はい、犯人見っけ。

 分かり易すぎるわ。

 部下が優秀なのか、隠すつもりがロド派(むこう)には無いのか……。


「……他の宗派の調査を中止、調査対象をロド派、及びその関係者に絞る」


「「「――はっ!!」」」


「……私は森奥に向かう。それ以外は任せる。……じゃ、行く」


 俺の命令に、部下達はすぐさま姿を消す。

 さて、俺も向かうとしますかね。





 エッフェンベラ国首都トリコロより少し離れた郊外に位置する聖教の一派、ロド派本部。

 その一室では、二人の男が話をしていた。


「……して、()()()の状態はどうだ?」


 口を開いたのは法衣の男だ。

 そのふくよかな体形で、ゆったりとしている法衣の腹の部分が盛り上がっていた。


「……元よりは理性の無い化け物共です……が、逆らえば死ぬように施しております。現状の数はそれほど多くはありませんが、まだ()()は幾らでもおります。行く行くは百……いや、千もの軍勢となりましょう」


 法衣の男に答えた男の格好は、余り綺麗とは言えず、その笑みも下卑ていた。


「そうか! これで我等が願いも成就しよう」


 法衣の男の顔が歓喜に歪む。


「待ちきれぬ! あぁ……その時をこれ程待ち望むとは! 穢れた魂はこの世にいらぬ。聖戦にて異教徒共を殲滅し、この世に我が理想郷を作り出そうぞ!」


 法衣の男の声が、夜空に溶けて消えた。



読んでくださりありがとうございました。

次話も宜しくお願いします。

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