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二十八話 現状での予想

最近忙しくて、更新頻度が落ちるかも。

頑張って更新していきますので、これからもよろしくお願いします。

 マグニフィカ王国冒険者ギルド、ギルドマスター用執務室。

 そこに呼び出されたゴーシュ・イーラは緊張していた。

 目の前の、自身と同じ位の背丈の女性が、緊迫した様子だったからだ。

 普段、あっけらかんとして、男の様な振る舞い方のギルドマスターだが、今は眼を細くし、氷の様な雰囲気を纏っていた。


(な、なんでこんなに不機嫌なんだ!?)


 ゴーシュは唾を飲み込んで、ギルドマスター――暁の言葉を待つ。

 だが、一度溜息を吐くと、その雰囲気は霧散した。


「……”紅の矛”の諸君、よく来てくれた」


「え、えぇ。……で? 俺達に何か依頼すか?」


 パーティーメンバーを一度見渡し、互いにアイコンタクトをしてから暁を見る。


「……君達の()()()()に取り繋いでくれ。依頼がある、とね」


「……はい?」


「……安心し給え。この部屋の会話は外には漏れないよ。その為の魔道具を使っているし、ここには私と、君達しかいない」


「……あの、えっと。何を言ってんすか? 俺達は一介の冒険者っすよ?」


 とぼけるゴーシュであるが、余り腹の探り合いを得意とするタイプではない故か、分かり易い。


「……まぁ君達に言わずともカラスに手紙を括りつけて連絡さえすれば良いんだが、一応今回は公的に対処するつもりだからな。夜に伝えておいてくれ。詳しくは直に会って話すが……」


 暁の言葉に、”紅の矛”のメンバーの眼が驚きに見開かれた。

「何故知っているのか」。そんな表情だ。

 戸惑いと、そして警戒。

 ”魔女の夜”の一部署、”獅子”を纏めるゴーシュとしては聞き逃せるようなものではない。

 場合によっては殺さなければならない。

 だが、目の前の女性がどれ程の実力者(バケモノ)かを知っている。

 夜とどちらが強いのか、決められない程の化け物なのだ。


「……剣を抜くか? 私としてはお勧めしないが」


「――っ!?」


 ニヤリと笑う暁だが、その笑みは獰猛と苛烈を秘めた獲物を狩る獣の笑みだ。

 机に座り、茶を飲んでいるが、気負いない様で、()()に入れば一瞬でゴーシュの首は飛ぶだろう。

 そんな気がした。

 ――勝てない。そう瞬時に悟る。


「流石アイツの部下だな。私じゃなければ、その殺気に気付けなかったろう。暗殺者や諜報員も出来るんじゃないのか? ハッハッハ!」


超人(バケモノ)の気持ちなんてわかる筈もない、か。知り合いみたいだし、夜様に連絡しておくか……はぁ)


 快活に笑う暁に、ゴーシュは息を吐いて力を抜きながら、そんな事を考えていた。





 数日後、マグニフィカ王国王都”魔女の夜(ヘクセンナハト)”本部。

 暁は言った通り、公的には『商会との商談』としてやってきていた。

 いたって普通の、何の変哲もない()()だ。

 ……表向きは、だが。

 一応、うちはギルドと物資の売買をしている。

 武器や防具、魔道具やポーション等のアイテム、食堂で使う食材。

 だから定期的にここを訪れているのだ。


「……報告は来た。暁の方から、話があるなんて、どうした、の?」


 飾り気のない自室で、俺は、スイに案内させた暁を迎え入れた。

 スイを帰し、紅茶と焼き菓子を用意して、暁を椅子に座らせた。


「……エッフェンベラ教国で、猟師達に広まっている噂を知っているか?」


「……(コクン)」


 俺は頷いた。

 教国の森深くに現れると言う”異形”の噂は、とうに”魔女の夜”に入っていた。

 詳しくは調べていないが、


「……徐々に被害が広まっているのは、知ってる」


 被害としては増加している。

 それも、同じ姿ばかりではない。

 辛くも逃れてきた人々に話を聞けば、その姿は様々だった。


 曰く、狼男、神話に出てくるアラクネ、半人半魚。

 そのどれもが、醜い姿だったらしいのだ。


 被害の総数としては、助かった人数より、行方不明の人物の方が多い。

 それも、依頼を受けた冒険者達が多いのだ。

 おそらくは現地の人間は、噂を恐れて近付かないからだろう。

 その被害の全てが、教国内の森林部。

 それも、位置としてはマグニフィカに近い側の、より深い森でが殆どだ。


「成程。もうそこまで調べてあるのか」


「……多分、そこに、()()()()()


 噂が出始めたのはここ数ヵ月の話なのだ。

 そこで何をしているのかはわからない。

 だが、『火の無い処に煙は立たない』。

 ここ数ヵ月内で、いや、直になんて事は無いだろう。

 つまりはもっと前から()()が始まったのだろう。

 そしてそれは恐らく――


「……こんなのあったの覚えてる?」


 俺は勿体ぶって暁に言う。

 暁は表情も変えず、何時もの通り太々しくどっしりと座った儘、目線だけを向けてくる。


「『ザ・ワールド・オブ・エタニティー』のVer29.0の追加特殊イベント『造魔の胎動』。その敵は――」


 この世界は、『ザ・ワールド・オブ・エタニティー』を含めた幾つかのゲームのイベントが時系列関係なく起こる。

 そのイベント――事件の起こる過程も、関わる人物も、事件が起こる国すらもゲームとは違うので、完全に同一ではない。

 ないのだが、似た様なイベントが『ザ・ワールド・オブ・エタニティー』でもあったのだ。

 だから、恐らく、俺の考えは合ってるはずだ。


「――っ!『造魔の胎動』でのイベント固有の敵は――”魔物と融合させられた人間”! まさか、今回がそうだとでも?」


「……わからない。……ただの予想」


 それでも、俺は、ある程度の確信を持って、言った。




誤字脱字ありましたら、指摘宜しくお願いします。

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