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二話 自称神との出会いと転生

誰かタイトル考えて(泣)


 自称”神様”と出会ったのは俺が死ぬ直前だ。


 俺はその日もいつも通り、朝から『ザ・ワールド・オブ・エタニティー』を、サブキャラである”(よる)”でプレイしていた。

 まぁこのキャラでプレイしている時は殆ど喋らない様に今の話し方と同じ話し方をしていたから、周囲は俺の事をネカマだとは思わなかったろうが……。


 暫くレベル上げやら素材集めをして、そろそろ買い物でも行こうかと思った次の瞬間――


 ドゴオオオォォォン!!!


 と言う爆音と地揺れ、そして衝撃が同時に襲ってきた。

 同時に、周囲が崩れる音と激痛で、俺は気を失った。





「……うぅん。どう、なったんだ……」


 眼を覚ますと、周囲に焦げた臭いと血の匂いが充満していたが、VRの機器を付けていたが為に視界は真っ暗だった。

 頭どころか全身が痛く、特に右太腿の辺りと右脇腹に鋭い痛みが走った。


「……ぅぐっ!!」


 手をそこに触れさせると何かの破片だろうか、それが刺さっていた。


「……ぐっ! ……はぁ、はぁ、はぁ。痛い、痛い痛い――痛いっ!!」


 痛み以外に何も考えられない、それ程に痛かった。

 どうやら近くの工場が爆発したらしい。

 外の寒い空気が肌に刺す。


 徐々に意識がボーっとしてくる。

 消えそうな意識の中で、何処かで火事でもあったのか炎が燃える音と臭い、そして人々の悲鳴と救急車や消防車のサイレンがうっすらと聞こえてくる。


「……俺、死ぬの……か?」


 その言葉を最後に、俺は意識を完全に失った。





「……なんで? 俺、死んで、ないの……か」


 何故か分からなかったが、俺はまだ死んでなかったらしく、相変わらず視界は頭に付けたVR専用の機器に覆われて真っ暗だったが、どうにか意識が戻っていた。

 だが、急にブンと起動音が鳴り、カタカタとキーボードを打つ音と共に文字が現れると同時に若い少女にも少年にも聞こえる中性的な声が聞こえて来た。


 《God:君はもう少しで死ぬ》


「どう言う事だ?」と言う疑問を飲み込む。

 俺だって理解している。

 アドレナリンが分泌されているのか痛みを感じないが、相変わらず意識は何処かフィルタが掛かったかの様にボンヤリとしていた。


 《God:君は死にたくは無いだろう?》


 当たり前だ。

 誰も死にたい奴なんていないだろう。


 《yuya:当たり前だ》


 何故か俺の名前――しかも本名――でチャットが表記される。

 どうやら思った事がある程度表示されるらしい。

 と言うかGodって、馬鹿にしてんのか?

 いや、人間が壊れているはずの機器でこんな事出来る訳がない。


 《God:僕は輪廻を見守っている。哀れにも、僕の意図しない事故に巻き込まれてしまった君を転生させることが出来る》


 え? マジで?

 それに『意図しない』ってどういう事だ?


 《God:基本的には(ボク)は人間を見守るだけだ。僕は人間に寿命を全うして欲しい、そう思ってる。でも、どうしても事故で死んでしまう人間もいる。そういった人々を、僕は転生させているんだ》


 《yuya:じゃあ、俺も?》


 《God:勿論だ。しかし、この世界ではない。この世界で君は死んでしまった。そして、君が死に、新しい命が生まれた。魂の量は常に一定なんだ。だから、君が転生出来るのは違う世界になってしまう》


 ……はぁ。


 《yuya:余り理解できないが、つまりは俺は転生すると?》


 《God:そうだ。じゃあ君が転生する場所は先程まで君がやっていたゲームによく似た世界にしてあげよう。安心してよ。もう何人も転生しているから。彼等と協力するも良し、協力しないも良しさ》


 成程、先人がいるのならば安心だ。

 そしてチャットに選択肢が生まれる。


 《転生するのならYesと、しないのならNoと答えてください》


 《God:さぁ、もし転生し、新しい世界に行きたいのなら頷いてくれ》


 俺の答えは決まっていた。


 《勿論、『Yes』だ》


 次の瞬間、再び画面が真っ暗になり、同時に俺は意識が遠くなっていく。

 だが、意識を失っていく中でも、自称神様の声だけがはっきりと聞こえる。


 《()()の君じゃああの世界は生き抜けないだろう。だから君を『ザ・ワールド・オブ・エタニティー』内のキャラクターにしてあげる。さぁ、二度目の生を楽しんでおいで。……あ、そうだ。大変だろうから、幾つか君に特典をあげよう》


 そして今度こそ、俺は意識を失った。





「……ぅうん」


 目が覚める。

 どうやら倒れていたらしく、俺は肌に触れた土の冷たい感触で眼を開けた。


「……ここ、は?」


 ……?

 聞こえてくる可愛らしい少女の声。

 誰か近くにいるのか?


「……誰かいる、の?」

(誰かいるのか?)


 ……はい?

 誰が俺と同じことを考えていたのかと声の主を探そうと周囲を見渡すが、ただ鬱蒼と茂る森林に綺麗な小川があるだけで、近くに人はいなかった。

 そして誰もいなかった為、俺は立ち上がろうと地面に手をつき――ついた手が視界に映って、俺は自身に起こった()()に気付いた。

 いや、ある意味では俺はほぼ毎日見ている光景である。

 病的なまでに細く白い腕、俺はこの姿に見覚えがあった。


 俺は自分の考えを確かめる為に、近くの小川へと向かった。

 そこで俺が見たのは――


「……」

(な、なんで!?)


 無表情で小川を覗き込む、肩までの銀髪に、炎の様な紅い眼が印象的な、人形の様な印象を他者に与えるであろう十代中盤か後半程であろう少女――そう、俺が『ザ・ワールド・オブ・エタニティー』で操作している我が分身、職業”暗殺者(アサシン)”の女キャラ、(よる)である。

 どうやら装備や覚えているスキル等はその儘であるらしい。

 服は着ていた。良かったー……じゃない!


「……」

(なっ……あの自称神! なんで(メイン)キャラじゃなくて(サブ)キャラなんだ! まぁ確かにこっちの方がレベル高いけど! やりこんでるけど!)


 俺がどれ程喋ろうと、叫ぼうとしても、水面に映った(よる)は喋るどころか表情一つ動かさない。

 どうやら、俺がこのキャラでは殆ど喋らず、反応も素っ気なかった事を反映しているらしい。

 神様、俺男なんで、男キャラの方が良かったんですけど!


 なんて言っても神様の反応がある筈もなく、俺は取り敢えず近くの町を目指すことにした。

 身体の事は考えず、頭の隅っこに置いといて。

 それが約五年前の事だ。




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