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二十四話 決着 その2

3/15現在、二十四話までの修正をしております。

今後の展開を考え、主人公が転生してきたのを2年から5年へと変更しました。

更に指摘を受けまして、現在とはなるべく相違ない形で修正しております。


 俺はメイド服を脱ぎ捨てた。

 ……勿論下に服は着てるぞ?

  一瞬「素っ裸になったんだな」、と思った奴は殴ってやるから出てこい。

 痴女って言った奴は更にもう一回殴ってやる。

 そこは俺にとって大事なボーダーラインなんだ。男としての。


 着ているのは何時も通りの黒を基調とした露出の少ない、肌に張り付くタイプの服にベラドンナのブローチを付けた仕事着姿である。

 因みに、他の侍女達は俺直属の部隊”鴉”の女性隊員である。

 他の隊員にはべリオスやヴァイス達の護衛を任せてある。


「殺すなよ?」


 べリオスの指示に頷き、俺はスキルを使う。


「スキル――【千のナイフ(サウザンドナイフ)】」


 静かに呟き、眼を閉じ、再び眼を開けると、既に周囲に文字通り千ものナイフが生み出され、宙で制止していた。

【千のナイフ】はただナイフを生成する()()のスキルだ。

 だが、魔力を使えば操る事は可能である。


「「「――っ!!」」」


 そのナイフは今にも動き出そうとしていたフェデラーが雇った連中や逃げ出そうとしていた貴族達の喉元や心臓、頭等の急所に、触れるか触れないかの状態だ。

 刃を突きつけられた者達は言葉を失う。

 特に、魔術を使える者達や、フェデラーに雇われた魔術師達は自身の眼に映った光景を信じられないと息を飲む。

 こんな数のナイフを操るなど、この世界の常識ではありえない。


「……抵抗するなよフェデラー公爵。余り此奴の力を借りたくないんだ。()()()()()()()


 おいべリオス。

 俺はそんなに守銭奴じゃないぞ。

 つーかどんな依頼やっても追加料金なんて払ってくれた覚えがないぞ。

 何勝手に言ってやがるこの野郎。

 俺は瞬時に後ろに回り、べリオスにナイフを突きつける。


「……そう言うなら、追加料金、払って貰う」


「ぃっ! わ、わかったよ。払うって。だからこのナイフを退けてくれ。いえ、退けて下さい」


 俺が殺気を放つと、それを真に受けたのかべリオスが慌てる。

 俺は仕方なしにナイフを離す。

 最初からそう言えば良いんだよ。


「……ふぅ。全く危ねぇ奴だ」


 べリオスが溜息を吐く。

 そんなやり取りをしている俺達の不意を突こうとしたのか、その場にいた何人かが各々の得物を手に攻撃を仕掛けてきた。

 ナイフを止めるのなら術者の俺を倒すしかないからな。

 だが――、


 パチン!


 指を鳴らす。

 その瞬間、俺に突撃してきた騎士の一人の全身に、周囲に浮かんでいたナイフが突き刺さり、詠唱を始めていた魔術師の手を切り裂き、その口内に入り込み、切り刻む。

 動いた傭兵や騎士達の足に、腕に、首に、遠慮なくナイフが突き刺さり、そこから血が噴き出す。


 それはまるで綺麗な花の様だった。

 そう言えば桜や彼岸花は死体から咲く、なんて言われていたっけか。

 あぁ、こいつ等の死体から生える花はどんなだろうか。

 綺麗だろうか? 醜いだろうか? 血の様に紅いだろうか? それとも『死』を形容するような黒だろうか?

 そんなことを考えながら、俺は悶える様に、息が荒くなり、そして此方にまで飛び散って顔に付着した血を手で拭って嘗める。


「――ァハッ!」


 目の前の景色に、俺は興奮を覚え、思わず笑みを浮かべてしまう。

 ――あぁ、今ここにいる全員を殺せば、どれ程綺麗な光景になるだろうか。





 ――ドクン。



「――っ!」


 衝動に掻き消されそうになったが、どうにか理性を取り戻す。

 ……危なかった。

 どうにもこの身体になってから、殺せば殺す程に興奮してしまうようになってしまった。

 それが自称神から送られたプレゼントの一つ。

 全く以って嬉しくないプレゼントである。


 だが、それに気付く者はいない。

 一番近くにいたべリオスも気付く様子はない。

 余りこの体質は他人に知られたくない。

 特に、前世の知り合いや、今生での知り合い達には。





 俺が【千のナイフ】を解除し、再びメイド服を着た直後、べリオスはフェデラーに近付き、その肩に手を置き、事実を突きつける。

 その顔に浮かんでいるのは愉悦の表情だ。

 ……性格が悪いねぁ全く(他人事)。


「フェデラー、お前は終わりだよ」


「あ……あぁ……あぁぁぁ」


 べリオスの言葉に、フェデラーは崩れ落ちた。


 そして、ヴァイスも決着を付けようとしていた。

 俺も護衛としてヴァイスの一歩後ろに控える。

 俺とヴァイスはヴァドラー、そしてメアリの前に立つ。


「……兄上」


「……ヴァイス」


 ヴァドラーは先程まで目の前に浮かんでいたナイフに腰を抜かしたのか、尻もちをつき、メアリはその隣に縋るように座っていた。


 しっかし、……外見イケメンが尻もちをついてるとホントに残念に見えるな。

 ……ちょっと脅かしてみるか。

 ヴァイスから見えない位置からナイフをチラリ。


「「――ヒッ!」」


「……夜、怯えさせるなよ」


 ……チッ。気付かれたか。


「……兄上、幾らフェデラー公爵に唆されただけとはいえ、政務もせず、パーティーや孤児院への無計画な資金援助によって財政を圧迫したのは事実です」


 そう。

 ヴァドラーは王族としての政務そっちのけで、その全てをヴァイス達第二王子派が処理していた。

 更に、連日パーティーやら孤児院への寄付で王家及び国の金は殆ど残っていないのだ。

 国家転覆させたいのならばいざ知らず、当人は跡を継ぐ気満々だ。

 ……本当に小説とかでいそうな阿呆王子である。

 孤児院に寄付するやらの綺麗事やるのはよろしいが、フィクションでもあるまいし、後の事とか金とか色々考えろっての。


「……貴方に王族としての資格は無い。俺――私はそう思います」


「――そんな事はありません!!」


 ヴァイスの言葉に、そう声を荒げて否定したのは婚約者であったメアリであった。

 その表情は可愛らしい顔の中にも凛とした、覚悟が見えた。

 眉を顰め、ヴァイスを睨み付けるが……うん。全然怖くないねぇ。


「殿下は民草の事を考え、行動する立派なお方です!」


「……考えているならば、何故財政を圧迫するようなことをした?」


「それは、貴族としての責務で――」


「違う!」


 メアリの言葉を遮り、言葉使いも気にせずヴァイスが怒鳴る。


「貴族としての責務? 連日連夜パーティーを開いて民から得た税金を湯水の如く使うのがか!? 使った金が民に環えるならば文句は言わない。だが、そうじゃないだろう? 一部の商人に入るだけで決して民の懐には金が入らない! それに我が国に住む民を『草』と言うな!」


 ヴァイスは怒りからか更に言葉が荒くなる。


「……兄上。アンタ達は罪の意識なくそれをやったんだろう。それを俺は絶対に認めない! ……衛兵! 捕縛しろ!」


 ヴァイスの指示に従い、扉の近くで待機していた衛兵が動く。

 俺が殺した死体を跨ぎ、ヴァドラーとメアリに「失礼します」と言ってから手を縛って立たせる。


「――きゃっ!」


「メアリ! クソッ! 離せ! 俺が父上の跡を継ぎ、この国をより良くしていかねばならないのだ! ――離せ!」


 第一王子とその婚約者は衛兵に連れられ、退場していった。




読んでくださりありがとうございます。

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