二十二話 恋愛ゲームではないのでご都合主義なんざある訳が無い
間が空いて申し訳ないです!
インクセリア王宮にある評定の間に、王族達が集まっていた。
貴族達は中央にある発言するための台を中心にほぼ真っ二つに割れていた。
一方が貴族主義であり、血統を大事にする第一王子派。
そしてもう一方が革新的な考えを持つ新興貴族達が多い第二王子派である。
そして、その間に中立派が座ってはいるが、その全員が内心では何方につくかを決めていた。
「……では、これより評定を始める!」
そう言葉を発したのは宰相である中立派、ノード・クァイツ。
この評定の儀では進行役を務めている。
「王が亡くなられてから既に一年、そろそろ後継者を決めるべきだと、私は思う。如何ですかな、ヴァドラー様?」
「そうだな。俺――私もそう思う。ヴァーガニアとの戦争の話もある。まだ民衆には広まっていないが、それも時間の問題だろうしな」
ヴァドラーが頷く。
その表情は国の未来を憂う王子らしいモノだった。
それを第二王子派の人間達が、何を言っているのかといった表情で見ているが、それに気づく事は無い。
それに続き、フェデラーが大袈裟に話し出す。
「――故に! 第一王子であり、継承権第一位を持つヴァドラー様に王として即位して貰う事で、国を一つに纏めるべきかと」
その言葉に、第二王位側から異議ありの声が数多く上がる。
今回の評定では、第一王子派と第二王子派との継承権争いである事を皆が知っている為、言葉に遠慮がない。
「それに第二王子は社交界にも出てこず、離宮に籠っているのでしょう? 王族としての責務を果たしているとは思えませんな「――フェデラー殿」」
フェデラーの言葉を誰かが遮る。
その声は第二王子派側から聞こえてきた。
その声の主はマリウス・フェンデであった。
「……フェデラー殿、貴方が、若き頃よりヴァドラー殿下の教育係として、信頼を置かれているのは理解しております……が、第二王子殿下も王族である事をお忘れなく。不敬罪になっても構わぬと言うのなら、止めはしませんが」
冷静に淡々とフェデラーに対して危ない発言をするマリウス。
「――なっ!」
「不敬な! 若造風情が何を言う!」
それに反発する第一王子派に反応する様に、第二王子派側からも声が上がる。
そして皆が自分の言いたい事を叫ぶだけの様な状態になってしまう。
「――静かにしろ」
ヴァイスの発言で、場に沈黙が降りる。
「……重要なのは王位などではなく、戦をどう回避するかだろ?」
「その為に王を決めねばならないのだろう!」
ヴァイスの発言を、フェデラーが遮る。
「……王位は何か起きなければ継承権第一位が継ぐと、法律で規定されている」
「だからと言って殿下が王に相応しいかどうかは別だろう!」
その発言を別の誰かが遮り、評定は堂々巡りになりつつあった。
「――あ、あのっ!!」
それを遮る若い女性の声。
第一王子ヴァドラーの婚約者であるメアリ・ロードバスである。
本来はまだ婚約者と言う身分であり、評定に出れる立場にはないメアリだが、強引に評定に出ていた。
その場にいた者の全ての眼が彼女の方に向く。
それに一瞬たじろくも、その眼に決意を秘め、口を開いた。
そしてヴァドラーはそれを見て、フェデラーが我が子を見る様に微笑むのを見逃さなかった。
「……私も、ヴァドラー様も。頑張ります! だから皆さん手伝って下さい!」
そう言って頭を下げる。
それを見て、ヴァドラーも立ち上がり、頭を下げる。
それを驚きの表情で見る貴族達。
「素晴らしい覚悟! 彼女こそ王妃に相応しいではないですか!」
誰かが上げたその言葉を切っ掛けに、第一王子派の貴族達が一斉に立ち上がり、拍手を送る。
そしてそれが中立派にまで及びはじめ、第一王子が王に即位するのが決まったと言う雰囲気になりかけた瞬間、ヴァイスは一言、呟いた。
「……それが貴方方が戦の噂を流した理由、だからな」
それは、不思議とその場に大きく響いた。
「ヴァイス殿下、何を……仰るのですか?」
第一王子派の貴族の一人がヴァイスに聞く。
「……ガロン・フェデラー公爵。貴方がそんなに即位を急いでいるのは、そこのメアリ嬢が関わっている、だろう?」
ヴァイスは表情も変えず、ただ事実を伝えるように言う。
その言葉に、第一王子派の貴族達までもがフェデラーの方をジッと見る。
その当事者であるフェデラーは、驚愕に歪んでいた。
「何故――何のことですかな?」
その呟きで、ヴァイスとマリウスは”魔女の夜”の情報が正しかったと理解した。
「やはり、そうだったのか。ガロン・フェデラー」
「……余り我等を嘗めないでいただきたい。貴方とヴァーガニアの繋がり――いや、ドーリ・ヴォアチア伯爵との繋がりも、我々は知っている」
マリウスとヴァイスに詰め寄られたフェデラーはその顔に焦りを滲ませる。
「……知らん! それに、関わっているからと言ってなんだと言うんだ! 証拠もない話をしないでくれ!」
そしてその言葉は、
「証拠ならあるぜ。馬鹿貴族」
第三者によって、打ち砕かれた。
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