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三十一話 遭遇

感想等有難うございます。

励みになっております。

 見つけた血は、森の奥深くへと続いていた。

 常人ならば見つけられないだろうが、俺は『血の跡』が()()()し、臭いの様なモノも追える。

 それを追って、俺は森深くへと進んでいった。


「……」


 草木の揺れる音、そして魔物や動物の声の中、音を消して枝から枝へと渡っていく。

 気配は消している為、魔物達に発見されることなく、接近しても素通りされる。

 俺は周囲にある内、一番太く、高い木の枝に腰掛けた。

 まだ日は登っている。

 集めた情報としては、夜の方が見た件数が多い。

 夜になるのを待つべきだろうか。


「……来て」


 俺の呟きに、何処からともなくカラスの群れが現れた。

 人が使えない状況において、非常に頼りになる()であり、()だ。

 腰に下げておいた小さな木の実をばら撒く。

 餌やりっつーか……餌付け?

 カラス達は器用に空中でキャッチし、食べる。

 ……全く以って器用なもんだ。


「……オリヴィア達に伝えて。……まだ森にいるからって」


 カラス達はコクリと頷くと、翼をはためかせ、飛び立っていった。

 一羽程度では煩くないそれも、何十羽、何百羽が一斉に羽ばたけば、その影は巨大な怪鳥か竜のようだ。

 あの中で向かわせるのは十数羽程度で、後は解散しただけではあるが。

 ……さて、夜まで待ちますかね。





 数刻後、俺が飯を食べている時、此方に近付いてくる異常な気配に気づいた。

 ゲームのスキルの影響なのか、それともこちらの世界で身に付いた技能なのかわからないが、気配でそれがどんな生き物なのかを知る事が出来るようになっていた。

 人なら人、エルフならエルフ、ハーフエルフでも人やエルフとは少し違う気配を持つ。

 勿論、魔物や動物なら種族ごとに何となく纏う気配……というか雰囲気が違うのだ。

 そんな中でも、今近くにいる()()の気配は、何と言うか……(いびつ)だった。

 色んなモノが、歪んで、捻じれて、微塵に砕いて、練り上げ、混ぜた様で、不快になるし気持ちが悪くなる。

 ただ……そう、人為的と言うか、人工的な歪さだ。

 恐らく、これがゲーム内では分からなかった――


「だズっ……ダズけでェ……キヒヒッ! たすげでヨ゛ぉ……イヒヒっ!」


 造魔の気配なのだろう。





 俺が出会った造魔はマルティンが出会った奴ではないようだ。

 上半身は裸の女性だが、腕は六本――その内四本は蟹か蠍のような鋏だ――で、足は蛇。

 顔や晒された上半身の一部は蛇の様な鱗に覆われていた。


「だズっ……ダズけでェ……キヒヒッ! たすげで下サいお願い゛じまズぅ……イヒヒゃっ!」


 泣いているのか、笑っているのか。

 何方なのかわからない。

 涙を流しながら、ニチャリと笑みを浮かべている。

 大きな声で叫びながら、そいつは森の中を進んでいく。

 ……少し戦ってみるか。

 俺は造魔の真上から腕の一本を狙ってナイフを振り下ろした。

 狙うのは人間の腕だ。


「――ぃぎゃああぁぁぉあ!!! イダい! い゛だいよぉ……ケケケッ!」


 細い、人間の腕は、パワー型ではない俺の腕で振るわれたナイフでも簡単に切り裂けた。

 切り裂かれた腕から大量の血を流しながらも、造魔は暴れ始めた。


「どぉーシテこんな事スルのぉ! ……痛イ゛ヨぉ! ィーァハハハハハ!!」


 長い伸び放題の髪の毛を振り乱す造魔を前に、俺は斬った感触を思い出していた。


「……感触は人間と同じ。次は――」


 瞬時に動き、今度は蛇の下半身へと肉薄する。

 ナイフは蛇の身体の上を少し滑り、反発するような感触の後、スッと沈む。

 噴き出す血にも驚くことなく、地面を蹴って離脱する。


「……肉質はその生物の感触の儘。……次」


 今度は鋏に向けてナイフを振るが、今度は甲高い音を立てて弾かれた。

 その後もいろんな場所を刺したり斬ったりする。

 肉質の変化を調べる為に、わざと嬲るように動く。

 悲鳴を上げた造魔が、なりふり構わずに暴れまわる。


「やぁああああめええええええてえええええええよぉおおおおおおおお!!!」


「――っ!」


「お……オボボボボボがボボボオボボおおお」


 蛇の尾を、腕をかい潜り、俺は上半身の人間の身体の顎を下から突き上げる。

 だが、刺されて尚喋っているのか、口と顎裏からドボドボと血が流れる。

 それでも、死んでいないらしく、腕が迫って来るが、瞬時に離脱する。


「……脳、心臓、首、頚椎……何処を刺せば死ぬの……かな」


 喉を刺して動くとなると、心臓か脳だろうか。

 毒を使ったとしても、『俺が倒せる』ではダメなのだ。

 他のメンバーでも倒せなければならない。

 その為の弱点を探さなければ。

 ……まぁ暁とかフランチェスカとかだったら広範囲の攻撃で一撃だろうが。

 だからこそ、メンバー内では()()()()()()()()()()使()()()()()()()()が重要になってくる。


「……【蜂は二度(アナフィラキシー)刺す(・スタブ)】」


 先ずは二撃。

 殆ど無害の毒を纏わせたナイフで心臓と頭部を刺す。

 相手からは動いていないように見えただろう。

 だが、確実にナイフは急所に届いていた。

 血の付いたナイフが、それを表していた。


「――っ! ――っ! ――っ!」


 だが、造魔は倒れない。

 俺を睨み、鋏で貫こうとしてくる。

 どんだけ生命力強いんだよコイツ等!

 ――仕方ない。


「……【ランベイズの毒殺魔(ポイズナーランベイス)】」


 相手に触れ、即死性の毒を流し込む。


「―――――――――!」


 造魔は、最後にゴポリと口から血を吐き、ドスンと大きな音を立てて倒れる。

 俺は近寄って、造魔の生死を確認する。

 上半身にくっついている女性の顔は、悲痛に歪んでいた。




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